![]() 先週は女性閣僚の辞任があったものの、働く女性の割合は増え、女性起業家を増やそうという大きな流れには変化はないでしょう。起業セミナーなどはもちろん、ビジネスプランコンテストなど、女性起業家を応援するプロジェクトも全国で増えてきています。 こうした女性起業支援のお仕事に携わる中で、起業する女性の方たちから、「身近な女性起業家や経営者の方のお話を聴きたい」という声をよく聞いてきました。一方で、セミナーなどに出向かないと実際に聴く機会が少ない、というのも事実です。そこで、折に触れ、女性経営者へのインタビューを行い、起業、経営の「ホントのトコロ」をお伺いする機会を作りたいと思います。 その第一弾として、maojian works株式会社の毛見純子氏へのインタビューをお届けします。同社では、働く女性の365日を応援する日本製ジャージードレスとスーツのブランドである「kay me」を展開、銀座の本店、新宿小田急に常設店を持ち、そのほかにも全国各百貨店に期間限定でお店を展開、急成長している会社です。 今回は、クリエイティブな仕事をする中で毛見さんが具体的に大事にしていること、スタッフを雇用して一緒に働くときの極意、さらにプライベートの過ごし方などについてお伝えしていきます。 (前半のインタビューはこちら) ■すべての遊びや体験は、マーケティングであり、デザイン ――注目されるワンピースやスーツをたくさん作っている毛見さんですが、デザインは今ほとんど毛見さんご自身が手掛けていらっしゃると伺いました。お仕事をしていく上で、これだけは特に気を付けよう、と心がけていることはありますか? 毛見 デザインをするためには、社内で机に向かって考えることだけでなく、外に出て、様々なものを見て感じるようにして創造性を高めていますね。もともと大学時代にイベント団体の主宰をしていたこともあり、会社員時代から、仕事以外の場で交流会などを積極的に主催していました。20代前半ではビジネススクールの仲間と「キャリア」を考えるイベント団体を、コンサルティング会社時代にはひとりでまだ「婚活」という言葉がない頃に、キャリア女性の「非日常」になればとパーティーを主催していました。組織内の人ばかりではなく、人に関しても多くの分野の方々の体験や考え方をあえて吸収していくほうが、より確信に近い結論が導き出せるように思っています。すべての遊びや体験は、マーケティングでありデザイン、ですね。 ――具体的にそれを感じられた場面を教えてください。 毛見 たとえば以前、あるラグジュアリーホテルの女性管理職の方が、お客様にホテルの和室で伝統文化を体験いただく催しを企画されているというお話を伺いました。その女性はお若く活躍されている方ですが、お客様はご年配でかつ文化や芸術に詳しい方々。そのお話を聞いているときに、ふと、その方が和室で忙しく座ったり立ったり、正座したり、お客様のお話に耳を傾けていらっしゃったり・・・そういうイメージが見えてきました。そうしたシチュエーションの中でも1日中ラクで、そして場にそぐうシックな装いでもありながら華やかに・・・そういう願いをこめて、すぐに絵を起こしました。そうしてできた作はTSUBAKIYAMAというタイトルで発表させていただいています。 美術館や一流ホテルなどに出かけたり、まったく違う業種の方に会ったりするなど、いわば異質の世界に触れて日頃の仕事に活かしていく時間を取ることが、私にとっては大切なことです。 ■スタッフに任せることと、自分がやることは責任をもって明確に分ける ――スタッフを雇ってお仕事をされていますが、創業者の場合、「仕事をどこまで他人に任せていいのか」について迷われる方もいらっしゃいます。そのあたりは何か工夫をされていますか? 毛見 今ではおかげさまで意識して「わたしが最も価値を発揮する仕事をして会社に貢献しよう」と区分するようにしています。もっともブランドを立ち上げた当初は、スタッフがわたし以外に妹である社員しかいませんでしたので、ふたりで手分けしてすべての業務を行っていました。事業計画立案、デザイン、商社やパタンナーとの交渉、素材調達、生産管理、写真撮影、ブログ書き、営業、期間限定ショップの設営と撤収、従業員の教育資料の作成から研修、そして販売業務・・・。 しかし、時間は有限です。スタッフが勤めてきて良かったと思える、関係会社の人たちに当社と付き合ってよかった、と思ってもらう、お客様に当社製品を使っていただきご満足いただく。そのために、私が生きている間にどれだけのものを提供できるのか、大きな責任があります。そうしたことを考えると、「自分しかできないこと」と「誰かがやればできること」は明確に区分して、自分の限りある時間を前者にそそぐことが必要だと考えています。 加えて前職の外資系コンサルではどのポジションの人がどの仕事をするべきなのか、明確に1時間あたりのフィーで区分されていたことがあり、基本的にはポジションや役割を自覚して、「ほかの人にはできない」かつ「自分がすべきこと」に専念する考え方がベースにあります。 ――そうした中で、スタッフに仕事を任せる際、あるいは採用する際に気を付けていることは何でしょうか? 毛見 まずスタッフ各自の強みにフォーカスし、できることを言葉にして伝えることです。