![]() 『ダイエー』の名前が無くなるとの衝撃的なニュースが少し前の世間を騒がせました。個人的には、以前住んでいた所でダイエー系列のスーパーを良く利用していたし、友人が『ダイエー』でアルバイトをしていたこともあり親しみを感じていました。 日経新聞では一つの時代の終わりを イオンは24日、ダイエーを2015年1月に完全子会社にすると正式発表した。18年度をメドに総合スーパー「ダイエー」の店舗名を廃止し、イオングループの新ブランドに集約する方針。完全子会社化で事業効率化を図る。「流通革命」を掲げ価格決定権をメーカーから小売業に移したダイエーの店舗名は約60年の歴史に幕を閉じる。2014/09/24 日本経済新聞 と報道しており、ダイエーの掲げた『流通革命』について触れています。また、店舗名が約60年の歴史に幕を閉じるとあるように、『ダイエー』という店舗名もなくなるようです。 ■名前もなくなります もともと『イオン』が2013年に『ダイエー』を子会社化しており、経営権を握っていたので完全子会社化すると言っても名前は残るんだろうな…と個人的には思っていたのですが、読売新聞によると 創業から半世紀以上の歴史を持つ「ダイエー」の店舗名を、18年にもなくす方針だ。イオングループの店舗とともにスーパー事業を一体的に見直す。 と報道されており、現在の『ダイエー』は『イオンフードスタイルストア』(仮称)などに名称変更されるとされています。 個人的には、『ダイエー』の店舗名には往年の輝きが残っていると思います。というのは、一つの時代を作った企業ですし、経営の教科書にも流通業の歴史として『ダイエー』の名前が明記されている例が少なくないからです。 また、『ダイエー』と言われると適正な価格で商品を提供しているスーパーであるといったイメージを持っている人も多いと考えられます。また、野球ファンにはダイエーホークスといった名前を思い出す人もいると思います。 このように、かなりの知名度を誇る名前を捨ててまで、『イオン』の名の下に運営した方が良いとの判断をするわけですから、抜本的な経営の革新を実施しようとする意気込みが感じられますね。 ■今の当たり前は『ダイエー』が作った さて、報道ではもはや『ダイエー』は終わってしまったかのように言われていますが、『ダイエー』が日本の小売業に与えた影響は非常に大きなものがあります。 例えば、長らく小売業の日本の小売業を名実ともに引っ張ってきた百貨店、三越の売上を百貨店以外の業態で初めて抜いたのが『ダイエー』です。 また、現在では小売業が価格を決定するという事が当たり前のように行われていますが、(製造業は希望小売価格を提示するケースがありますが強制力はありません)これも『ダイエー』が製造業との対立を厭わずに行動した結果です。 『ダイエー』は、小売業側が価格を決定するという理想のために当時の松下、現在のパナソニックと『ダイエー・松下戦争』と呼ばれる争いを起こしました。 当時、松下は流通の各段階が適正利潤を確保することを理想としており、流通の各段階が適正な利潤を確保できるような希望小売価格を付けていました。現在では考えられませんが、当時は希望小売価格はメーカーの希望ではなく遵守すべき価格だったのですね。 しかし、それにもかかわらず『ダイエー』が希望小売価格を無視して安売りをしてしまっては値崩れを起こしてしまうというわけです。そして、その遵守すべき価格を守らない『ダイエー』は秩序を破壊する厄介者だったのです。 そして対抗策として松下側は『ダイエー』に商品の納品を拒否するといった策に出たのです。 と、この辺は歴史のお話になってしまうので、最終的にどうなったかのみを記すにとどめておきますが、結果として、現在のように小売り側が価格決定の主導権を握ることになったのです。 ■名前はなくなっても理想は生き続けるのです 企業は自社が儲かる事だけを目的に運営されているわけではありません。昔、近江の商人は『売り手よし、買い手よし、世間よし』という『三方よし』の理想を掲げていたそうです。 このような優れた理想、理念は時代が変わっても引き継がれていきます。そして、『ダイエー』が掲げた理想、「良いものをどんどん安く」という考え方は、今の世の中にも確実に引き継がれていると思われます。 小売業側がある程度の価格決定権を握る事により、製造業が価格をコントロールをすることが難しくなる。その結果、経済全体としての効率化をもたらす。『ダイエー』の良いものを安くという理想は、一つの時代を作っただけではなく、製造業がその供給力によって寡占体制を構築することを難しくし、消費者や経済全体に利益をもたらしてきたのです。 その意味では、『ダイエー』は敗れたわけではなく、その理想はしっかりと受け継がれていくのですね。 【参考記事】 ■経営者保証という見えない鎖を外すためのガイドラインを活用し、有限責任というタテマエをタテマエではなくそう(岡崎よしひろ 中小企業診断士) http://4416keiei.net/archives/11710187.html ■自社と関係ない人が考えた経営方針って役に立つの?小僧寿し報道に見る本当の狙い(岡崎よしひろ 中小企業診断士) http://4416keiei.net/archives/11709978.html ■社会福祉法人の内部留保を『活用』させても何も改善しないですよね? (岡崎よしひろ 中小企業診断士) http://sharescafe.net/39628354-20140701.html ■耳触りの良い『軽減税率』導入に伴うコストはだれが負担するのですか?(岡崎よしひろ 中小企業診断士) http://sharescafe.net/39890391-20140717.html ■ソニーのPC事業売却の意義を固定費というキーワードで解説し、部下の尊敬を勝ち取ろう 岡崎よしひろ http://sharescafe.net/36933366-20140208.html 中小企業診断士 岡崎よしひろ ![]() シェアーズカフェ・オンラインからのお知らせ ■シェアーズカフェ・オンラインは2014年から国内最大のポータルサイト・Yahoo!ニュースに掲載記事を配信しています ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家の書き手を募集しています。 ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家向けに執筆指導を行っています。 ■シェアーズカフェ・オンラインを運営するシェアーズカフェは住宅・保険・投資・家計管理・年金など、個人向けの相談・レッスンを提供しています。編集長で「保険を売らないFP」の中嶋が対応します。 |