![]() 新年早々、つい苛立ちを感じてしまったことがあった。 ■エレベーターの右側を塞ぐ人は職場でも苦労する? 某駅にて、ぎりぎり乗り換えに間に合ったつもりでエスカレーターの右側を上ろうとしたのだが、途中でカップルが2列になって談笑していて、右側を塞いでいた。後続は渋滞し、私も電車に間に合わなかった。 ギリギリで行動してしまった私がそもそも悪いのだし、エスカレーターの右側(関西では左側)が「追い越し車線」であるという法律上のルールがある訳ではないので、個人的には、そのカップルを責めるつもりは全くない。 だが、社会保険労務士として様々な労働の現場を見てきた経験上、エスカレーターの右側で立ち止まる人は、もしかすると、職場生活において損をしている可能性が高いのではないかと私は懸念している。 ややステレオタイプな論旨になることをお許しいただきたいが、エスカレーターの右側で立ち止まる人には大きく分けて2タイプあると私は思っている。それぞれのタイプについて、以下説明を加えたい。 ■周囲の状況に気が回らないタイプ 第1は「周囲の状況に気が回らない」というタイプだ。 駅の構内には「人の流れ」というものがある。都心のターミナル駅ではとくに通勤通学時のラッシュはすさまじいものがあるが、それでもパニックにならないのは、多くの人が「人の流れ」に合わせて空気を読んで行動しているからである。それで方向ごとに人の流れが自然とできるし、エスカレーターの右側を空けるというのも、急いでいる人に配慮した「人の流れ」の一種である。 だが、「周囲の状況に気が回らない」タイプの人は、決して悪気はないのであろうが、そもそも周りを見る気がなかったり、自分の世界に入り込んでいたり、友達との会話に夢中になったりして、無意識にエスカレーターの右側で立ち止まり、自分が「人の流れ」を壊していることに気がつかないのである。 冒頭のカップルも、まさにこのタイプであろう。 ■職場では空気が読めなければ苦労する この点、駅における「人の流れ」を「仕事の流れ」に置き換えたら、職場生活の話につながるのではないだろうか。 仕事においても「空気を読む」ことが重要な場合は少なくない。 例えば、上司に声をかけること1つとっても、空気を読める人は上司の様子を観察し、上司が一息ついたタイミングを見計らって声をかける。だが、空気を読めない人は、上司が作業に夢中になっていたり、考え込んでいたりするときでも構わず声をかけてしまい、「後にしてくれ!」と怒られたり、そうまではならないにせよ、不愉快な顔をされてしまったりするのだ。 また、会社には規定などで明文化されているわけではないが「暗黙のルール」が存在していることも少なくない。たとえば、○○専務と××常務は会食で隣同士にしてはいけないという人間関係に関することとか、課長に相談する前に△△先輩に意見を聞いておかねばならないとか、資料を作るときのフォントの種類や文字の大きさが決まっているとか、目に見えるもの、目に見えないものを含め、様々なルールが会社という場所には存在している。 このようなルールは、手取り足取り誰かが教えてくれるわけではなく、自分で周囲の上司や同僚の様子を観察して、身につけていかなければならない。 それができれば、その会社の一員としてスムーズに受け入れられるであろう。逆に、できなければ、「あいつは気がきかない」とか「自分勝手だ」という評価を受けて、結果的にその会社に居心地が悪くなってしまう。 本人が、「この会社は自分に合わないかも」と思って転職しても、次の職場でも空気を読むことができなければ同じことの繰り返しになって、なかなかひとつの会社で腰を落ち着けて仕事ができないのである。 ■正論が強すぎるタイプ 第2に考えられるのは、「正論が強すぎる」というタイプだ。 急いでいる人の中にはエスカレーターの右側を通りたい人もいるかもしれないということは認識しつつも、「右側を空けるということは、法律で定められているわけではないから、私が開ける義務はないと」いう考えに基づいて右側を譲らない人ということである。 「すみません通してください」と言われたことに対し、「何で通さなければいけないんだ」と反論したため、ホーム上で喧嘩が始まった現場を私は目撃したこともある。 