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最近、ROEという言葉をよく新聞や経済誌でみるようになりました。株を買うなら高ROE企業がねらい目、というフレーズをよく聞かれるのではないでしょうか。ROEというと、株式公開している大企業の話でしょ、うちには関係ないのでは、と思われる中小企業の経営者の方も多いかもしれませんが、実は中小企業の経営者こそ、このROEという指標に注意を払うべきなのです。

■ROEって何?
ROEとは、Return on Equityの頭文字をとったもので、「自己資本利益率」のことです。会社の決算書のうち、損益計算書の「当期純利益」を貸借対照表の「株主資本の合計額」で割ったものになります。意味は、株主が拠出した資本(=株主資本)の額に対して、その企業がどれだけその会計期間で利益を上げたのか、ということを示します。言い換えれば、投資家にとっての利回りを示していることになります。

ROEには、株主資本を簿価ではかった指標であることや、借り入れによる財務レバレッジの影響を受けること、ROEを高めるために内部留保の蓄積や成長投資が控えられることなど、万能の指標ではありません。しかしながら、「株主が拠出した金額」(自己資本)に対して、会社がどれだけの利益を稼いだのか、ということを簡便的に比較できる指標であり、投資のひとつの判断基準として幅広く受け入れられています。投資家はほかの投資機会をあきらめてその企業の株式に投資するわけですから、株主にとって重要な数値であることもうなずけます。

■ROEの中小企業にとっての意味
経営者にとってROEが何を意味しているかを詳しく見るために、式を分解してみます。

当期純利益/自己資本=(当期純利益/売上高)×(売上高/総資産)×(総資産/自己資本)

この分解したあとの(   )3つの中の意味はそれぞれ以下のようになります。
・(当期純利益/売上高):当期純利益率
・(売上高/総資産):総資産回転率。経営者が、株主から委託された総資産を使ってどれだけの売上を上げたか
・(総資産/自己資本):財務レバレッジ。どれだけ負債を活用して事業規模を拡大したか
を示す指標です。(*自己資本、は、貸借対照表の「株主資産」という項目です)

すなわち、ROEの分解式を日本語で置き換えれば、

ROE=利益率×効率性×財務レバレッジ

となります。

利益率や効率性は、数字としては大きい方がよいに決まっています。ただし、財務レバレッジだけは要注意。負債を如何に活用して事業規模を拡大しているか、という指標ですので、この財務レバレッジが大きくなると、事業が上手くいかなかったときのリスクも大きくなるからです。

特に中小企業、小規模企業では、この自己資本の出し手が、経営者自身であることも多いため、ROEは、まさに経営者が自分の出したお金をどれだけうまく運用できているか、という指標になるわけです。ぜひ一度経営者のみなさんは、自社の決算書をご覧になり、ROEを三つの要素に分解して計算してみてはいかがでしょうか。同業他社と比較してみると、自社の強み・弱みが見えてくるかもしれません。

■まとめ
当然のことながら銀行の人はお金を貸す時、その企業の事業・収益環境はどうなっていて、確実に融資が返済されるかどうかを確認するために、様々な財務分析を行いますが、その中にはこのROEも含まれています。

銀行から成長投資の資金融資を受けたいとしましょう。その新規投資によって、ROE=利益率×効率性×財務レバレッジの3要素がどのように変動するか、是非計算してください。短期的にはどれかの要素が低下することもあると思います。それについて、自分はどう対策を打っていくつもりで、将来的にどうなるのか、自分の言葉で説明できるようにして下さい。きっと銀行とのコミュニケーションがよくなると思います。

また、銀行からの融資のためだけではなく、成長を目指していくことを自社社員や取引先などに伝えてビジネスを継続・拡大していくためにも、自社のビジョンや計画をこうした数字をもとにした言葉で語れることが経営者には求められます。

《参考記事》
■会計を知らずに経営をするべからず(小紫恵美子 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/42067634-20141124.html
■承継シリーズ 社長になる女性の最初の心得 (小紫恵美子 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/37029365-20140212.html
■「ニッポンのお母さん」はレベル高すぎ?OfficeCOM(小紫恵美子)ブログ
http://officecom-ek.com/?p=206
■「ママたちのプチ起業」論争が炎上中。その理由は? (小紫恵美子 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/41811124-20141109.html
■2015年は長時間労働崩壊元年に(小紫恵美子 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/42734491-20150104.html

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