ビジネスメソッド

世の中にはビジネスを効率的に進めるために考案された様々なメソッドがある。中小企業診断士なら企業診断においてSWOT分析を使うことが定番だ。MBAホルダーならMECEやロジカルシンキングを使うのだろう。アイデアを創出したいなら、KJ法やブレインストーミングを思い浮かべるし、会議を円滑に進めたければファシリテーションなど、ビジネスのあらゆる場面で、何らかのメソッドが存在するといっても過言ではない。

■ビジネスメソッドを上手く使えない人とは?
ビジネスメソッドは当然のことながら、効果があるから広まっているはずである。ところがビジネスメソッドを使っても、必ずしも成果に結びつけられない人がいる。筆者はこのような人には3つのタイプがいると考えている。

一つ目は、ビジネスメソッドそのものが好きなタイプだ。知識欲が旺盛で様々なビジネスメソッドを学ぶ姿勢は結構なのだが、仕事においては、学んだメソッドを試すことが目的となりやすい。そのため成果を出すことへのコミットが疎かになりがちである。このタイプには、覚えたメソッドをやたらに自慢したがる人もおり、周りを巻き込もうとすることも多い。その場合、メソッドの使い方や有効性は事細かく教えてはくれるが、成果が出ることは少ないため、巻き込まれた側は無駄な時間を費やされることになる。

二つ目は、特定のビジネスメソッドを使うことを信じて疑わないタイプだ。このタイプは過去にそのメソッドを使ったことによる成功体験を持っていることが多く、それ故どんな場合でもそのメソッドを使わないと気が済まない。言うまでもなくビジネスメソッドは、必要な時に、最適なメソッドを使うことで効果を発揮するものだが、そんなことはおかまいなしだ。成果が出なければ、そのうちあきらめることもあるのだが、残念ながらメソッドを使ったことが主因ではなく成果が出ることもある。その場合、ますますメソッドに対する信仰心に磨きがかかることになる。ある程度、ビジネス経験を積んだビジネスパーソンであれば、こうした本質を見抜くことができるが、経験の浅い若いビジネスパーソンからするとそのメソッドのプロフェッショナルに見えてしまい、尊敬の対象となることもある。そのことがまた、このタイプのメソッドへの信仰を厚くする原因になる。

三つ目は、ビジネスメソッドを個人の別の目的のために利用するタイプだ。このタイプはファシリテーションやブレインストーミングなど集団のアイデアを集めるメソッドが好みであり、ほとんどの場合、自分はアイデアを出す側ではなく仕切る側にまわる。その理由は一つ、自分にはアイデアがないので、人のアイデアが欲しいからに他ならない。このタイプが仕切る場に参加して、うっかりいいアイデアを話してしまうと、いつの間にやらアイデアの発案者が、自分ではなくなってしまうことになる。このタイプは人を集めることに長けていなければならないため、物腰が穏やかで、優しい雰囲気であることが多く、コミュニケーション能力も高い場合が多い。それ故アイデアを盗用されても周りにそのことを信じてもらえず泣き寝入りするしかなくなることもある。

■メソッドを使う本来の目的を見失わない
マーケティングでは「ドリルを買う人が欲しいのは「穴」である」という有名なことばがある。ビジネスにおいても、「穴」に相当する成果を出すことが本来の目的であり、ドリルを集めたり、必要がない時にドリルを使うようにビジネスメソッドを使うことが目的ではない。にも関わらず、こうした行動をとってしまう人は、基本的にマニアックな人たちなのだろう。技術職であればマニアックな性格は強みになる場合もあるが、残念ながら技術職以外にも少なからずこのような人はいるものである。もしあなたの職場に3つのタイプに当てはまるビジネスメソッドマニアがいるようであれば、対応に十分な注意を払ってもらいたい。

《参考記事》
■アイス・バケツ・チャレンジの拡散をシミュレーションすると?(村山聡 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/40562816-20140828.html
■メジャーで最も不運な投手?黒田博樹の安定力(村山聡 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/40241196-20140808.html
■ダルビッシュが異議を唱える100球制限の根拠PAPとは何か?(村山聡 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/39968949-20140721.html
■平均値をウソつき呼ばわりするのは、もうそろそろ終わりにしよう。  村山聡
http://sharescafe.net/39363307-20140614.html
■「飲み会は残業代出ますか?」と聞く前に新入社員が心得ておくべきこと 村山聡
http://sharescafe.net/38576145-20140430.html

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