4234894

2月5日、日本マクドナルドホールディングスが赤字転落を発表した。2014年12月期決算では11年ぶりの最終赤字になるという。そして決算時に発表した2015年1月の売上は前年同月比で38.6%の減少と、上場来最大の落ち込み幅を記録した。

東京証券取引所への決算報告で間違いを指摘され、決算会見の開始が30分も遅れた事について「前代未聞」とも報じられた(11年ぶり赤字転落… マック社長が“異物混入”謝罪 テレビ東京 2015/02/05) 問題発覚後、やっと社長が出てきた会見までトラブルに見舞われた格好だ。

売上の急落と赤字転落は、昨年報じられた使用期限切れの中国産鶏肉の問題と、異物混入の報道が相次いだ事が原因だ。

■事件は現場で起こってる、と思って近所のマックに行ってみた。
自分がマックを頻繁に利用していたのは高校生の時だ。すでに20年も経っており、最近では年に1回も利用していない。マクドナルドが想定する顧客像からは完全に外れてしまっているが、友人から「最近のマックは驚くほどガラガラ」だという。そこまで言われるかえって興味が出て、事務所近くのマクドナルドに行ってみた。

確かにお店はガラガラだったが、時間は午後10時頃、さらに初めて行ったので普段と比較のしようが無い。我ながら馬鹿な行動だったと呆れてしまったが、客数の減少とは関係なく、店舗内の状況は思った以上に酷かった。

まず、ソファーに落書きが多数あり、破れたまま放置されている。しかもその破れたソファーは布ガムテープで補強されている。目を疑うとはこの事か、と驚いた。そしてトイレに行って手を洗おうとすると水が出ない。自動センサーで水が出るタイプの洗面台だったが、10秒に1回くらいちょろっと水が出るので、手を洗うだけで随分時間がかかった。

水が出ない洗面台でしばらく手をかざしていると、常連客(?)らしき初老の男性から「兄ちゃん、それ壊れてるよ。お店ガラガラだから直す金が無いんだよきっと」と声をかけられた。はぁ……と苦笑いで返すしか無かった。

■二度目の訪問で二度と行かないと決意した理由。
お店が空いているのは自分のように原稿を書く人間にはありがたい。客数が少なく静かなのも良い。状況確認も兼ねて同じお店にもう一度行った所、今度は対応した若い店員にコーヒーをかき混ぜるマドラーをカウンターに直接置かれてしまった。

清掃はしているのだろうが、お金をやりとりするカウンターには雑菌もあるだろう。しかも真冬のこの時期に風邪やインフルエンザになれば仕事に影響が出てしまう。交換をしてもらおうと思ったが、声をかけるのも面倒なのでマドラーは使わずに捨てた。

出来上がったハンバーガーが奥から流れてきた時は、そういえばサンキューとかプリーズとか言ってたよなあ、日本語で言えば良いのにとか友達と下らない会話をしていたなあ……と昔を思い出したが、そういった掛け声も全くなかった。

アルバイトなら仕方ないか、と思っていたらその若い店員は年上の従業員に指示を出していたので、アルバイトリーダーか社員か、どちらかなのだろう。指示を出す側がこの水準では明らかに問題だ。

■マックのマニュアルはどこに行ったのか。
さて、これは何千とあるお店のうち、1店舗の話だ。これを鬼の首を取ったように責めるのは酷かもしれない。しかし、明らかに問題点だらけだ。少なくともマドラーをカウンターに置かれた時点で、自分は二度と行くのは辞めようと思った。見えない所で同じような事をされてしまえば口に雑菌を含んでしまう可能性があるからだ。小さいお子さんを持つ親が見ても同じ不安を感じるだろう。

設備面でも疑問が残る。小さい子どもや中高生が頻繁に利用するマックであれば、設備に落書きをされたり乱暴に座ってソファーが破れること、そしてそれに対応することも日常業務の一つだろう。これについては店員が気づいていない事はあり得ない。ガムテープで補強されていたからだ。応急処置ならまだしもそのガムテープも貼られてから随分時間が経過していることが明らかに見て取れた。色もソファーの革とは全く違うので非常に目立つ。

落書きは誰も汚れを落とそうとしなかったのか不思議でしょうがない。洗面台の水がちゃんと出ない点については論外だ。

設備の破損・汚れについてこれらの対応でマクドナルドにマニュアルは無いのだろうか。落書きを落とす洗剤くらいは常備していても良いのではないか。ソファーが破れた際の応急処置でも座面と同じ色のテープで一旦補強して、1週間以内には張替えや交換を行う、といったようなルールは無いのだろうか。

