![]() 以下は、朝日新聞DIGITALが2月14日に配信した『デリバティブで損失、南山学園が提訴 ドイツ銀などを』という記事の抜粋です。 同学園はドイツ証券の勧誘を受けて2005年10月~12年11月、ドイツ銀行と契約したが、08年のリーマン・ショックで79億7千万円の損失が発生。請求額には弁護士費用などを加えた。同学園は「公の教育を担う学校法人にリスクの高い商品を勧めた上、リスクの説明が不十分だった」と主張している。 同学園は05~12年、証券6社とのデリバティブ取引契約による資産運用で総額229億円の損失を出した。昨年9~10月にUBS証券と野村証券を相手取り計約88億4千万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴。別の1社とは和解が成立した。残る2社については同種の訴訟の可否を検討しているという。南山学園は、名前が出ている4社の他に3社と同様の係争があったと記事は伝えており、同学園の主張が正しければ、これらの7社すべてが同学園の投資の適合性に合わない商品について、適切な説明を行わずに勧誘したということになります。 まともな金融機関7社が7社とも法令違反するなんて、そんなことがあるのでしょうか? ■リスクの高い商品を勧めた?説明が不十分? 金融商品取引法40条は、金融機関に対し、顧客の知識、経験及び財産の状況、金融商品取引を締結する目的に照らし、顧客に適合しない勧誘を行ってはならないと規定しています。 これを適合性の原則と言い、普通の金融機関の普通の営業職であれば、自らリスクをとるようなことにはなりたくないので、投資勧奨前に必ず適合性の確認を行うでしょう。 南山学園の場合は、複数年にわたり複数の金融機関との間でデリバティブ取引を行ってきたわけなので、初期の一定期間はともかく、金融機関から見て知識や経験が足りないようには見えなかっただろうなと思います。 また、学内に経済や経営が専門の研究者が何人もいることからも、一般の人たちとは違ってリスク性商品も大丈夫だろうという判断があったのかもしれません。 いずれにしても、7社が7社とも同学園によるデリバティブ投資に適合性があると考えたというのは、間違いないところでしょう。 リスクの説明が不十分という点についても、やはり7社が7社とも誤った商品説明をしてしまうという状況は、正直考えにくいと思います。 また、学校教職員の金融リテラシーがじつはあまり高くないらしいという話はたびたび聞くのですが、博士後期課程まで備える経済学部と経営学部を有する名門大学が、デリバティブで損失を出しただけでなく、自らを「知識や経験が十分でない」と本当に本気で考えているのであれば、それはそれでちょっと問題があるのではないかという気がします。 大学で「デリバティブにはリスクがつきもの」ということを学ぶべきなのは、じつは学生だけじゃなかった、ということなのでしょうか。 是非、以下の記事も参考にしてください。 ■借金返済のために風俗店で働く女子学生の問題が、本当は奨学金のせいではない明らかな理由。 (本田康博 証券アナリスト) http://sharescafe.net/42555365-20141225.html ■話題沸騰「正社員制度をなくしたらどうなるか問題」を、ファイナンス論的に考えてみた。 (本田康博 証券アナリスト) http://sharescafe.net/42781228-20150108.html ■ちきりんvsイケダハヤト「通勤手当廃止」論争で語られなかった「住まいの問題」緩和策。 (本田康博 証券アナリスト) http://sharescafe.net/42894098-20150115.html ■一年で3回転職したアラフォー女子、年収倍増は幸運だけが理由じゃなかった。 (本田康博 証券アナリスト) http://sharescafe.net/42650114-20141230.html ■海外馬券の販売開始か?日本での馬券売上のインパクトとマネーロンダリングの可能性。 (本田康博 証券アナリスト) http://sharescafe.net/42936449-20150119.html ■まとめ ・デリバティブ取引での損失に関連し、名門大学が金融機関を訴えています。 ・適合性原則に則った手続きをとったかという点と、十分にリスクの説明をしたかという点が争点です。 ・金融機関7社が7社とも法令違反するという状況は、なかなか想像しにくいものです。 ・当然ですが、デリバティブにはリスクがつきものです。 本田康博 証券アナリスト・馬主・個人投資家 ![]() シェアーズカフェ・オンラインからのお知らせ ■シェアーズカフェ・オンラインは2014年から国内最大のポータルサイト・Yahoo!ニュースに掲載記事を配信しています ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家の書き手を募集しています。 ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家向けに執筆指導を行っています。 ■シェアーズカフェ・オンラインを運営するシェアーズカフェは住宅・保険・投資・家計管理・年金など、個人向けの相談・レッスンを提供しています。編集長で「保険を売らないFP」の中嶋が対応します。 |