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先日、女優の遠野なぎこさんが元夫の男性と契約書の作成を準備している…というニュースがあった。ニュースを見ているとどうも交際している二人がお互いの関係を契約書という形にまとめる、というのが主な内容のようだ。

興味深いのはそのなかで「任意後見契約」という言葉が出てきたことだ。

任意後見契約とは、認知症などが原因で、日常生活で必要な契約を判断する力が衰えてしまった場合に備えて、あらかじめ、任せたいことをサポートしてくれる人と決めておく契約のことだ。

主に高齢者を支援する際に使われる「任意後見契約」である。交際している二人の約束事をするときに任意後見契約をしようとするとは珍しい。詳細はこれから作成されるようだが、遠野なぎこさんが任意後見契約をするとどうなるだろうか。

■任意後見契約ってなに?
任意後見契約とは、具体的にどのようなものか。

例えば、認知症などになってしまったとしても、余生はできるだけ自宅で生活をしたいという希望があったとする。そのようなときは、その希望をかなえることができるように必要なことをサポートしてくれる人との間で契約をしておくのだ。

自宅での生活を維持していくためには様々な介護サービスの契約をしなくてはならない…ということであれば、それに必要な権限をサポートしてくれる人に与えておく。また身体の状態に合わせて住みやすくするため自宅を改築する必要がある…ということであれば、それに必要な権限も盛り込んでおく、という具合だ。

このように事前に契約をしておいて、実際にサポートが必要な状況になったら契約が発効する。任意後見人(サポート役)として本人のための支援がスタートするのだ。

任意後見契約というのは、契約によって自分のことは自分で決めておくという、自己決定をするためのシステムになっている。
 
■任意後見契約は夫婦で行うもの?
結婚するという意思があって一緒に生活をしてはいるが、籍を入れていない状態を内縁関係という。遠野なぎこさんの場合は、「結婚(籍を入れる)」という形を取らずに、「契約」というもので内縁関係の取り決めをしようというのが主な狙いのようだ。そのなかで仮に脳梗塞などの病気や不慮の事故などが原因で判断する力が落ちてしまった場合にも備えておこうということで、任意後見契約が出たのだろう。

結婚関係があれば法的に配偶者としてできることも、内縁関係ではそうはいかない場面も出てくる。これから作ろうとする契約では、そのような場合に備えて法的に権限を与えておくという意図もあるのかもしれない。結婚関係にあるパートナーのように最後までお互いのことを考えていこうという決意を示すという意図もあるのだろう。

任意後見の契約をするときは何も夫婦間で行う必要はない。むしろ夫婦間でお互いをサポート役として契約をするケースはまれだ。先に相手の判断する力が落ちてしまった場合、任意後見契約に従ってサポート役となる。ではその後、脳梗塞などが原因で自分にサポートが必要となった場合はどうなるだろうか。すでにサポートする人がいなくなっているのだ。

任意後見契約とは、自分の子どもや友人など、信頼関係にある人とであれば誰とでもできる契約だ。将来のことを頼れる子供や身内の者がいない…という場合には、弁護士や司法書士などの専門家と契約をしておくというケースもある。

■遠野なぎこさんが契約によって行うべきこと
任意後見契約は誰とでもできるとは書いたが、大切なのは、信頼できる人と契約をすることである。友人として親しくしていて信頼をしているからといって、現実的にサポート役としてやるべきことをお願いできるかどうかとは、話は別だ。

遠野なぎこさんのケースではどうか。内縁関係にある夫の方が倒れてしまった…。遠野なぎこさんが契約によってサポート役となった場合、遠野さんは何をしなければならないだろうか。

遠野なぎこさんの内縁関係にある男性は飲食店を経営しているとのことだ。その方が経営している飲食店の経営をどうするか。経営を維持できなければ清算をしなければならないかもしれない。そのようなときは収入をどのように確保するか。場合によっては年金の支給を受けることができるかどうかを検討しなければならないだろう。生活は何処でするのか。そのような現実的な問題に対処する必要がある。

サポート役となることは、一人ですべて抱え込む…というわけではない。行政や福祉のサービス、ときには法律専門職の力を借りる必要もあるだろう。サポート役となると、周囲の力をうまく使いつつ、本人の意思の実現を図らねばならないのだ。

またサポート役となると他人の財産を預かることがある。もちろん、預かった財産を自分のために利用する…ということはできない。実はこの点でトラブルとなることがとても多い。しっかりとした金銭管理の能力も必要となるわけだが、案外とこれが難しい。

■本人の希望をどのようの実現するか
任意後見契約というのは自分のことは自分で決めるという自己決定をするためのシステムであると書いた。サポート役となったものは、契約で決められた権限をもとに本人の意思をいかに実現していくのかという視点に立たねばならない。そのためには、日頃からの本人との信頼関係が大切となる。時間をかけてお互いを知るところからはじめる必要があるだろう。

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及川修平 司法書士

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