![]() 同じ資格を持つ者として非常に残念だが、中小企業診断士が執筆した書籍に著作権侵害の恐れがあり、該当書籍、及び関連書籍が絶版となった。 日本経済新聞出版社は19日、今月12日に刊行した「うかる!中小企業診断士 テキスト&問題集2015年版」第3巻の一部に他社の書籍などに酷似した部分が見つかったとして、「うかる!」第1~3巻を回収、絶版にすると発表した。 該当書籍を確認した訳ではないが、絶版という判断にまで至ったということは、相当な量の内容が引用され、その出典が明らかにされなかったと推測される。 ■中小企業診断士は難関資格 手前味噌で恐縮だが、中小企業診断士は難関資格だ。試験は一次試験と二次試験があり、それぞれの試験の合格率は20%程度であることから、単純な合格率は4%という狭き門だ。また経営に関する体系的な知識を学ぶことができるため、ビジネスパーソンに人気の高い資格であり、筆者も含め7割が企業に勤務していることも特徴だ。私の知人にも日本を代表するような企業に勤務している中小企業診断士がたくさんいる。 このように中小企業診断士資格を取得した人は、基本的に学力の高い人のはずだ。それがなぜ著作権の侵害の恐れがあるような引用をしてしまったのだろうか? ■個人に原因を求めるのは簡単だが 本人のリテラシー不足やモラルの低さを原因として挙げることは簡単だが、それだけが原因であると結論づけることは早計ではないだろうか。問題となった書籍の情報を検索してみると、編著者である中小診断士は社会人向け経営大学院の教授であり、他の著者はその大学院の卒業生であった。 つまり教授である中小企業診断士が、教え子の中から執筆者を集めたと考えられる。もちろん集めるにあたっては、執筆できる能力があると判断して選んだはずである。とはいえ、教授と教え子という関係は、会社組織における上司と部下という関係と同じではない。教え子が学校の課題に関してはきっちりとこなしてきたとしても、そのことで対価と責任が発生する仕事を遂行できると判断することは、上司が部下の能力を判断するより、リスクが高いはずである。 またこの書籍には問題を起こした診断士以外に二人の診断士が著者として名を連ねているが、3名ともそれぞれ独立している。推測ではあるが、執筆は別々の場所でしていたのではないだろうか。だとすればそれは周囲の目という監視が存在しないことを意味しているといえる。 そして最大のリスクは、教授と教え子という関係においては、教授には教え子の生殺与奪を握る人事権がないことである。会社であれば、これだけの問題を起こしたとしたら、間違いなく会社に居続けることは不可能だろう。それまで継続的に得られていた収入がいきなり無くなることになる。しかし今回の関係では、取引先の一つを失い、社会的な信用を大きく失ったことは間違いないが、収入すべてが無くなるとは必ずしも言いきれない。 以上のことから、管理の目が行き届かないゆるい関係では、問題となる行動を起こしそうになった時、それを未然に防ぐことは非常に難しいといえる。 ■民主型リーダーシップでリスクの低減を では会社であれば、まったく問題が起きないかといえば、そうではないことは明白だ。席が近く、日頃の仕事ぶりも見えており、人事権があったとしても、管理側が管理する能力がなければ、リスクが低減することはない。 アメリカの心理学者レヴィンは、リーダーシップのあり方を専制型、放任型、民主型に分類した。研究者など学力の高い専門家集団には放任型が向いているとされているが、放任を放置と取り違えてしまえば、今回のようなことが起きるリスクが高まるだけである。学力があるからといって決して過度に信じすぎることなく、適切な援助をしつつ、管理も怠らない民主型リーダーシップを発揮することが、本件のようなリスクを低減する一番の方策だろう。 《参考記事》 ■あなたの会社にもいるかもしれない?ビジネスメソッドマニアに気をつけろ!(村山聡 中小企業診断士) http://sharescafe.net/40838018-20140914.html ■メジャーで最も不運な投手?黒田博樹の安定力(村山聡 中小企業診断士) http://sharescafe.net/40241196-20140808.html ■ダルビッシュが異議を唱える100球制限の根拠PAPとは何か?(村山聡 中小企業診断士) http://sharescafe.net/39968949-20140721.html ■平均値をウソつき呼ばわりするのは、もうそろそろ終わりにしよう。 村山聡 http://sharescafe.net/39363307-20140614.html ■「飲み会は残業代出ますか?」と聞く前に新入社員が心得ておくべきこと 村山聡 http://sharescafe.net/38576145-20140430.html ![]() シェアーズカフェ・オンラインからのお知らせ ■シェアーズカフェ・オンラインは2014年から国内最大のポータルサイト・Yahoo!ニュースに掲載記事を配信しています ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家の書き手を募集しています。 ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家向けに執筆指導を行っています。 ■シェアーズカフェ・オンラインを運営するシェアーズカフェは住宅・保険・投資・家計管理・年金など、個人向けの相談・レッスンを提供しています。編集長で「保険を売らないFP」の中嶋が対応します。 |