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最近、青山学院の須田敏子教授の記事に深く共感しました。

「『専業主婦にはリスクがあると知るべき』青学 須田敏子教授が語る女性が働くことの意味」(前編)
「『良いお母さん』のレベルが高い日本 須田敏子教授が語る、女性が働きやすい社会への提言」(後編)

非常に良い記事ですので、皆様には是非ご一読頂きたいのですが、特に心に響いたのは、「国民が豊かで幸せになるという目的のための施策にジェンダーを持ち込まないほうがいい」というところと、「日本は『よいお母さん』のレベルが高すぎる」というところです。

日本のお母さんに求められるレベルは高すぎる?
特に「日本は『よいお母さん』のレベルが高すぎる」という一言には、正直を申しあげれば、肩の荷が下りたような感覚を覚えました。「やっぱり、私たち、頑張りすぎていた面、あるよね」という想いを持つお母さんたちも多いのではないでしょうか。

厚生労働省の「平成23年版働く女性の実情(概要版)」にある「第一子出生年別に見た、第一子出産前後の妻の就業経歴」というデータによれば、第一子を産む前から働いていた女性で第一子出産後も働き続けている女性は、1980年代後半の39%から、2000年代後半には38%と微減しています。周囲では出産後も働き続ける女性が増えてきたように感じますが、データで見るとまだまだ出産で就業継続を断念する女性が多いのが実情です。

理由としては、保育園が足りない、会社側の対応が十分ではない、等いろいろと外部要因が取りざたされますが、この「求められるレベルが高すぎる」というのも隠れた定性的な要因なのではないでしょうか。仕事に加え、育児介護家事、そして、「良妻賢母」であることをも求められたら、女性は参ってしまいます。24時間365日しかない中で、生産性をぎりぎりまで高めていますが、結構、大変です。

仕事セーブ要因を抱える場合の仕事に対する意識の差が賃金の差に
周りから「お母さん」に求められるレベル感の高さを変えてほしい、と思う一方で、私たち女性の方の仕事に対する意識も変えていく必要に迫られつつあります。

前々回出した働く女性を類型化したマトリクスでも示したように、仕事セーブ要因のある女性が仕事に求めるレベルについて、意識に差があります。仕事セーブ要因があるとしてもより高付加価値の仕事をしたいという女性と、仕事以外のことに時間を多く使うかわりにルーチンワークでよい、という女性です。もちろん、どちらも「あり」です。

ただ、非常にシビアなのですが、今後、後者のルーチンワークでいいという「そこそこセグメント」は激戦になっていきます。ルーチンワーク、ということは、その作業について、企業側の立場としては、「なるべくコストをかけずすませたい」と思うエリアです。したがって、より安い賃金設定が許される若手や、一部の外国人労働者、というライバルが多く参入してくるエリアということになります。「女性活用」「女性の活躍推進」と、一見これからの働く女性にとっては追い風が吹いているかのように語られる労働環境ですが、ここのエリアについていえば、実態はむしろ厳しいものとなります。男女問わず、いかに高付加価値の仕事ができるかが、現在より、より一層賃金に反映され、場合によっては仕事の継続の可否に影響するケースも想定されるのです。

行動を変えていくときに求められる4つの要素
では、仕事セーブ要因のある女性はどのような仕事に対する意識、あるいは判断の軸を持ったらいいのでしょうか。自分の考えと行動を変えていくことが必要になりますが、一般的に人が行動を変えていくときには、以下の4つの要素が重要だといわれています。

(1) 何が求められているかを理解して納得すること
(2) 新しい行動を、公式な仕組みでサポートすること
(3) 必要となるスキルを身につけること
(4) 新しい行動を実行しているロールモデルがいること

現在、政府が女性活用策、あるいは配偶者控除について活発に議論・提言していますが、これらは(2)に該当します。言い換えれば、これらの公的なサポートは重要ではあるが、それで十分ではない、ということになります。以下では、主に(1)(4)、そして軽く(3)について、私たち女性が具体的に行動できることを中心に述べていきたいと思います。

