ダイヤリー

就活後ろ倒し元年となった2016年ですが、突如就活に激震が起こりました。経団連・榊原会長が、元年にして大学・企業・学生からの大きな批判を前に、大学生の選考解禁日・8月1日を、来年の採用活動を前に制度変更を検討する方針を示したのです。実際昨年までの4月選考解禁を後ろ倒しして8月とした「後ろ倒し元年」は1年で終わるのでしょうか。就活スケジュールを読み解くには、広報活動解禁と採用選考解禁の2点で見る必要があります。その上で次のシーズン・2017卒就活のスケジュールは?

■後ろ倒しのトリック
昨年までの就活スケジュールは「12月広報活動解禁、3月選考解禁」でしたが、今年から「4月広報活動解禁、8月選考解禁」となりました。一見単なるタイミングの後ろ倒しに見える変更ですが、広報期間は12月→3月(3ヵ月間)が、4月→8月(4ヵ月間)と、1ヵ月長期化されていることは、専門家から指摘されていました。そもそも今年度は最低でも1ヵ月長期化されることは織り込まれていたのです。

ちなみに広報活動解禁とは、企業説明会やセミナーなどの学生への採用情報提供が開始できることを意味し、それまでの期間は特定した企業の採用情報を広報することができないというものです。また選考解禁とは、エントリーシートや書類選考、面接といった、具体的な採用活動の正式な開始を意味します。しかしこれらにはいくらでも抜け穴があり、これまた当初から効果については疑問が呈されていました。


■就活スケジュール設定は必要か?
そもそもここで語っている就活スケジュール(時期)は法律でも何でもなく、経団連が設定した指針に過ぎません。反した場合も罰則など強い拘束がないことから抜け駆けが心配されましたが、実際には少なくとも経団連加盟企業が堂々と抜け駆けしたという例はほとんど耳にしませんでした。

ただしこっそりと、あるいは明確な証拠は残さないような形でのスケジュールに反した動きは実際多数見られたといわれます。そもそも経団連から脱退して三木谷楽天社長らが作った新団体や、外資系企業や中小企業のように経団連に加盟していない企業は拘束すら受けない訳で、事実今年度は外資や中小企業が早くから動き、8月の経団連企業の選考開始前に内定をゲットしたという学生の多くはこれら企業からのものと思われます。

また世界では新卒一括採用など日本だけのガラパゴス政策だという批判も昔からあり、就活時期の完全自由化を求める声は常にあります。大学側からは、学生の学習時間が減ることに対する強い批判があり、就活後ろ倒しも、こうした大学の声が大きなよりどころとなったものでした。ユニクロのように学部1年から応募できる企業も出て、通年採用、秋採用の拡大など、「一括採用」には変化がみられる?ようにも見えます。

しかし残念ながら現実は、圧倒的多数の企業が一括採用を継続しています。そのほとんどが4月入社を想定したものです。理念はともかく、新卒一括採用の損得で、「得」が投資に見合う内は、そうそう変わらないものといえるでしょう。


■ズバリ、2017年卒就活は変わる!?
私の予想では、今年から始まった「4月広報活動解禁、8月選考解禁」のスケジュールは、もう次年度・2017年卒就活から変わるのではと思います。しかし就活は企業、大学だけでなく、就活情報会社などを巻き込んだ、巨大な社会インフラになっていることから、さすがに一気に元の「12月広報活動解禁、3月選考解禁」は難しいでしょう。

特に12月広報解禁は仮に今ただちに決断できたとしても、実際に準備をすることは事実上不可能です。しかし一方の採用活動解禁日については8月ではなく、もっと早く、3月は無理でも6月あたりでも可とするというような妥協が生まれる可能性は、榊原会長の「会見」という意思表示によって出てきたと思います。

産業界だけでなく、大学業界含め、利害関係者のほとんどが反対している現スケジュール。やはり強制力のない努力義務、しかも穴だらけの協定で迷惑するのは一番に学生です。残念ながら学生はまだまだ社会の本音と建て前のような使い分けには習熟しておらず、それを空気を読めと突き放すのはかわいそうな話です。


■今できること、これからすべきこと
一方現スケジュール下で、経団連企業に先んじて内定(内々定)を出した企業群ですが、完全逃げ切りが出来ているとは思えません。結局早く内定を出したものの、その後の経団連企業からの内定で乗り換え・内定辞退が少なくないからです。現時点でもまだ進路の決まらない学生、内々定はあるものの
就活を止めていない学生は、例年に比べればかなりに及んでいると感じます。

企業の方々は、まず大学に相談して今からでも説明会などコンタクトをあきらめないこと。学生諸君は3月いっぱいまであきらめず、直接企業へアタックするなど、これまたあきらめないこと。そして次年度就活を迎える企業・学生は、常在戦場で、この先何が起こっても対応できるよう、心の準備はしておく必要がありそうです。

特に学生は、今年就活で出遅れた先輩の轍を踏まないよう、「解禁日」まで何もしないのではなく、自分の志向、志望、適性やその生かせそうな環境については、常日頃から考えておくことを忘れてはなりません。この先特にスケジュールの流動化が起これば重要になる考え方です。


【参考記事】
■キャリアや資格の相場観
http://shachosan.rm-london.com/?eid=712619
■なぜ求人募集時の給与レンジと、提示時は違うのか
http://shachosan.rm-london.com/?eid=820954
■内定辞退の作法。
http://sharescafe.net/46036751-20150826.html
■新国立迷走に見る、組織の意思決定過程解剖の意義
http://sharescafe.net/45889946-20150812.html
■「手書き履歴書で人柄がわかる」という勘違いへの対策
http://sharescafe.net/44225940-20150411.html

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