もしできなかった場合には、なぜできていないのかを言葉にして明確にし、それに対してフィードバックをしていくことがよい、と思います。採用の時には目的意識をちゃんと持っているか、自分を客観視できているかを重視します。スタッフが何かを得たいためにコミットして仕事に楽しみを見出しながらできるような状態でないと、長い目で見ると意識がかい離していってしまいます。 ■仕事のためにも、プライベートはしっかり切り替えて、体を動かす ――最後に、時間の使い方のことも含め、起業後、プライベートの過ごし方に変化はありましたか? 毛見 休みは本当にごくわずかですが、とても大事にしています。まず体を動かしていますね。これは持論ですが(笑)お酒を飲んだりして体内に何かを摂取するよりも、何も増やさず体内の血液をぐるぐる回したほうが新たな発想が湧いてきたり、考えがすっきり整理されて次の仕事に向けてマインドセットができるような気がします。仕事を終えて新幹線で温泉地にいって翌朝また新幹線で銀座に出社したりもしますね。切り替えはうまいほうかもしれません。 それから、仕事をしている以上、いろいろと用事は入ってくるものですが、自分としては「事業を成長させて貢献していく」ということにひもづくことを最優先してやっています。先ほどの「時間は有限」という話の通り、限られた時間の中で、自分にできることを選び、積極的にやっていくことが大事だと思っています。 ――どなたかに悩みを相談されることはありますか? 毛見 はい。最終的な決定はもちろん私自身で行いますが、幸いにも周囲に各分野で相談する方がいらっしゃるので、気軽に電話やメールで聞いたり、お願いをしたりしています。コンサルティングの会社員時代、「悩んでいる時間に意味はない」と尊敬する上司に言われ衝撃を受けた経験があります。それ以来何が課題かを考え、それを克服するための行動を素早くする!という考えに変わりました。そういう習慣は、より早く仕事を前に進ませ、結果より早く願いがかなってくるのだと思います。 ――今日はありがとうございました。 ■まとめ:経営者としてすべき仕事を常に考え続けること 毛見さんのおっしゃっている中で、とても印象的なのが時間に対する考え方です。経営者となり、一人で進めているうちはどうしても「自分ですべてやってしまう方が早い」と考えがちです。もちろん、最初はすべて自分で進めて様々な知識や経験を習得することは大切。でも、一人ですることには、時間的にも空間的にも、限界が出てきます。 いろいろな人の知見を借りて、事業を前に進める段階に入ったら、何人もの他人の貴重な時間を借りることになります。そのためには、毛見さんのようにお互いの時間を尊重する姿勢を忘れず、自分とメンバー双方の強みを見極め、最大の成果を出せるように、常に考え続けることが求められます。 毛見さん率いるkay meの躍進を心から期待しています。 株式会社maojian works株式会社・代表取締役社長 毛見純子さん 大阪市生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、ベネッセコーポレーションにて営業職、プライスウォーターハウスクーパースで組織人事コンサルティング、ボストンコンサルティンググループにて経営戦略コンサルティングに従事。2007年12月にmaojian works株式会社を立ち上げ、コンサルティング事業を提供、2011年3月に日本製ジャージードレスとスーツのブランドkay meを立ち上げる。 ウェブサイト:http://www.kayme.jp/ 小紫恵美子 中小企業診断士 OfficeCOM代表 《参考記事》 ■銀座にお店を開いたコンサル出身の女性社長がオススメする”ひらり戦法”(小紫恵美子 中小企業診断士) http://sharescafe.net/41328157-20141013.html ■「ニッポンのお母さん」はレベル高すぎ?OfficeCOM(小紫恵美子)ブログ http://officecom-ek.com/?p=206 ■女性が経営者にむいている理由 小紫恵美子 http://sharescafe.net/38119326-20140407.html ■仕事セーブ要因のある女性こそ、経営者という選択肢も検討を (小紫恵美子 中小企業診断士) http://sharescafe.net/39955025-20140721.html ■結局「女性活用」って何すればいいの? 小紫恵美子 http://sharescafe.net/38770445-20140511.html ![]() シェアーズカフェ・オンラインからのお知らせ ■シェアーズカフェ・オンラインは2014年から国内最大のポータルサイト・Yahoo!ニュースに掲載記事を配信しています ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家の書き手を募集しています。 ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家向けに執筆指導を行っています。 ■シェアーズカフェ・オンラインを運営するシェアーズカフェは住宅・保険・投資・家計管理・年金など、個人向けの相談・レッスンを提供しています。編集長で「保険を売らないFP」の中嶋が対応します。 |