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日本テレビにアナウンサーとして内定していた笹崎里菜さんが内定を取り消され、不当な内定取り消しであるとして、裁判沙汰になっているというニュースが大きく報道されている。

■笹崎さんの内定取り消しは不当な可能性が高い
笹崎さんが内定を取り消された理由は、報道されているところによると、母親の知り合いが経営する銀座の小さなクラブで、短期間アルバイトをしていたことが発覚したのが原因となっているようだ。

インターネット上では、笹崎さんを擁護し、「なにもそれだけのことで内定を取り消さなくてもよいのでは」という声が強い。

この点、法的に考えると、確かに、過去の裁判例にはキャバレーで働いていたことを理由として解雇を有効としたものもある(小川建設事件・東京地裁昭 57.11.1 9決定)。だが、この事件においても、キャバレーで働いていたから直ちに解雇を認めたというわけではなく、約11か月もの間、深夜にわたって副業を行っていため、本業の労務の提供に悪影響を及ぼしていた可能性が高いということが、裁判所が解雇は有効とした決定的な理由であった。

笹崎さんの場合に当てはまると、銀座のクラブで働いていたというのが、①入社前に、②短期間、③母親の知人の店、でということであるから、テレビ局のアナウンサーという職業の特殊性を踏まえたとしても、内定取り消しはいくらなんでも厳しすぎる処分であろう。

私は、裁判は笹崎さん側の勝利に終わる可能性が高いのではないかと予想している。

■だが、裁判で勝った後がむしろ大変だ
だが、裁判で勝訴したから「めでたしめでたし」と、全てが終わるわけではない。むしろ、裁判の後のほうが大変だ。

裁判で勝訴して内定取り消しが無効になると、笹崎さんは当然、日本テレビにアナウンサーとして入社することができるわけだが、入社後に彼女自身が平常心で勤務できるかというところが問題になってくるであろう。

周囲の同僚は「裁判をやって入ってきた人」という色眼鏡で見るであろうし、上司も「腫れ物に触る」ように扱うかもしれない。また、アナウンサーとしてお茶の間にデビューしても、視聴者は「ああ、あの銀座のクラブの子ね」という先入観を持って評価するであろう。彼女は、会社で仕事をしていくにあたり、それらのプレッシャーをはねのけていかなければならないのだ。

■HKTの指原莉乃さんの逆転力に学ぼう
この点、笹崎さんは、HKT48の指原莉乃さんに学ぶべきではないかと私は思う。

私は最近、指原さんの著書「逆転力~ピンチを待て~」を読んだのだが、その本には、指原さんが恋愛スキャンダルを週刊誌に報道され、脱退は免れたがHKTに移籍してやり直すこととなり、そこからいかにして総選挙1位まで這い上がっていったかということが、飾らない言葉で書きつづられていた。


そのポイントとして、指原さんは、恋愛禁止条例を破ったことについて猛省したが、それを引きずらないことを心に決めたと語っていた。その恋愛スキャンダルのピンチを、チャンスに変えようとさえ思ったそうである。

例えば、HKT移籍が決まった直後にバラエティ番組に出演したとき、共演者から恋愛スキャンダルや移籍のことを突っ込まれたが、指原さんはそこでシュンとするのではなく、「ちょっと待ってくださいよ~!」というトーンで笑い飛ばし、「好みのタイプは口が堅い人です」と自分からネタを提供したりもしていた。

自分がシュンとなってしまったら、周りが気を遣って腫れ物に触るよう扱われるようになってしまい、その結果として自分の居場所がなくなったり、精神的につらくなったりしてしまうと彼女は考えたのだ。だからこそ、ピンチを明るく笑いに変えたのだ。

笹崎さんも、「銀座のクラブで働いていたアナウンサー」と先入観で見られてしまうのは不可避であろうから、それを言われてシュンとするのではなく、逆に、「トーク力は銀座仕込みなんですよ。」とか、自分の持ちネタにするくらいの勢いで頑張ってみてはいかがだろうか。

もしかしたら「面白そうな子だな」とディレクターに目をつけられて、バラエティ番組などにも抜擢されるかもしれない。これこそ、ピンチをチャンスに変える力だ。

■指原さんはポジティブ志向を大切にしている
また、指原さんは「自分に振られたキャラを受け入れること」や「アンチも味方につけてしまうこと」も大切だと書いていた。

前者は、「私はそんなキャラではありません」と拒否しても回りから浮いてしまうだけなので、「私にこんなキャラをつけてくれてありがとう」と感謝してそのキャラに乗っかるべきだということである。後者は、目立てばファンもアンチも両方増えるのは当然と割り切り、アンチがいるからこそファンも自分を応援してくれるのだと考えるということである。

笹崎さんがアナウンサーとしてデビューしたら、「銀座のクラブ」というキャラは当面ついて回るだろうし、「負けずに頑張れ」と応援する人も、「お前なんかテレビに出るな」という人も両方出てくるであろう。そんなとき、アンチの意見をインターネットなどで見て、精神的に潰されないような気持ちの強さを持ってほしいものである。

アンチだって自分に興味を持ってくれているからこそ、ネガティブではあるが意見を述べているのである。この点、指原さんは、自分が意にも介さないような存在だったら、そもそもスルーして終わりであるし、それはメディア人にとっては、アンチ以下の扱いなのだと理解していた。だからこそ、アンチも、ある種のファンだと考えていると指原さんは著書に書いていた。

■総括
笹崎さんも、このような指原さん的なポジティブ発想、いわば「指原力」を身につけることができれば、きっと同僚や上司ともうまくいき、お茶の間からも受け入れられ、アナウンサーとして生き残っていけるのではないだろうかと私は思う。

そして、さらに言えば、このようなピンチの話は、何も、指原さんや笹崎さんのようなメディア業界で働く人に限ったことではない。私たちのような普通の人も、仕事や日常生活の中で、進退きわまるようなピンチに遭遇することは十分ありえる。それをどう解決するかで、人生が大きく変わるかもしれない。

私たちもまた、「指原力」に学ぶところは大いにあるのではないだろうか。

《参考記事》
■緊迫感漂う天丼屋。パワハラ店長では決して良い店は作れない理由 榊 裕葵
http://sharescafe.net/41024581-20140926.html
■女子高生のバイトの時給は、なぜパート主婦より安いのか? 榊 裕葵
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■サラリーマンも長期稼動するための秘訣を山本昌投手に学ぼう 榊 裕葵
http://sharescafe.net/40740710-20140909.html
■“myamya”の眼鏡が1本5万円でも次々に売れる理由 榊 裕葵
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あおいヒューマンリソースコンサルティング代表
特定社会保険労務士・CFP 榊 裕葵

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