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つい先日ですが、羽衣チョークで知られる羽衣文具が2015年の3月をもって廃業することを発表しました。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141119-00000040-it_nlab-sci

■教育のIT化の波の中での羽衣文具の廃業
廃業の直接的な原因は、教育環境の変化だと推察されるわけですが、その環境の変化スピードに拍車をかけたのが、文部科学省が発表した「教育のIT化に向けた環境整備4か年計画」の一つ「2017年までに政府が全学校の黒板を電子黒板に移行設置」目標だったかもしれません。

http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/26/08/__icsFiles/afieldfile/2014/09/01/1351684_01_1.pdf

黒板のある教室で育った筆者からするとチョークがなくなるということは寂しい限りですが、時代や市場のニーズにマッチしないのであれば、羽衣文具のように退場させられる事態は避けられないことでしょう。「世界に取り残されないような人材育成」という錦の御旗で、退場者の増加は続く傾向にあるとは思いますが、教育に対する無限の可能性を持つIT進化は、これからの人材を育てるうえでは大きく期待できるツールとなるのでしょう。

■だが、ITに偏った教育には副作用がある
その一方で、教育のIT化について個人的に懸念するところがあったりします。それは、IT化イコール学習効果向上という等式が正しいと世の中が考える傾向にあることです。特に情報調査という側面からは、ITに偏った教育を推進してしまうと思わぬ副作用があることも考えるべきでしょう。そこで今日はその副作用とその対策について紹介していきたいと思います。

■【副作用対策①】「福山次長化」せずに、現場訪問する
副作用の一つを”福山次長化”と名付けました。

TBSドラマ「半沢直樹」の第8話の1シーン。半沢を伊勢島ホテルの担当者から引きずりおろす命を下されたデータ至上主義福山次長でしたが、最後に半沢が現場を訪問もせずデータのみで物事を判断する福山に対し「机上の空論ではなく、タブレット上の空論だ!」と喝破するシーンを覚えていますか?

「データだけで、分かる訳ないだろう」とテレビを見ながら思った方もいると思いますが、実は仕事場や学校に戻るといつの間にか自分が”福山次長”になっているケースは数多くみられるのです。

この副作用のおかげで、ネット掲載データだけに依存して本当に知りたい本質部分を見失う可能性があります。当人が直接見聞きしたものではない他人が作った情報を、真実と信じこんでしまうという現状もIT教育には含まれているということを意識しなければなりません。

普段私は、資格学校で学生や若い人たちに面接対策相談をしているのですが、生徒たちの調査内容のソースがネットからということが多いことに気づきます。そこで私は、自分の足を使った情報収集がいかに重要か生徒に理解してもらうため、「実物を知らないでデータだけで受ける面接は、ボロが出やすいから実物を見ておいで」と促しているのです。

■【副作用対策②】「質問ができない」から「質問ができる」へ
この世の中は情報戦であると言われますが、重大な情報がネットで掲載されているとは考えにくいでしょう。現場に行ったり、もしくは直接対話することで重要情報が引き出せるものと私は思うのです。その理由は、他の人が得られない貴重な情報というのは、自分の足を使って稼ぎ、自分の時間を犠牲にしなければ得られるものではないからです。先ほどのLECの話に戻って、面接という自分の人生を左右するものであれば、尚更自分の足で情報を掴むことが大事ではないでしょうか。(ちなみに、IT関連の社長だって、大事な情報は直接会って情報交換をしているのです。)

一方で、ITを積極的に取り入れた学習をする子供たちは、その方法を知らずに情報はネットから得るものと思い込んでしまうかもしれません。そのため、いざ人を通じて重要な情報を得たいと思っても的確な質問ができない。それが第2の副作用ではないかと考えられるのです。ちなみに、この現象は日本だけでなく、アメリカの子供たちにも同じような傾向があるため、日本人固有の「質問できない」体質というわけではないようです。

IT教育を通じた情報収集は「誰でもいつでもどこでも簡単に情報取得」というメリットがありますが、逆に考えると世界がフラット化してしまったため差別化ができない情報収集技術になったとも言えないでしょうか。差別化できないモノ(コモディティ化)は一般的に価値が下がることになります。同じ様に考えれば、差別化できない技術は自身の価値(賃金)にも影響が及ぶのです。

だからこそ、質問によって相手から情報を引き出せる力を養うことで、差別化された自分を作っていく必要があると思うのです。そしてそれがこれからの世代の能力の差別化になるのかもしれません。

■総括
ITは更に進歩を遂げて我々の教育向上に役立ってほしいのですが、IT教育が全て正しいのだと全幅の信頼をおくのではなく、ITを利用してどう差別化をはかろうか?というくらいのスタンスで利用する意識でいただきたいと思います。

《参考記事》
■IT学習をうまく活用するための心構え 齋藤浩史
http://seep-jp.com/seeplink/blog/2014/11/16/post-425/
■2015年宅建取引士になるために 竹井 弘二 
http://seep-jp.com/seeplink/blog/2014/12/03/post-664/
■個人事業 vs 法人設立 独立するとき有利なのはどっち!? 竹井 弘二
http://sharescafe.net/41881712-20141114.html
■個人事業を法人化するとき「これだけは見落としてはならない!」6つの留意点 栗田 倫也
http://sharescafe.net/41965267-20141119.html
■有給消化はきっちり」が、独立成功の第一歩だ。 榊 裕葵
http://sharescafe.net/41768044-20141107.html

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