米軍統治時代を経て、日本に復帰した沖縄の世替わりを象徴するのが、米軍嘉手納基地の門前町として栄えた記憶を持つコザ(現在の沖縄市)だ。

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■基地の街コザは終わったのか
米軍統治という特殊な環境下に置かれた沖縄県にあって、極東最大の嘉手納米空軍基地の門前町的に誕生したのがコザという街である。現在は、合併して沖縄市になっており人口は約13万人。那覇市に続く人口規模を持つ。

夜のコザを歩くと、いたるところでライブハウスに出会う。その数およそ20軒。毎夜のように地元ミュージシャンによるライブが行われており、市民は日常的に生の音に触れることができる。

アメリカ文化のダイレクトな流入によって音楽文化が発展したため、オキナワンロックの聖地として知られており、また、沖縄中から人が集まったために民謡・島唄も発展した。反戦をテーマとする沖縄フォーク村もコザで生まれた。

とはいえ、アメリカ世(米軍統治時代の意味)から大和世(日本統治の意味)へと、本土復帰という世替わりを経て、コザは徐々に力を失った。米軍基地の返還を受けて開発された新興タウンや郊外のショッピングセンターに客を奪われ、中心市街地はシャッター通りと化した。

祭りやイベントの時こそ大勢の人が集まるが、客観的に見れば観光客が素通りする「終わった」感のある街とされている。

ただ、この街はしぶとい。終わりそうでなかなか終わらない。原因はコザンチュ(コザ人)たち。一から街を作ったと自負する人たち。あるいはコザの文化に惹かれて移り住んだ人たち。音楽家もいればアーティストもいる。オジサンから若者まで、街を愛する人たちがいる。彼らが街を支えている。例えば……。

■交流のきっかけは3.11、謝謝台湾
発端は2年ほど前の居酒屋談義から始まった。東北大震災の義援金として、台湾から寄せられた200億円もの額に驚いたのは地元コザで街づくりに燃えるおじさんたち。彼らは、コザサポーターズクラブという集まりを設けて中心市街地での交流(別名・飲み会)を楽しんでいる。

このおじさんたちの間で「我々は台湾に感謝すべきである!」という機運が盛り上がるなか、偶然にもコザの音楽イベント開催期に、台湾の子どもたちが沖縄へ演奏旅行にやってくることを知り、恩返しのチャンスとばかりにコザのおじさんたちは張り切った。

コザのいたるところに「謝謝 台湾」のタペストリーが掲げられ、歓迎の意を表明するとともに、台湾の子どもたちの演奏活動にも協力、同行の父兄たちを大いに感激させた。ちなみにそのタペストリーは、コザの看板屋の社長からのプレゼントである。

こうして台湾との交流が始まった。沖縄県のおよそ2倍の人口を要する高雄県の陳菊市長が沖縄市を訪問するなど、輪が広がっていく。ここに至る経緯には、行政の目論見や地域振興予算などは何もない。あくまでも、民間主導。オジサンたちの心意気であり「おもてなし」であった。

人気のある観光地なら何もしなくても成り立つかもしれないが、コザのような街は、ブームに左右されないリピーターに来てもらうしか生きる道はない。来てもらうためには、行く努力もしなければならない。交流経済とは、相互に行きかうことで成り立つ。一方通行では長続きしない。

■国外で初開催となったオリオンビアフェスト
コザのおじさんたちと台湾との交流が始まって約2年。ついに大きな事業が動き出した。沖縄の人気イベント「オリオンビアフェスト」の国外初開催である。

オリオンビアフェストとは、コザを筆頭に石垣島、宮古島などで行われている、いわばドイツのオクトーバーフェストのようなもの。沖縄の人気ミュージシャンが総出演する無料の野外イベントで、毎回数万人が集まるといわれている。

そのイベントがなぜ台湾でとなったのか。実は、台湾で沖縄居酒屋などを経営するコザ出身のオジサンが、せっせとオリオンビールをアピールしていたのである。その成果もあってか、オリオンビールの海外販売は、台湾がトップだという。聞くところによると、台湾のコンビニではオリオンビールが売られているそうだ。

海外からの観光客が激増し、地域の国際化が加速する昨今、地元系企業であっても安穏としてはいられない。台湾と沖縄の交流が進展していくのであれば、オリオンビールの台湾での勝機も増えていくはずだ。
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■コザのおじさんズ、台湾に行く
10月18日、19日、台湾の高級百貨店の屋外広場で開催される国外初のオリオンビアフェストに合わせて、コザのオジサンを中心とする交流チーム、ビアフェストに出演する沖縄のミュージシャンたち、沖縄市観光協会が派遣するエイサー隊、そして市民たちによる台湾観光チームと、総勢150名に及ぶ沖縄県民が、オリオンビアフェスト支援、いわゆるイベントの盛り上げ役として台湾に渡った。ちなみに、この日のためにオジサンたちの多くは、台湾模合という集まり(飲み会)を設けて旅行代金を積立てていた。

実は、交流チームには隠れた役割があった。

「台湾人は野外での飲酒に馴染みがないので、沖縄の人がサクラとなって、楽しみ方を演出してほしい」

といった趣旨が、ビアフェスト主催者側からそれとなく伝わってきたのだ。当然ながらコザのオジサンたちは張り切った。オリオンビールを大いに飲み、踊り、会場を盛り上げた。

しかも彼らが行く先々で繰り広げた交流は、現地財界人のグループだったり、台北一のマンモス小学校だったり、台湾大学で学ぶ留学生たちだったり、あるいはビアフェスト会場で隣り合せた台湾人たちとの飲兵衛交流と、実に多様だった。

参考までに、今回の成功を受けて、オリオンビアフェストは来年も台湾で開催されることが決まったという。

■人さえ居ればナンクルナイサー(なんとかなるさ)
付け加えれば、毎年11月の最終週末(今年度は11月28日~30日)に沖縄市で開催される沖縄国際カーニバルおよび沖縄国際アジア音楽祭 musix in KOZAには、台北市の子供吹奏楽団や伝統獅子舞などを含めて台湾から大勢のお客様がやってくる。

コザの取り組みで分かるように、地方はいま、必死に動いている。失敗も多々あるが、日本各地で地元愛に溢れた人たちが率先して動いている。地方行政もまた、市民たちの自発的な動きに呼応して支援を惜しまない支援体制を進めている。

だから、「人さえいれば何とかなる」気がする今日この頃である。

【参考記事】
■沖縄市の音楽事情「沖縄で音楽スル?」
 http://www.kozamusic.net/
■東京と地方で最低賃金が200円も違うのは当然のことなのか?
 http://sharescafeol/article/edit?id=41547054
■刺激的なプロモーションに頼る商売から脱却しよう
 http://sharescafe.net/41291401-20141014.html
■人の感覚を狂わす新しい経済学
 http://sharescafe.net/34457310-20131101.html
■JR九州「ななつ星」に学ぶ、おもてなしの心と経営判断。
 http://sharescafe.net/33871466-20131011.html

※写真と文 鈴木雅子・優しい気持ちで沖縄

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