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森三中の大島美幸さんが撮影した自らの出産シーンをTV番組で放映することについて批判が集まったことが報道されました。主な批判の声は「出産まで芸にするのは気持ち悪い」「産みたくても子供を産めない多くの女性に対して何も配慮がない」といったものとのこと。

私は不妊治療をしたものの、子供が授からなかった人間です。友人、知人の子供の写真を見て、心穏やかでないことは確かにあります。しか「配慮がない」とまでは感じません。それで心が乱されるのであれば見なければよい話であって、相手を批判するのは筋違いな気がします。

一方で、こうしたやっかみのような意見がなぜ出てきたのかということにも興味をひかれました。背景には、他人への嫉妬を助長させてしまう現代の社会構造があるのではないでしょうか。

■「子なし」も「子あり」もお互いをやっかむ
「子あり」と「子なし」女性の関係について、2015年4月20日発売の週刊誌『AERA』で興味深い特集が組まれていました。『子どもがいないとダメですか?』と題されたこの特集、『いまの日本には、“子どもを持たない”ことが肩身の狭さにつながる、「子なしハラスメント」とも言える空気が広がっている』といった指摘をしています。

育児休暇制度が整備され、以前に比べると出産しても働き続けるのが主流となりつつある今日、子供を持たないで働いていると「なぜ?」「子供はかわいいよ」と一方的に子供を持つことが良いとする価値観を押し付けられることへの抵抗を訴える声も掲載されていました。

一方で、子供のいる人たちも、子供がいない人にやっかみを感じることもあるようです。筆者は、結婚しているものの子供を持たないまま、20年以上企業で働いていました。ある日、子育てのために仕事を辞めた学生時代の友人に、「恵まれているわね、好きなことができて」「子供がいると勝手はできないのよ」と言われたことがあります。かちんと来ると同時に、心底驚いたことを強烈に記憶しています。

毎晩、夜遅くまで仕事に追われ、電車で帰られたら御の字という生活。社内の調整にあけくれ、お客様の要望に右往左往する日々。そんな私の状況が「恵まれている」?こんなに苦労している私の仕事が「勝手」?私から見たら、子供を育てながらも趣味を楽しんでいる彼女こそ、「恵まれている」と思え、「別に勝手しているわけじゃないわよ。あなたのような生活が『恵まれている』というのでは?」とつっけんどんに返事をしてしまいました。学生時代に仲良くおしゃべりしていた友人でも、子供の有無でこんなに考え方に差ができてしまうのかと愕然としたものです。

いま振り返ると、彼女も子育てしている中で悩むことも多く、なかなか解消する場を見つけられずに悩んでいたのではないかと思います。家庭の外で仕事をしていることが彼女には「本来ならすべき家庭のことを放棄して自由にやっている」ように思えたのでしょう。

■「やっかみ」を助長しやすい現代社会
ここで見えるのは、お互いの状況を思いやることができない余裕のなさです。当時の私たちは、それぞれが仕事や育児に追い立てられせっぱつまった状況にあり、相手の状況を思いやる余裕を持てずにお互いの主張をぶつけ合っていました。

加えて、「こうあるべき」と社会的規範から生まれる理想と現実とのギャップが、自分自身を追いつめていました。結婚したら子供を持ち、妻として家事もきちんとこなさなくてはならないという理想に対し、私の場合、仕事に手を抜かない一方で家庭のことはおざなりになっていました。そのことにどこか後ろめたさを抱いており、友人の「勝手している」という言葉にその気持ちを指摘されたような気がして思わず反論してしまったのです。

最近では、SNSを通じて、友人の「リア充」ぶりをいやでも目にしてしまうことで、ますます自分の現実と理想像のギャップに悩むことが増えているように思えます。昔は通勤時間には考え事をしていたのに、今はスマートフォンや携帯をのぞいて、巷の情報を収集してしまう。そこで飛び込んできた友人の充実した生活ぶりに、ますます焦りを募らせる…。

そうした焦りは容易に他人へのやっかみにつながっていきます。子供のいる女性、いない女性に限った話ではありません。誰にでも起こりうることです。また別に非難されることでもありません。人間の心理として自然なことであると私は思います。

ネットは、そうしたやっかみの声も必要以上に増幅して伝えます。大島さんの番組への「子供のいない人への配慮がない」という意見も、ネットのない時代なら、自分の周囲の親しい人の間で言われていただけだったのに、ネットに乗った瞬間、拡声器にのったように拡がります。そしてそれがさらに批判を呼びます。

■やっかみの増幅サイクルから脱するには
やっかみと批判の増幅のサイクルから自分を守るには、ネット環境から距離を置き、情報の洪水から離れることが手っ取り早い方法です。できれば、ふだん生活している場所から物理的に離れることをお勧めします。日常から距離を置くと自分自身も客観視しやすくなるからです。

自分を見つめなおし、自分のやっかみがどこから生まれてくるか見つめることで、本当は何を求めているかに気づきます。自分がいま取り組むべきことが明らかになれば、他の人と比べて焦りを感じることも少なくなります。他者の状況を考える余裕も生まれてくるでしょう。

私たちはネットの恩恵を受けると同時に、マイナスの影響も多大に受けています。情報洪水や技術革新から無縁でいることは難しい今日、自分たちで身を守る術を見つけていきたいものです。

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