世界最大のビットコイン取引所「マウントゴックス」が2月26日未明に取引を全面停止し、2月28日に民事再生法の適用を申請した。この取引所にビットコインを預けていた日本人は、千人強という報道であった。300億円とも400億円相当とも言われるビットコインが一夜にして消滅した形となったわけだが、手立てはないものだろうか?
日本政府としての見解は、先日麻生財務大臣がおっしゃっていた。日本銀行、財務省、金融庁、消費者庁・・・といまのところどの行政官庁や銀行も管轄していない。つまり、法律に規定されていない仮想通貨のため、国としても手が付けられないという状況のようだ。 マウントゴックスは、ハッキングによってスティールされたという主張であるが、一部には自作自演、果ては計画倒産かという憶測まで飛び交っている。被害者から警察への届け出も行われており、捜査の手が入ることは間違いない。また、マウントゴックスは、民事再生法の適用の申請を行ったので、裁判所は専門家を集めて再生の可能性を吟味するとともに、資産が本当にないのかどうかも併せて調査していくことになる。今後の報道を待ちたい。
実際には個人が損失を被ったわけで、このままビットコインが手元に戻らない場合を考えてみたい。警察により「ビットコインは盗まれた。」という事実が裏付けされれば、資産の盗難ということになる。個人が盗難により資産を失った場合、所得税法では雑損控除という手当が用意されている。 通貨(お金)が盗まれた場合、雑損控除により納めすぎとなった所得税が還付される。しかし政府はビットコインを通貨として認めていない。このため、通貨としては雑損控除の対象とならない。一方で「生活に通常必要な住宅、家具、衣類などの資産」が盗難にあえば雑損控除の対象となる。この点から見てみると、日本でビットコインを利用している人がごく一部であることから、生活に通常必要な・・・資産には該当しないだろう。今の時点では、雑損控除を受けるのは難しいと考えられる。
昨年度、ビットコインで大儲けした人は今回確定申告をしたであろうか。ビットコインが通貨として認められていない以上、日本円で「ビットコイン」という無形資産を購入し、値段が上がった時にそれを売却したという売買取引を行ったに過ぎない。このことから、儲け(所得)が20万円以下であれば確定申告の必要はないが、20万円を超えると確定申告の必要が出てくる。 一方で今回のビットコインの消滅については、ある意味、販売しようとしていた資産が滅失したわけで、当然に損失となる。仮に儲かっていたら相殺ができる。他に雑所得があれば、その所得と相殺すべきであろう。しかしながら、相殺できなかった部分については、翌年以降に繰り越せない。相殺できなかった金額は、相殺金額に比べてそれ以上であろうことから、何かしらの手立てが用意されることを望みたいところだ。
例えば金やドルは、投機対象でもあり、決済手段でもある。ビットコインも両方の性格を持つ。まだまだ流通量は少ないとはいえ、今回の事件で認知度は飛躍的に高まった。海外送金に手数料がかからないなど利便性は高いため、このままビットコインが低迷するとは考えにくい。自己責任とはだれもがいう言葉だが、仮に損失がでても諦められるぐらいでしばらくはお付き合いしたほうがよさそうだ。 《参考記事》 ■新卒はチャンス! 自己研鑽組サラリーマンへ 特定支出控除は絶対使うべし ■押し売りも怖くない!成年後見制度で財産を守ろう ■NISAの致命的な欠点について ■介護保険は保険ではない「親の介護は老人ホームにお願い」は甘い考え 介護保険を考える(1) ■介護保険は保険ではない ケアマネジャーと上手に付き合う方法 藤尾智之 藤尾真理子税理士事務所 税理士 ファイナンシャルプランナー シェアーズカフェ・オンラインからのお知らせ ■シェアーズカフェ・オンラインは2014年から国内最大のポータルサイト・Yahoo!ニュースに掲載記事を配信しています ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家の書き手を募集しています。 ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家向けに執筆指導を行っています。 ■シェアーズカフェ・オンラインを運営するシェアーズカフェは住宅・保険・投資・家計管理・年金など、個人向けの相談・レッスンを提供しています。編集長で「保険を売らないFP」の中嶋が対応します。 |