確かに、左側に寄る義務はないのだが、右側を通りたい人も、ひょっとしたら「親父が倒れて危篤なので、一刻も早く故郷を目指している」とか、そんな事情を抱えているかもしれない。だから、左側に寄ることが可能であるならば、相手の気持ちも慮り、気持ちよく通してあげることはできないのかというのが私の意見である。 ■職場でも正論を強調しすぎるべきではない このような正論重視の考え方をそのまま職場生活にあてはめると、 「始業5分前にラジオ体操と朝礼があるが、早出手当がつかないので参加しない」 「昼休みは労働から解放されているので目の前の電話が鳴っても出ない」 「サービス残業は1分たりとも行いたくない」 「どんなに会社が忙しい時期でもマイペースで有給休暇を消化する」 など、確かにどれも正論である。 だが、このような行動を貫く人が会社で受け入れられるかと言えば、上司や同僚からは「あいつは自分勝手な奴だ」というレッテルを貼られてしまうことは120%間違いないであろう。 私は、社会保険労務士として、会社が慣習的に行っている「小さな違法」を正当化するつもりはないが、世の中が円滑に回るためには、ある程度の清濁はあわせ呑むことが「必要悪」であるとも思っている。 制限速度30キロの道を1キロたりとも速度違反をせずに走っている車がまずないのと同様、労働基準法を針の穴まで守りきることも現実的には不可能である。 正論は正論で胸の中にしまっておいて、会社全体のルールに合わせられることが大人の考え方ではないだろうか。 例えば、始業5分前のラジオ体操と朝礼の話であれば、今日の仕事に取り掛かるまえに体をほぐすのは自分の健康のためにも良いことだし、朝礼で上司や同僚と情報共有することができるのだから仕事がやりやすくなると、ポジティブに考えたいものである。 確かに、30分とか1時間の早出を求められたら、そのときはじめて、「さすがにそれはおかしい!」と反論すれば良い。 要は程度問題である。自動車の例でも、1キロや2キロのオーバーで切符を切られることはないが、20キロ30キロオーバーしたら、切符を切られるのは逆に当然である。 ■総括 最初に述べたよう、今回はステレオタイプ的な議論であったかもしれないが、私は、エスカレーターであれ、職場であれ、円滑な人間関係のためには、やはり、「空気を読むこと」と「正論は振りかざしすぎないこと」が大切であると思っている。 そうすれば、無駄な摩擦や喧嘩は起きないし、自分自身も気持ちのよい日常生活や職場生活を送ることができるのではないだろうか。 《参考記事》 ■“myamya”の眼鏡が1本5万円でも次々に売れる理由 榊 裕葵 http://sharescafe.net/41144431-20141003.html ■「クラウドママ」を普及させて、働く女性が子育てをしやすい国にしよう! 榊 裕葵 http://sharescafe.net/41752066-20141106.html ■銀座久兵衛式!?社員に黙々と仕事をさせないから繁盛するステーキ屋さん「然」の秘密 榊 裕葵 http://sharescafe.net/42065984-20141125.html ■日テレ内定取り消しの笹崎さんに必要なのは「指原力」だ 榊 裕葵 http://sharescafe.net/41885958-20141114.html ■ライフネット生命は「保険」を「貯蓄」という足かせから解放した。 榊 裕葵 http://sharescafe.net/41835101-20141111.html あおいヒューマンリソースコンサルティング代表 特定社会保険労務士・CFP 榊 裕葵 ![]() シェアーズカフェ・オンラインからのお知らせ ■シェアーズカフェ・オンラインは2014年から国内最大のポータルサイト・Yahoo!ニュースに掲載記事を配信しています ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家の書き手を募集しています。 ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家向けに執筆指導を行っています。 ■シェアーズカフェ・オンラインを運営するシェアーズカフェは住宅・保険・投資・家計管理・年金など、個人向けの相談・レッスンを提供しています。編集長で「保険を売らないFP」の中嶋が対応します。 |