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■選択するサンプルが多すぎる
人間が適切に選択できるためのサンプル数はせいぜい7つ、ということを盲目の社会心理学者アイエンガ-教授は実験証明しています。ところで、ファンド(投資信託)の数は7つどころか数百、数千もあります。同教授は「選択肢が多いと、満足度や充足度、幸福度は低くなる」(『選択の科学』)と言っていますが、私たちはファンドを本当に適切に選ぶことができているのでしょうか。

■NISAの上位ファンドはこれでいいのか?
NISA(少額投資非課税制度)の2014年の開設総口座数は406万、投資額は1兆4186億円という発表がありました。この数字は、まだまだ伸びるでしょう。NISAでは株式のほか、株式投資信託やREIT(上場不動産投資信託)、ETF(上場投資信託)などの金融商品も選ぶことができます。口座を開設した一般投資者は大抵、その金融機関の情報や勧誘のままに金融商品を購入することになるでしょう。(以下、投資信託のことをファンドとよぶ。)

試しにある証券会社のサイトを見ると、2月第1週(2/2~2/6)のNISA口座のファンド買付ランキングでは、上位6位まですべて毎月分配型のファンド、10位中でも7本までが毎月分配型です。そのうち6本が海外REIT、そしてそれらにカバードコール取引によるオプション・プレミアムを絡ませたものが上位中3本、さらに通貨選択型による為替プレミアムを狙うものが1本。翌週(2/9~2/13)もほぼ同様のランキングです。他社のサイトでも同時期似たようなものでした。

これらを見て、投資経験の少ない投資者がファンドの分配金やREITの高配当利回り、プレミアムを目玉として勧められるままに購入したのではと推測されます。短・中期で高収益狙いならこういう選択もありかと思ったりしますが、特に上位にあるファンドは複雑すぎて、私などは図解なしではとても説明できる自信がありません。

NISAということに限らず、毎月分配型ファンドなどは再投資しない分運用効率が下がる、利益が出ていなくても元本を削って払い戻す(これを特別分配金という)デメリットがあります。しかも、特別分配金はもともと非課税であることからNISAのメリットを十分享受できません。そのことは当証券会社サイトにも表示してあるのですが、NISA口座にすれば毎月入ってくる分配金(これは普通分配金をさす)には税金がかからないという勧誘文句で購入をそそられたのかもしれません。

■プロの言うことにそのまま従わない
先述のアイエンガー教授は、投資商品などで選択に迷った時は、その分野の専門家に聞けと言っています。ただし、専門家のアドバイスにそのまま従えということではありません。プロに質問して納得するまでチェックするということです。プロ(販売窓口担当者、アナリスト、ファイナンシャル・プランナーなど)の立場にもいろいろあります。そのプロが金融機関に所属していたり、プロ自身が金融商品を販売していたりしていれば、当然収益に関わってくる商品を売りたがるのはありうることです。また商品を扱っていなくても、スポンサーから収入を得て商品評価をしているプロも同様、スポンサー寄りの評価をするのはやむを得ません。

そこで、自分で分からないこと、判断できないことはプロにしつこく聞いてみることです。ファンド選びは、自分だけですべて判断する必要はありません。まずはプロの「お勧めファンド」(できれば7つ以下)を挙げてもらってください。そして、次項の7項目について質問してみましょう。明快な説明がなかったらそのプロはアウトです。また、説明を聞いてもあなた自身が理解できなかったら、その「お勧めファンド」はこの時点で縁がなかったものです。


■ここをチェック!「ファンド選び」7箇条
まず注意すべきことは、リターン・ランキングなどは当てにしすぎないことです。数期にわたってトップにいるファンドもまれにありますが、多くは短中期的にランキングが入れ替わるものです。やみくもに上位ファンドばかり狙っているとその都度買い替えなければならず、コストもばかになりません。それよりもコストは他のファンドと比べて低いか、ファンドの仕組みはわかりやすいか、リスクは大きすぎないかなどを把握するほうが重要です。
以下で、プロに聞く項目を挙げます。これはファンド選びと同時にプロ選びでもあります。

1.「ファンドのコストは低いか 」
ファンドに掛かるコストはマイナスのリターンと言われます。特に信託報酬はリターンから確実に毎日差し引かれるものです。同一ファンド・同種ファンドとコストを比較してみましょう。いくらリターンが高くても、コストが高ければ意味がありません。あなたのプロは、低コストのファンドを選んでいますか?

