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私は旅行が趣味で、乗り物に乗ることも多い。基本的には普通席で満足しているが、時には自分へのご褒美や、目を養う勉強として上位のシートに座ってみることもある。そのような中で、JR東日本の新幹線のグランクラスと、JALの国内線ファーストクラスを比較して気が付いたことがある。

■料金はほぼ同じ
JALのファーストクラスは羽田発着の主要航路を中心に設定されており(羽田⇔札幌、羽田⇔福岡等)、区間に関わらず、普通運賃に対し一律プラス8,000円である。

JR東日本のグランクラスは距離に応じて料金が異なるが、おおむね、普通車指定席の特急料金に対しプラス8,000円から10,000円程度となっている。

すなわち、両者の料金はほぼ同等ということが言えるわけだが、私はどうもグランクラスを割高に感じてしまうのだ。

そこで、その理由をいくつかの角度から考えてみることにした。

■乗車中(搭乗中)のサービスは食事以外は互角
まず、グランクラスやファーストクラスのサービスで多くの方がイメージするのは豪華な座席であろうから、座席についての比較からスタートしよう。

この点、どちらも白い革張りのラグジュアリーなシートで、シートピッチも130cmと、互角のスペックである。2人掛けの席では隣席との仕切りを充分にとり、プライベート性を確保している点も同じだ。

読書灯や電動リクライニングなどの付帯設備についても両者互角である。ただ、グランクラスにはコンセントがあり、ファーストクラスにはないが、この点に関しては、ファーストクラスではバッテリーを借りることができるので、電源がないことが大きなマイナスにはならない。したがって、シートの質については引き分けと言えよう。

次に、アメニティについてであるが、グランクラス、ファーストクラスともに、スリッパ、ブランケット、アイマスク、靴べらなどの提供を受けることができ、また新聞や雑誌の貸し出しサービスもあるので、これも互角と思われる。

では、食事はどうであろうか。どちらも1食分の食事が提供されて、アルコールを含めたドリンクが飲み放題というのも同じである。

だが、食事の提供がグランクラスは紙パックであるのに対し、ファーストクラスでは陶器で提供されている。和食では味噌汁まで出てくる。食事の質は圧倒的にファーストクラスの勝利と言って間違いないであろう。

なお、専属のアテンダントにより食事やアメニティ等のサービスが提供されるという点は両者同じである。

ここまでをまとめると、食事はファーストクラスに分があるので、乗車中(搭乗中)のサービスはファーストクラスにやや優位性があるものの、タイトルに記したような「完敗」と言えるまでの差はついていない。

■乗車(搭乗)前後のサービスに大きな差
では、グランクラスの何が、ファーストクラスに完敗しているのだろうか。

私は、乗車中(搭乗中)以外のサービスでは、グランクラスはファーストクラスに圧倒的に及ばないと考えている。

すなわち、新幹線や飛行機へ乗り降りする前後のサービスに大きな差があるということだ。

まず、ファーストクラスの場合は、専用のカウンターでチェックインし、手荷物検査も専用ゲートで素早く受けられる。なお、荷物を預けなければならないのが飛行機の弱点であるが、ファーストクラスならば、到着空港で真っ先に受け取ることができるので、ストレスは感じない。

これに対し、グランクラスでは一般の旅客と同じ改札を通ることになるし、もし変更などあれば、みどりの窓口の行列に並ばなければならない。JR東日本は、グランクラス専用のサービスカウンターを用意していないからだ。

せめて、東京、大宮、仙台、金沢といった主要駅だけでも、グランクラスやグリーン車の旅客のための専用のサービスカウンターを設けるべきではないだろうか。

さらに言えば、チェックイン以上に差がつくのは、ラウンジサービスである。

JALではファーストクラスの乗客に対し、搭乗前後に空港でのラウンジサービスを提供している。ラウンジでは、ドリンクや軽食の提供を受けたり、電源やwifiのサービスの整ったデスクで仕事をすることもできる。空港によってはシャワーを浴びてリフレッシュすることも可能だ。

これに対して、グランクラスでは特別料金を払っているのに、駅でのサービスは何もない。一般の乗客と同じ待合室で窮屈な思いをするか、ホームで寒空の下、電車の到着を待つしかない。

■ソフト面のサービスにも差がある
最後に、最も大きな差異はソフト面のサービスではないだろうか。

JALでは予約情報やマイレージカードを通じで顧客情報がデータベース化され、頻繁に利用する上顧客に対しては、特別な気配りをしてもらえる。だからこそ、上顧客は「もてなされている」と感じ、それだけのお金を払う価値があると感じるのであろう。

グランクラスの場合は、そもそもきっぷは記名式ではないので、顧客管理自体が不可能であろうから、上顧客に対しても、通り一辺倒なサービスになってしまわざるを得ないのが現状だ。

■まとめ
つまり、結論としては、お客様から頂く特別料金がほぼ同じなのに、グランクラスがファーストクラスと肩を並べられるのが座席の大きさとアメニティだけとあっては、顧客がグランクラスを割高と考えても仕方がないであろう、ということである。

私自身も、JR東日本の新幹線で上位シートに乗りたい場合は、グリーン車で充分だと思っているし、グランクラスに乗ったことのある人に話を聞いても「ちょっと、割高だよね」とか「記念に乗ってみたけど、次はないかな」という感想が目立った。

グランクラスが本当の意味でファーストクラスと肩を並べるためには、シートを豪華にするだけでなく、お客様が乗車駅についてから、降車駅を出るまでの全ての行動を分析して、そのお客様が気持ちの良い旅をできるよう考えるべきであろう。もちろん、必ずしもJALの真似をすることが正解とは限らないので、JR東日本なりにグランクラスに相応しいサービスを、改めて考えて頂きたいものである。

そうすれば、「記念にグランクラスに乗ってみた」で終わるのではなく、グランクラスに繰り返し乗車したいと思うファンが、どんどん増えていくのではないだろうか。

《参考記事》
■東名阪高速バス事故、11日連続勤務は合法という驚き 榊 裕葵
http://sharescafe.net/45556859-20150715.html
■職人の世界に労働基準法は適用されるか?
http://sharescafe.net/41988647-20141120.html
■経験者だから語れる。パワハラで自殺しないために知っておきたい2つのこと。 榊 裕葵
http://sharescafe.net/42167544-20141201.html
■すき家のワンオペを批判するなら、牛丼にも深夜料金を払うべきだ。 榊 裕葵
http://sharescafe.net/41373749-20141016.html
■「資生堂ショック」が全然ショックではない理由 榊 裕葵
http://sharescafe.net/46880978-20151112.html

あおいヒューマンリソースコンサルティング代表
特定社会保険労務士・CFP 榊 裕葵

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