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起業というと、ひとまず会社を作るというイメージがあろうかと思います。

「会社の作り方」的な本は書店にもたくさん並んでおり、起業といえば「株式会社を作って代表取締役になるんだ」、と思ってしまう方も多いかもしれません。

しかしながら、独立してビジネスを行うに際して会社を作らなければならない必然性はありません。いわゆる個人事業主としてビジネスを開始してもいいわけです。

ではどちらがいいのでしょうか?法務面を中心に説明しましょう。

■個人事業主ってどうやって始めるの?

さて、丸尾太郎(仮名)さんが独立したいと当事務所にやってまいりました。

丸尾さん「先生、ひとまず個人事業主でやってみようと思うのですが、どういう手続が必要ですか」

私「もっぱら法務的な観点で言えば何の手続きもいりません。というのも、人(法律用語で「自然人」といいます)は当然に取引主体になることができるからです。」「ただ、不動産業や建設業のように免許がいるビジネスについては当然免許が必要です。」

※税務的には開業届を提出する必要がありますが、ここでは触れません。

丸尾さん「そうなんですね。ちょっと拍子抜けです。」

■会社ってどうやって始めるの?

丸尾さん「じゃあ、会社にするならどうですか?」

私「会社にする場合は、法律にのっとった手続きで会社を設立する必要があります。一定の手間とそれなりのお金が必要になりますね。」

丸尾さん「面倒ですね。。。」

私「一度会社として認められると人(自然人)と同様に取引主体になることができるので、公証人や登記官にチェックをしてもらう必要があるわけです。実体のない会社がウヨウヨしていると安心して取引できないですよね。」

丸尾さん「なるほど」

■会社を作るメリットって?


丸尾さん「手間とか費用の面で見れば個人事業主の方が楽ですよね?なんでみんな会社を作るんですか?」

私「会社の形態によって違いはあるのですが、代表的な会社形態である株式会社を念頭に説明してみましょう」「株式会社を作るメリットとして、法務面では以下のような点があげられます。」

1.会社と社長個人の責任を分けることができる:

あくまでも取引主体は会社になります。取引の相手から責任を追及されたり、会社の借金の支払を迫られるのは会社であって社長個人ではありません。ただし、会社の借金について社長が個人で保証した場合を除きます。

2.株式という返済義務のない形で資金調達することができる:

投資家に株式を引き受けてもらうことにより資金調達することができます。株式は借金と異なり返済義務がありません。リスクはあるけど、大きなリターンが望めるビジネスを検討している場合に資金調達しやすくなります。これに対して、個人事業主では株式のような資金調達は困難です。

3.複数の経営陣での経営が可能:

株式会社には取締役という経営陣を設置します。取締役の人数は自由であり、会社の規模が大きくなれば複数の取締役を設置して英知を結集することができます。また、監査役という経営をチェックする機関を設置することもできます。個人事業主の場合にも複数でビジネスを行うことはできますが、組織が制度化されている株式会社の方が大規模な組織運営に向いているといえるでしょう。

4.相続・事業承継しやすい:

個人事業主の場合には、事業で使っている資産などを個別に相続人・承継者に譲っていく必要があります。事業用の資産が多岐にわたる場合、当然面倒なわけです。一方で株式会社であれば、株式の譲渡という形で相続人・承継者に譲ることができ、法的には楽です。
私「その他、法的な問題ではありませんが、一般的な取引先は個人事業主よりも株式会社を信用します。その意味で株式会社の方がビジネスがやりやすいのは事実です。」

丸尾さん「なるほどですね。手間や費用はかかりますが、しっかり腰を据えてビジネスをやっていく以上、会社を設立した方がいい気がしてきました。」

私「もちろんケースバイケースの面もありますので、会社設立が絶対ハッピーということはありませんが、会社設立は選択肢として検討するべきでしょうね。」

丸尾さん「次に会社設立の話を教えて下さい。」

私「次のお客さんが来たので、また次回にしましょう。」

■次回予告

次回は株式会社、そしてそれ以外の会社形態について説明していきます。お楽しみに。

《参考記事》
■2014年宅建試験を振り返る 竹井 弘二 Seeplink
http://seep-jp.com/seeplink/blog/2014/10/21/post-315/
■宅建の次はこれを取ろう1 「管理業務主任者」 竹井 弘二 Seeplink
http://seep-jp.com/seeplink/blog/2014/10/23/post-328/
■有給消化はきっちり」が、独立成功の第一歩だ。 榊 裕葵
http://sharescafe.net/41768044-20141107.html
■社会保険労務士は本当に「経営者の味方」「労働者の敵」という仕事なのか? 榊 裕葵
http://sharescafe.net/35377589-20131204.html
■ワタミが「社員は家族」というならば、後藤真希さんのように振舞えるのか? 榊 裕葵
http://sharescafe.net/40391924-20140818.html

株式会社Seep代表取締役
行政書士・CFP 竹井 弘二

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