先日、物干し竿の移動販売で予想外の高額請求を受けてトラブルとなるケースが増加している、というニュースがありました。 物干し竿「3本13万円」 高額請求の相談、再び増加 このような悪質な物干し竿販売業者に対しては法的にどのような対処の仕方があるでしょうか。 ■物干し竿を不当に売りつけてくる取引についてはクーリングオフ クーリングオフというのは、理由が無くても契約をキャンセルすることができることです。 物干し竿に限りませんが、移動販売というのは、お客さんが自由に商品を選ぶことができるように陳列している場合であれば、法的には屋台や露店と同じものとして取り扱われます。この場合、クーリングオフはできません。 しかし、今回問題となっている物干し竿トラブルの例をみると、「2本で1000円」などと呼びかけておきながら、あれこれ理由をつけて高額の商品を買わせるけるケースです。なかには「竿の長さを調整するために切ってしまったので解約できない」などと言う業者もいますが、これでは購入する者が実際にかかる代金を確認したうえで商品を選択できていないことになります。 このようなケースは、通常の移動販売の範疇を超えているわけですから、やはりクーリングオフの適用対象と考えるべきです。 ■実は契約してから「8日」を超えてもクーリングオフできる場合がある クーリングオフができる期間は「8日間」とされていますが、これは正確には「法律で規定されている契約書面」を受け取ってから8日間です。裏を返すと、契約書面がないケースやずさんな契約書面となっているケースでは契約日から何日たってもクーリングオフができることになります。 契約をしてから8日を過ぎているとクーリングオフをあきらめてしまう方も多いと思いますが、諦めずにクーリングオフを検討する必要があります。 ■クーリングオフ以外にも、解約できる方法はある クーリングオフ以外にも契約を解消する方法はあります。「2本で1000円」などと呼びかけておいて、結局これと違う値段で購入させられた…というケースでは、あとで契約を取り消すことができる場合があります。 また話が違うので「もう帰ってください」とか「お引き取り下さい」などと言い、帰ってほしい旨を伝えているにも関わらず、そのまま居座って無理やり契約をさせられた…というのであれば、これも契約を取り消すことができます。 大切なことはクーリングオフを含め、一度契約をしてしまったとしてもあとからキャンセルする方法があると知っておくことです。 ■一度、契約をしてしまったとしても負い目を感じる必要はない 移動販売がクーリングオフに対象になるというのは、自宅を突然訪問してきて契約しようとする「訪問販売」と同視できる場合です。 訪問販売がなぜ規制されているかというと、契約が不意打ち的に行われるという取引スタイルだからです。 例えば家でくつろいでいて「物を購入するという意識にない状態」では、急に来られた販売員の説明に十分に対応することができませんし、商品の吟味をすることはできません。 このような不意打ち的な契約については、頭を冷やして冷静に判断する期間を設けるようにする、これがクーリングオフという制度なのです。 悪質商法に引っかからないように注意をしましょうと呼びかけるだけでは、このような不意打ち的な契約の被害を少なくすることはできません。 むしろ、「引っかかってしまうことがある」ということを前提に、あとで契約をなかったことにできる方法はいくらでもあるということを知っておくべきです。 不意打ちされている状態では冷静に対処することはできないわけですから、仮に不本意な契約をしてしまっても負い目を感じる必要はありません。もし不要な契約をしてしまった場合は、後で冷静になってその契約を清算すればよいと考えるのです。 その際は、消費生活センターや弁護士、司法書士といった専門職のアドバイスを聴いてみるとよいと思います。 ■大切なことは「お金をすぐに払わないこと」 悪質商法の手口は日々新たなものが生まれていますが、ニュースに取り上げられ注意喚起がなされるころには、すでに多数の被害が発生してしまっています。これではいたちごっこを繰り返すばかりとなってしまいます。 これまで制定されている法律で、多くのパターンの被害を「事後的に」解決をすることができるのですが、問題は、悪質な取引を持ちかける業者というのは後で所在がつかめなくなってしまうことが多く、一度被害にあってしまうとお金を取り戻すことがとても困難になるということです。 そこで大切なことは「お金をすぐに払わない」ことです。 代金を支払う前であれば「クーリングオフをしたので代金は支払わない」「契約を取り消したので代金は支払わない」と支払いを拒絶するだけで足りるのです。 今回ご紹介したケースの中には1本10万円を超えるような物干し竿を購入させられた…というケースもあります。 仮に本当に一本10万円もするような物干し竿を購入する必要があるとして、代金の支払いを数日待ってもらったとしても、業者に大きな損失が発生するとはとても考えられません。代金の支払いを数日待ってもらうだけでよいのです。本当に必要であれば代金の支払いをすればよいですし、問題のある取引だと思うのであればその数日の間に各種専門家の相談窓口に相談をすればよいでしょう。 今回ご紹介した悪質な物干し竿販売のケースも高齢者が被害を受けるケースが多いのですが、これに限らず、高齢者の方が消費者被害にあうケースが年々増加しています。例えば多額の金銭を自宅においておくとその場でお金を払ってしまうということもあるでしょうから、日頃の金銭管理の方法を変え多額の現金をおかないようにするということも、被害を未然に防ぐ工夫の一つだと思います。 【関連記事】 ■振り込め詐欺がなくならない理由(及川修平 司法書士) http://sharescafe.net/44526526-20150501.html ■高齢者の悪質商法被害を防ぐには?成年後見制度は機能するか? http://oikawa-office.com/2014/12/22/post-1830/ ■ライザップはそろそろ前払制度をやめてみたらどうか(司法書士及川修平) http://sharescafe.net/45300010-20150625.html ■裁判所で「とりあえず半分でどう?」と言われたらどうする? http://oikawa-office.com/2015/02/27/post-1886/ ■その広告・宣伝メールは適法か? (及川修平 司法書士) http://sharescafe.net/43347513-20150213.html 及川修平 司法書士 シェアーズカフェ・オンラインからのお知らせ ■シェアーズカフェ・オンラインは2014年から国内最大のポータルサイト・Yahoo!ニュースに掲載記事を配信しています ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家の書き手を募集しています。 ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家向けに執筆指導を行っています。 ■シェアーズカフェ・オンラインを運営するシェアーズカフェは住宅・保険・投資・家計管理・年金など、個人向けの相談・レッスンを提供しています。編集長で「保険を売らないFP」の中嶋が対応します。 |