22ndコラム写真

平成26年7月1日に今年度分の路線価が発表になりました。集団的自衛権の閣議決定の翌日ということもあり、普段は一面を飾るニュースが社会面に追いやられていました。路線価は相続税で不動産の評価をする時に利用されることをご存知でしょうか?来年からは相続税が増税となります。いったい親父の家の土地はいくらなんだ?と悩んでいる方。これを読めば計算できます。

■路線価とは
路線価とは土地の値段です。国税庁が毎年7月、全国津々浦々の土地に値段を付けてそれを発表します。実際には道路に値段をつけて、その道路に接している地面は㎡あたり○○円という見方をします。銀座5丁目が日本一土地の値段が高く、1㎡あたり2,360万円となっています。ご注意していただきたいのは、あくまで税務署用の書類作成の時に使う値段なので、実際の取引金額とはかけ離れています。

■路線価は上がったのか下がったのか
都内は、軒並み上昇です。景気回復が見られること、東京五輪が6年後に開催されることから、不動産の取引が増加しており、その影響を受けていると考えられます。繁華街だけの動きではなく、東京全体で土地の値段が上がっています。

■両親の自宅土地を査定する方法
さて、ご両親のお住まいは戸建てでしょうか?戸建ての場合はその建物の建っている土地全部がご両親のものとなっているはずです。国税庁のホームページの平成26年分(最新年分)をクリックして都道府県を選び、さらに路線価図を選びます。そのあとは住所を追いかけてください。住宅地図が表示されます。この地図の各道路に矢印と数値が記載されています。矢印はその範囲を示し、数値は金額(千円単位)です。ここにご両親が住んでいると確信が持てたらその前にある数値をメモしてください。

もしも100㎡の土地をお持ちで、その土地の前の道路の数値が500Cでしたら、100㎡×500千円=5千万円になります。実際は様々な調整が行われますが、大体の金額がこれで計算できます。「え~、だって30坪くらいの小さい土地だし、建物だって築30年だし、高くない?」と思われてもこれが現実です。

■相続対策の第一歩
確か来年から相続税って増税になるんだよね・・・とぴんときた読者の方は聡明です。来年1月1日から控除額(おまけ)が▲40%となります。妻と子ども一人が相続人となる場合は、相続財産が4,200万円を超えると相続税がかかります。上記の例は、土地だけで5,000万円でした。これに建物が加算されます。終身雇用世代なので退職金も2,000万円を超えてきますね。その他にもしっかりと預貯金があるはずです。平成26年12月31日までは妻と子供一人の場合でも7,000万円までは相続税はかかりませんでしたので、その影響はとても大きいです。

■増税というよりかは多くの人に納めさせたい
今までは相続税はお金持ちからとるものと思われてきました。しかし、団塊世代がマイホームをすでに持ち、退職金をたくさんもらうとなると別にお金持ちでなくてもそれなりの財産を保有することとなります。国民4人のうち1人は、65歳以上の高齢者です。政府としては、25%以上をも占める高齢者に富が偏るとお金が社会に流通しなくなると考えました。消費税のように多くの人に納めてもらうには控除(おまけ)を削るしかないと決断したのでしょう。

■相続税の増税は始まったばかり
今後ますます高齢者は増えます。富もますます偏ります。このことから、控除(おまけ)をさらに減らすのは当然の施策と考えられます。実は今回の削減された控除(おまけ)以外にも、たくさんの控除(おまけ)があります。例えば、生命保険金や退職金です。近い将来、ここにもメスが入るものと考えられます。保険会社さんは、ここは触れられたくない場所です。

■子供や孫の笑顔のための相続税対策
相続税対策とは、なにも無理に賃貸アパートを建てたり、生命保険に加入したりすることではありません。第一歩は、相続税はいくら納めることになるのかを知ることです。次にその財産は誰に持たせたいのかを考えます。その上で相続税や贈与税で用意されている特典を活用して再度相続税を計算します。その時に計算された相続税を抑えるために生前贈与をすればいいだけのことです。

■まずは対話を
ご両親に死んだあとのことを聞くのは難しいです。子供(ご両親にとってはお孫さん)のためにも、今ある財産をどのように残していこうかという切り口でお話されてみてはいかがでしょうか?介護が始まってしまうとご両親の意思を聞き出すのは難しくなってしまうかもしれません。相続税が大きく変わる今年がご両親と対話をする良い機会だと思います。

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税理士・ファイナンシャルプランナー 藤尾智之

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