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日頃、異業種交流会などに参加して数多くの方々と名刺交換をする…ということは全くしていないのだが、それでも、仕事上お付き合いをすることになった方には名刺を渡すし、名刺をいただく機会もある。仕事がら、弁護士や税理士などの資格業の方々と名刺交換をする機会も多い。

昨年、名刺交換をした資格業の方の数人から、突然、業務内容を解説したメルマガのような文書がメールで送られてくるようになった。私の名刺にはメールアドレスを記載しているのでそのアドレス宛に送ってきているのだ。

事前にメールでそのような文書を送ります…という確認は特になかった。その方々とは、名刺交換をした後に継続して仕事を一緒にするという関係ではない。

名刺交換をした相手の承諾を得ることなく営業のメールをする…という行為に私はとても違和感を持った。

■インターネットにまつわる法規制はまだまだこれから
インターネットをめぐる取引についてはまだまだしっかりとした法規制がなされていない状態にある。

昨年11月に成立したリベンジポルノ防止法などもインターネットをめぐる法規制の一つだ。「びったれ!!第4話」でもこのリベンジポルノの問題が取り上げられていた。社会問題化した事例については、法律が後追いで規制をする…ということになるのだが、今回ご紹介するメールをめぐる問題もその一つだ。

広告や宣伝のメールをめぐる法規制としては、少し前になるが平成20年に法律が改正されている。以前は、メールを送った相手がその後のメール受信を望まない場合、メール送信をしてはいけない…という法律であった。

これが法改正されて、原則として、相手の許可なく広告や宣伝のメールをしてはならない…とされたのだ。

■広告や宣伝のメールができる場合とは?
原則として、相手の許可がある場合にのみ、広告や宣伝のメールを送付することができる。これには例外もあって、同意が無くても広告・宣伝のメールをすることができる場合がある。主なものを紹介してみよう。

1.書面によってメールアドレスを通知している場合
相手から書面でメールアドレスを知らせてもらっている場合は、その相手の同意なく、広告・宣伝のメールをしてもよい。「書面」のなかには名刺も含まれる。名刺にメールアドレスを記載している場合、その名刺を渡した相手から広告や宣伝のメールが来ることは、法的には問題がない…ということになる。

2.取引関係にある場合
取引関係にある場合は、同意なく、広告・宣伝メールをしてもよい。実体としてこれまでも広く広告・宣伝のメールがなされていることが多く、法規制の対象から外されているのだ。

3.団体や営業を営んでいる個人がメールアドレスを公表している場合
これは、ホームページやブログなどでメールアドレスを公表している場合のことだ。法人などの団体や個人でも営業を営んでいる場合に限られる。ビジネス上、メールアドレスを公表しているものに対し、営業メールをするといったことはこれまでも広く行われているので、法規制の対象から外されている。

なお、通販の場合で、商品などの販売条件について広告するような場合は、別の法律で規制されているので注意が必要だ。

■名刺交換をした相手に広告・営業のメールをすることは違法ではないが…
ご紹介したとおり、名刺交換をした相手に広告・宣伝のメールをすることは法規制の対象とはならない。消費者庁の解説などをみると名刺を渡した者は広告や宣伝のメールが届くことについて一定の予測があるからだ、という趣旨の説明がなされている。

私が名刺にメールアドレスを載せているのは、電話やファックスに同じく業務上の連絡先という意味で記載しているもので、広告や宣伝を受け入れるという趣旨で載せているという感覚はないのだが…。

このメールの規制に関する法律に違反した場合は、違反内容によっては懲役や罰金刑などの刑事罰の対象となるものもある。名刺交換をした相手に広告・宣伝をしたことでこのような刑事罰の対象とするといったことは少し行き過ぎた規制なのかもしれない。そのように考えると法律で規制するような話ではないのだろう。

しかし、名刺にメールアドレスを記載するという行為を私のように業務上の連絡先という意味で考えている者にとっては、広告・営業のメールは不要なものなのだ。資格業の方から私宛に送られてきたいくつかのメールの内容も、各々の一般顧客向けの内容となっていて、私には直接無関係の内容となっている。そうなるとメールを受け取る私としてはまずメールを開かなくなる。

法規制をする…ということまで求めるわけではないが、これはビジネスマナーの問題なのではないかと考えている。相手が通常想定していないと思われるメールを送る際は、ひと言、断りを入れるなどの配慮があってもよいはすだ。

名刺交換をした相手を十把一絡げにして同一の内容のメールを送る…という行為は、メールを受け取った私なんぞは逆に不安に感じる。必要があれば私の顧客を紹介してほしい…という趣旨なのだろうが、「仕事相手の一人一人の事情を汲み取って、しっかり応対してくれるのだろうか」と不安になるのだ。

こうなるとメールで広告・宣伝をしようとした目的を達成できないばかりか、逆効果にさえなる。

法の規制がないからといって、何をやってもよいというわけではない。メールの送り先は感情を持った生身の人間なのだ。

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及川修平 司法書士

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