2.「リスクはどこにどれだけあるか」
リスクはファンドの仕組み上どこに潜んでいるか、損失可能性としてのリスクはどれだけあるかを知ることが大事です。そして、このリスクはわかりやすく説明されているか。複雑な仕組みのファンドはリスクがどこにあるか知るのが難しくなっています。例えば単に「為替リスクがある」という説明だけでわからなければ、その商品を勧めるプロに突っ込んで聞いてみてください。

3.「リスクを取った分のリターンが見込めるか 」
ファンドは、リスクを取れば必ずそれだけのリターンが見込めるというものではありません。とはいえ、リスクが大きいわりに相応のリターンが見込めないものは避けるべきです。リターンについては、インデックスや同種カテゴリーの同種ファンドとどれだけプラスマイナスの乖離があるか。それを比較することで、リスクを取った後のリターンの評価を知ることができます。

4.「適正な分配がされているか」
分配金が適正に出されているか、あるいは適正に出されずにいるか。十分なリターンがないのに分配金が出ているのは、元本そのものが削られている可能性があるということです。特に毎月分配金型の投資信託は、前述した通り運用上不向きであると言えます。

5.「仕組みは単純で分かりやすいか」
ファンドの仕組みは近年だんだん複雑になってきています。オプションなどデリバティブを組み込んだものもあります。運用方針や投資先、お金の流れが簡単に分かるものでなければ、それだけコストやリスクが高くなります。プロに聞いてみて、仕組みが理解できなければその時点で購入はやめましょう。

6.「純資産総額は伸びているか 」
純資産総額の増減が激しくないか。純資産総額が設定後順調に伸びているか。一時の人気で多く買われても、設定からあまり伸びていないと早期償還など、ファンドの存続そのものに関わってきます。

7.「信託(運用)期間が短くないか 」
信託期間が3年とか5年と比較的短いものは、マーケットの影響をもろに受けた時に運用成果が上がらないまま償還されてしまうこともあり、中長期の運用に向いていません。

■自分にとっての「最良ファンド」を選ぶ
数千のファンドから何を選ぶか、実はプロでも難しいものです。それを一般の投資者が判断し、選択するのは至難のことでしょう。「そこまでして自分で選ぶ必要があるの? プロの勧めるままでいいじゃない」と思われるかもしれません。そういう人には、個人的にはインデックスファンドやETFがいいと私は思っています(前記のランキング10位にも3本入っている)。コストが低く仕組みもわかりやすくて、市場の指標に連動するよう設定されているからです。

細かい分析や評価などはプロに任せればいいのです。それをチェックして判断することが大事です。くれぐれも、最初からそのプロに「最良のものは?」などと聞いてはいけません。あくまで「お勧め」に惑わされず、最後はあなたにとって一番いいと思うファンドを自分で選ぶことです。それがあなたにとっての「最良ファンド」となります。

【参考記事】
■相続税対策に保険商品は要らない? 野口俊晴
http://www.tfics.jp/
■目先の損得にとらわれない これからの年金、早くもらう方法と多くもらう方法  野口俊晴
http://sharescafe.net/41566040-20141026.html
■雇用延長はあてにしない 定年前に現役より稼げるフリーの「契約請負人」で働こう  野口俊晴
http://sharescafe.net/42517207-20141221.html
■年俸制の契約社員でも未払残業代を堂々と取り戻せる法  野口俊晴
http://sharescafe.net/42292529-20141208.html
■年金が減る! これからは「もらい方」を選ぶ時代だ  野口俊晴 
http://sharescafe.net/43177516-20150202.html

野口俊晴 ファイナンシャル・プランナー  TFICS(ティーフィクス)代表 

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