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マイナンバーの配布が全国的に続々と行われ、マイナンバーがらみの詐欺事件、マイナンバーのSNS公開による指導、マイナンバーを利用した販促で指導等、様々な事件が起こってきています。今や全国的にセミナーで漏洩に関するリスクマネジメントの話が行われていますが、「まだ何もやってないよ」という中小企業の方は私の周りを見ても非常に多い現状です。

でも、まだ何もしてなくて大丈夫です。中小企業でもあわてずじっくり考える事が大切です。

■従業員に教えましょう
まだ何もしていない企業の方は、とりあえず急いでする事があります。マイナンバーで一番恐いのは漏洩です。そして最も安易に漏洩するのは、実はマイナンバーを通知された従業員本人です。

・配布された通知カードを友達や電話の問い合わせで教えてしまう
・自分のブログやFacebookで発表してしまう
・マイナンバーカードを安易にレンタルDVDの個人証明書としてコピーさせる

こういった行為をしているくせに、「会社にしか教えていない私のマイナンバーが漏洩した。会社は責任を取れ。」などと言われても対応のしようがありません。また、「役所から通知がきたけど、マイナンバーって何?」と言われる方も少なくありません。年金手帳ですら紛失してしまう方も多い中で、「よくわからない役所の紙などいらない」と、捨ててしまう方も必ずいらっしゃいます。

・通知されたカードを捨てないできちんと保管すること
・誰にも見せたり教えたりしないこと
・電話で聞いてくる人は、全員詐欺であること。

を従業員の方にきちんと教えることは必要です。これだけは急いでやりましょう。マイナンバーで会社責任を問われなくても、詐欺にあった事をきっかけにして、最後には社内横領してしまったケースもありますから。

■マイナンバーを何に使うか知りましょう
マイナンバーは、平成28年1月から利用が始ります。平成28年中に会社がマイナンバーを必要とするものは、雇用保険と税金だけになります。それも記載する書類は限定されています。特に来年は少ないので慣れるにはちょうどいいでしょう。

・雇用保険の資格取得(入社時)
・雇用保険の資格喪失(退職時)
・税務署に提出する支払調書と源泉徴収票(平成29年1月31日まで)
・市町村に提出する給与支払報告書と源泉徴収票(平成29年1月31日まで)
・雇用保険の高年齢雇用継続給付(60歳の時より給料が下がった方)
・雇用保険の育児休業給付(出産による育児休業をする方)
・雇用保険の介護休業給付(介護による休業をする方)

下の3つは、カッコの中に当てはまる方だけです。利用範囲は毎年拡大していく予定ですので、最終的には全員分を集めないといけません。集めていないと、役所に書類を提出する時にドタバタしてしまう。ドタバタしているので、間違ってしまう。間違う事で時間を大幅にロスする。時間の大幅なロスが本業に支障をきたす。という風が吹いたら桶屋が儲かるみたいな話が無いともいいきれません。

ではいつまでに全員分を集めればいいでしょうか。

■マイナンバーをすぐに集めない
マイナンバーを集めると、管理しなくてはいけません。管理するには取扱いに関する体制作りや保管のルール作り、マイナンバー管理エリアの設置等、特に小規模の会社には不可能に近い話がたくさん出てきます。

ですから、できるだけ集める時期は遅らせましょう。来年最初に必要になる方は、「来年1月以降に入社する方と退職する方の中で雇用保険に入れる方」です。これはパート・アルバイトの人も該等するので注意しましょう。

入社する方は、持って来ないと入社できないかもしれないので、当然持って来ると思いますが、持ってこない方は再三の要請をする必要があります。退職する場合は、マイナンバーが無い場合、離職票を出す手続が遅くなる可能性があるとハローワーク窓口で言われております。これで一番困るのは本人なので、持って来るはずです。無くても遅くなるだけで手続は可能なので、会社として困るわけではありません。

誰も入社・退職しない場合は、平成29年1月の税務署への申告に必要になります。平成28年1月の申告には記載の必要はありません。またマイナンバーをどうしても教えない方に関しては、未記入でも受け付けるとなっています。本人が脱税を疑われる可能性はありますが、会社としては大丈夫です。

ということは、来年に入社・退職する人以外の従業員のマイナンバーは、最悪でも来年末までに集めれば十分だということです。

■マイナンバー管理はゆっくり考えて対策を
マイナンバー管理には、社労士や税理士に外部委託、クラウドサービス、社内で管理体制を整えて管理等の様々な方法があります。外部委託やクラウドサービスは費用がかかりますが、社内管理体制を整える方が高くつく場合もあります。

マイナンバーに費用をかけたとしても、会社に利益や売上が入ってくるわけではありません。リスクマネジメントとして、突発的な費用を発生させないために事前にリスクヘッジをするということは、企業経営で重要なポイントですが、利益につながらない費用は、可能な限り遅くして、かつ可能な限り安くするというセンスは経営者として必須です。しかもマイナンバーはセキュリティがらみのお話なので、激安の漏れ放題サービスでは意味がありません。どうやるとローコストかつ安心できるのかをしっかりと考慮し、企業防衛に役立てていきましょう。


《参考記事》
■マイナンバーへの対策の前に、私の対策の基準を考えた 原田 雄一朗
http://cop099.blog.fc2.com/blog-entry-201.html
■マイナンバーと漏洩問題 原田 雄一朗
http://cop099.blog.fc2.com/blog-entry-206.html
■中小企業のマイナンバー対応における5つのポイント|使えるチェックリスト付き 経営ハッカー
http://sharescafe.net/45184480-20150616.html
■マイナンバー業務で税理士と社労士の住み分けはどうなる? カイケイ・ネット
http://sharescafe.net/46200094-20150909.html
■厚生年金未加入の企業は戦々恐々!?「マイナンバー制度」導入の議論がいよいよ詰めの段階に カイケイ・ネット
http://sharescafe.net/43012570-20150123.html

アールズ社会保険労務士事務所
社会保険労務士 原田 雄一朗

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