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集団感染のニュースが頻繁に報道されるなど、ノロウイルスの感染が広がっています。学校では学級閉鎖、食品業者では営業停止の措置が取られることがありますが、一般の「職場」に勤める社会人がノロウイルスに感染した場合、どんな措置が取られるでしょうか?

出勤NGになるのか?

■法令の定め
法的には就業禁止(制限)といいますが、疾病による就業禁止(制限)を定めた主な法律として

・感染症法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)第18条
・労働安全衛生法第68条

という2つの法律があります。ただ、実はどちらも「ノロウイルス」による感染症を就業禁止(制限)の対象に含んでいません。

→感染症法の定める就業制限
その感染力や危険性などを基に感染症を1類から5類に分類し、1類~3類と新型インフルエンザなどを就業制限の対象としていますが、ノロウィルスは5類の「感染性胃腸炎」の1つに位置付けられているため、就業制限の対象となりません。

→労働安全衛生法の定める就業禁止
「伝染性の疾病その他の疾病で、厚生労働省令で定めるものにかかった労働者」に対する就業禁止を定めていますが、ここでもノロウィルスはその対象に含まれていません。

つまり、ノロウイルスに感染しても法令の定めを理由に出勤がNGとされることはありません。そもそもそのような法律の定めが存在しないのです。

■会社の定め
仮に感染した従業員が「仕事できます!出勤します!」と言ったとしても、会社としては集団感染を防ぐためにもなるべく感染者を自宅療養させたいと考えるはずです。この場合、「就業規則」に以下のような定めがあれば、会社は感染した従業員に自宅療養を命じる事ができます。(自分の会社の就業規則、これを機に確認してみてください。)

例.
第○○条 (就業禁止)
従業員が次に各号の一に該当するときは、指定医よりの診断書に基づき、医師の指示する期間、勤務を禁止することがある。
(1)感染症患者および疑似患者
(2)その他感染のおそれのある者
(3)就業により病勢悪化のおそれがある者

出勤NGになったら、給料はどうなる?

実際に会社から出勤NGが言い渡され自宅療養となったとします。しかし、この場合では少なくとも「休業手当」として平均賃金(日給に相当する額です)の60%を会社に請求することができます。

上で述べた通り、会社は就業規則に定めがあればそれを根拠に就業禁止として自宅療養を命じることができるのですが、これはあくまでも法令の定めを超えた「会社の自主的な判断」に過ぎないので、会社は「使用者の責に帰すべき事由による休業」として「休業手当」の支払いが必要になります。(労働基準法第26条)

有給使って自宅待機するように命じられたら?その有給がなかったら?

■有給使って自宅待機を命じられた場合
これは応じる必要がありません。なぜなら有給(正式には「年次有給休暇」といいます)の権利は労働者本人に帰属するものであり、会社に利用を命じる権利がある訳ではないからです。会社は計画的に有給を与える場合を除き、一方的に有給の利用を命じることは出来ないのです。

もちろん、「休業手当」が支給されるとはいえその金額は平均賃金の60%に過ぎないので、自分の有給の取得予定や残り日数を考慮した結果、有給にした方が得だと考えるのであれば利用すべきだと思います。

日本の有給休暇の取得率は49.3%というデータもあるので(平成24年就労条件総合調査)、同じ会社で数年以上勤務している方にとってはこのやり方が一般的になると思います。

■有給がなかったら?
では、入社して間もない場合や有給を使い果たしている場合はどうすればいいか。この場合は休業手当を請求できます。もちろん体調が悪化して働ける状態にない場合は「欠勤扱い」となりますが、自分が働ける状況にあるのにも関わらず会社が出勤NGを命じてきた場合、それがノロウイルス感染を理由としたものであれば、休業手当の支払いを請求する事が出来ます。

同僚に配慮して自宅待機するのは当然だろう、という声も聞こえてきそうですが、残念ながら現行の法律ではノロウイルス感染者を無給扱いの上、出勤を拒む事は許されていません。自分にもしものことがあった時のため、この事は覚えておくと役に立つかもしれません。

《参考記事》
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松永大輝 社労士・FP見習い

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