いくら稼ぎたいのかを決めて、自分で機会を求めていく
まず、4つの要素の(1)としてわかりやすいのは、前述の「お母さん」像の見直しをした上で、「自分がいくら稼ぎたいのか」を数字できちんと把握するということです。知識集約型産業構造となっている現在では、「ほかの誰かができる仕事」あるいは「コンピュータで済んでしまう仕事」も増えてきているため、高付加価値化を目指す人のほうが賃金も高くなります。もらえる給与に見合った仕事をする、という受け身のスタンスではなく、自分がどれだけ稼ぐ必要があるのかを見極め、それによって仕事に対する自分のスタンスを決めて、会社と交渉していくことも必要です。働くモチベーションは報酬だけではありませんが、仕事が生活の糧である以上は、現在必要な額を把握し、その額を稼ぐためにより多くの知識や経験が求められるのなら、そのために行動する必要があります。

(3)は、この「自分が求める報酬が得られる仕事に必要な知識や経験」にあたります。自らやりたいことやなりたい姿がはっきりすれば、何を身につければいいかがわかるはず。それさえわかればしめたもの。女性は、男性に比べても、一般に同時並行で複数のことをするのが得意と言われています。隙間時間をぬっていろいろなスキルを身に付けていくことができるのではないでしょうか。

他社の他者とのネットワークを創る

行動を変える4つの要素の(4)にあるように、頑張って働き続けようと思ったときに、社内に相談したりお手本にしたりできるロールモデルがいてくれると、とても心強いものです。でも、多くの企業でこれから働き続けようという女性の「自社内の完全なるロールモデル」は本当にごくわずかであると思います。

社内に探すのが難しければ、方法としては「社外に探す」と「他人でなく、自分がロールモデルになる」の二つの方法が考えられます。現状を見れば、BtoC(企業と一般消費者との取引)を扱う企業の方が、BtoBの企業よりも女性活用が進んでいます。そうした会社でいきいきと働いている女性の先輩の話を聴いて、今の自分が取入れられるところを部分的にでも真似てみる。おそらく「考え方、価値観」というところも大きいと思いますが、それでも、自社の中だけで働き方を考えるよりはずっと視野が広がります。セミナーに参加して新たな出会いを探すのも一つの方法ですし、学生時代の友人の中で、他社で働いている友人とSNSなどでつながって久しぶりに会って話をしてみるだけでも、だいぶ違います。元気な女性が増えている今、「自分がロールモデルになる!」という選択肢を持つ女性もいます。事実、私が最近講師を務めた、女性事務職の方を対象にした講座のグループワークでは、「自分がロールモデルになれればいいのかも」と発言している方がいらっしゃいました。

働きづらい理由を探すのはいくらでもできますし、周りの賛意も(残念ながら)得やすいかもしれません。でも、働きたい気持ちがあるのであれば、現実を見据えながら、自分でどんなふうに働きたいのか、いくら稼ぎたいのかを決めて、それを実現できるように活動するしかありません。「働きたい人が働きやすい社会をつくる」という須田教授の言葉に強く同意します。

《参考記事》
■「ニッポンのお母さん」はレベル高すぎ?OfficeCOM(小紫恵美子)ブログ
http://officecom-ek.com/?p=206
■結局「女性活用」って何すればいいの? 小紫恵美子
http://sharescafe.net/38770445-20140511.html
■育児・介護しながら働く人たちが増えてきた。経営サイドがすべきことは何か? 小紫恵美子
http://sharescafe.net/39019075-20140525.html
■女性が経営者にむいている理由 小紫恵美子
http://sharescafe.net/38119326-20140407.html
■事業は永遠に生き続けられるか?~大事な事業を確実に引き継ぐためには  小紫恵美子
http://sharescafe.net/38572763-20140430.html

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