ベトナムの日本での捉えられ方として一般的なものが「中産階級が伸びるアジアの新興国」といったものです。多くの日本企業がベトナムに興味を持つのも平均年齢28歳という若さとその将来性によるものだと思います。 2年前になりますが、ボストンコンサルティンググループが「ベトナムの中間・富裕層は 2020 年に 3,300 万人」というレポートを発表しました。このレポートの中間・富裕層とは月間世帯収入で1500万ドン(現在の為替で約8万円)の層を指し、ベトナム家庭の14%が該当します。この豊かな層が2020年には人口の1/3までになりますよ、というベトナムの将来性を示唆するレポートでした。 ■意外なベトナムの金持ち。ベトナムサンドイッチ「バインミー」の露天商 新興国の中間・富裕層というと、一般的に思い当たるのが大企業に努めるホワイトワーカーや政府関係者の姿だと思いますが、ベトナムには色々な仕事からお金を得ている人がいます。その中で、実は意外と稼いでいるのが「バインミー」の露天商です。「バインミー」とはベトナム旅行のガイドブック等では必ず載っているフランスパンを使ったベトナムのサンドイッチです。普段から近くのバインミー屋で客足が絶えないのを見て、彼らの売上について調べてみる事にしました。 ホーチミンにある10軒程のバインミー屋に聞き回った売上結果が下記の通りです。 彼らは平均で170個のバインミーを販売しており、売上としては1日約1万円、多くのお店が週6日オープンしていますので月商25万円という結果でした。多い所では1日300ものバインミーを販売しており、約2分強で1個のバインミーを販売していることになります。 ■賃料0。代わりに支払うのは賄賂? 支出の面ではどうでしょうか?コストとして大きいのが材料費ですが、これはどこも原価率50%程だそうで、パンと野菜、バター、ハム等の簡単な構成なので数十円で済みます。また人件費ですが、基本はこの店のオーナーであるオバちゃんが1人でやっているのでキャッシュアウトはありません(仮にバイトを雇っていた場合は1人10000円〜15000円の出費になります)。残りの大きな費用要素としては賃料(場所代)が挙げられますが、これはどのお店も払っていませんでした。本来は路上でものを売るのは違法な為、彼らは定期的に巡回する警察に賄賂を渡す事で凌いだり、自分の家の前などでお店を開き、自分の土地の一部ということで賄賂の支払無しでお店を開いたりしています。 以上の調査からベトナムのバインミー屋の収支をまとめると下記になります。当然地方や郊外に行くと売上は落ちるかと思いますが、ホーチミンのバインミー屋の月額の利益は12万程と富裕層並の収入を得ていると考えられます。 この金額はベトナムの管理者層の給料と大体同等です。バインミー屋を始めるのに必要なのは、材料と屋台のみで初期投資に5万円も有ればスタート出来ます。特段高い調理スキルも必要としないので、若者などがもっと興味をもっても良さそうですが、イメージが悪い事、新しい場所にお店を開こうとすると近隣からの抵抗があること等、色々ハードルはあるようで余り興味を示しません。 最近は少しずつバインミー屋の勢力も変わり始めており、チェーン店展開をする事業者などもチラホラと見受けられます。またベトナムでは急速にコンビニ等も増えだしており、これらもバインミー屋の競合になっていきます。ただ今のところはバインミー屋のオバちゃん達は、毎日の販売で着々と安定収入を得ているようです。 【関連トピックス】 ■知っている日本人は「安倍首相」と「小澤マリア」。日韓ドラマの差が与えるベトナムビジネスへの影響(黒川賢吾 経営者) http://sharescafe.net/43915341-20150324.html ■半数がスッピンで会社に通勤?・・ベトナムの化粧事情(黒川賢吾 経営者) http://sharescafe.net/43459871-20150220.html ■ベトナムで起業した僕がソニーとユニクロで学んだ事(黒川賢吾 経営者) http://sharescafe.net/42171459-20141201.html ■給料数万円のベトナム人がどうしてiPhoneを持てるのか(黒川賢吾 株式会社Asia Plus CEO) http://sharescafe.net/42275013-20141208.html ■消費市場としてのベトナムの魅力 (黒川賢吾 株式会社Asia Plus CEO) : http://sharescafe.net/41591667-20141028.html 黒川賢吾 株式会社Asia Plus CEO シェアーズカフェ・オンラインからのお知らせ ■シェアーズカフェ・オンラインは2014年から国内最大のポータルサイト・Yahoo!ニュースに掲載記事を配信しています ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家の書き手を募集しています。 ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家向けに執筆指導を行っています。 ■シェアーズカフェ・オンラインを運営するシェアーズカフェは住宅・保険・投資・家計管理・年金など、個人向けの相談・レッスンを提供しています。編集長で「保険を売らないFP」の中嶋が対応します。 |