少なくとも、100円ショップでも売っているようなガムテープでソファーを補強する、といった対応は零細企業を運営する自分でも絶対にやらない。ソファーが破れて落書きのある客席を見ていると、間違ってスラム街に迷い込んでしまったような気分になった。店舗の一角には子供向けのジャングルジムが置いてあったが、これでは子連れの客が来るとは到底思えない

■異物混入より問題のある雑な店舗運営。
異物混入について擁護するつもりは全くないが、年間数十億食の商品を提供していれば「意図せざるミス」が発生することはあるだろう。しかし、これら店舗の状況は明らかに問題を認識しながら放置している。自分は実際にお店に行ってみて、異物混入よりよっぽど大きな衝撃を受けた。

このような状況に少なくとも社員や店長は気づいているだろうし、エリアマネージャーのような立場の人も気づいていないとは思えない。マックはフランチャイズ化を推し進めているが、同店舗が直営かフランチャイズかはよく分からない。しかし、どちらであってもこれは大問題だ。

もしかしたらエリアマネージャー的な人が修繕を指示しているのにお金を掛けたくないオーナーが拒否している、といった事情があるのかもしれないが、そういった問題は全て契約で解決すべきだ。一店舗でも問題があれば他店舗にまで影響があるのだから当然だろう。落書きや水のでない洗面台に至っては清掃・修理をさぼっているだけだ。

■マクドナルドの店舗体験。
決算会見でカサノバ社長は、鶏肉問題以前から価格・メニュー・快適な店舗体験と三つの点で顧客の期待に応えられなかったと説明している。

日本全国のどのお店に行っても一定水準以上のサービスを提供するのがフランチャイズ店の仕組みであり、メリットだ。そして客の側もよく分からない変なお店に入るくらいなら、マックで食事をすれば低価格でそれなりのサービスを受けることが出来る、つまり想定外の事態は起こらないだろう、というフランチャイズとしての信頼感を持っているはずだ。まさにこれが社長の説明した店舗体験ということになる。

しかし、一つのお店がこの水準にあるということは、他店舗も同じ水準で管理されていても全くおかしくないという事だ。このような状況はフランチャイズビジネスとして致命的と言っても過言では無いのではないか。

マクドナルドの低迷については、健康志向と合わなくなってきた、魅力的な商品がない、顧客の多様なニーズに全国一律の商品では対応出来ない、など様々な指摘があるが、自分が店舗を見た限りでそういう高尚な経営戦略が原因では全くないと思われる。

マックでの店舗体験がない、あるいは少ない小さな子どもが成長した際に、将来マックに行こうと思うのだろうか。小さいうちからファーストフードを体験させることは「刷り込み効果」があるという調査結果も報告されている。現在の低迷はそのまま将来の低迷につながりかねないのではないか。

以下の記事も参考にされたい。
■賃貸派の夫婦が6000万円の家を買うワケ (中嶋よしふみ SCOL編集長)
http://blog.livedoor.jp/sharescafe/archives/39200923.html
■年収2200万円でも、繰り上げ返済で破綻リスク? (中嶋よしふみ SCOL編集長)
http://blog.livedoor.jp/sharescafe/archives/38502550.html
■大学で簿記3級を教える事は正しい。 (中嶋よしふみ SCOL編集長)
http://sharescafe.net/41604444-20141029.html
■「安定した雇用」という幻想。~雇用のリスクは誰が負うべきか?~ (中嶋よしふみ SCOL編集長)
http://sharescafe.net/42556186-20141224.html
■大学で簿記3級を教える事は正しい。 (中嶋よしふみ SCOL編集長)
http://sharescafe.net/41604444-20141029.html

発生した問題への対応として、全店で集中的な清掃と機器メンテナンスを行う事や従業員のトレーニングを強化する事も公表されている。今更感は否めないが、幸いな事に日本マクドナルドの有利子負債はごくわずか、実質無借金経営で自己資本も豊富だ。立て直すだけの時間は十分ある。外食の巨人の動向は今後も注目したい。

中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー、シェアーズカフェ・オンライン編集長

この執筆者の記事一覧

このエントリーをはてなブックマークに追加


シェアーズカフェ・オンラインからのお知らせ
シェアーズカフェ・オンラインは2014年から国内最大のポータルサイト・Yahoo!ニュースに掲載記事を配信しています
シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家の書き手を募集しています。
シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家向けに執筆指導を行っています。
シェアーズカフェ・オンラインを運営するシェアーズカフェは住宅・保険・投資・家計管理・年金など、個人向けの相談・レッスンを提供しています。編集長で「保険を売らないFP」の中嶋が対応します。