■飲み残しによる「残薬」で500億円の経済損失 病院で出された薬の飲み忘れ・飲み残しによる「残薬」が大量にたまり、医療がムダになるばかりでなく、治療効果が上がらず症状が悪化し、さらに薬が増えるといった悪循環が問題化しており、厚生労働省によると、潜在的な残薬は年間500億円分に上り、薬剤師の管理や指導によって400億円分は改善できると推計されている。(2015年11月18日 産経新聞) ■「コンプライアンス」から「アドヒアランス」へ? 患者が病院や薬局から出された薬を、医師や薬剤師から受けた指示通りの用法用量を守って服用することを服薬遵守といい、従来は「コンプライアンス」と呼んできたが、近年は同じ服薬遵守を「アドヒアランス」という言葉で表す機会が増えている。 前者はどちらかというと患者にとって受動的な態度。かなり乱暴な言い方をすれば、自らの身体の状態や薬についての理解の有無を問わず、とにかく言われた通り、または薬袋に書かれている通りに服薬していれば良いという、ほぼ医療提供者側の視点での評価であったが、後者は患者の視点で、より能動的な態度を表しており、患者自身が薬の内容や処方意図をある程度以上理解して、積極的に治療参加・服薬遵守をする態度のことを指す。 業界誌における表記や、一部の識者の間においては服薬遵守はコンプライアンスからアドヒアランスへ、という流れになってきているとはいうものの、私が現場医師や薬剤師、そして一般の消費者にインタビューして話を聞いた限りでは現状、アドヒアランス意識の啓蒙が医療者側、患者側ともに浸透しているとは思えない印象だ。 ■「残薬」が増える原因 1. 単なる「うっかり」飲み忘れ… 最も多い原因。急な外出などで薬を忘れてしまった、などの理由が挙げられる。 2. 理解不足と、使用法の複雑さ… 服薬が必要な理由についてきちんと理解していないことにより起こるもの。特に処方薬が複数あった場合、どの病状に対しての薬なのかが分からなくなったり、用法用量が分からなくなってしまったり、「食後」指示の薬を食事を抜いてしまった時の対応が分からない、などの理由で起こる。 3. 処方薬に対する不安・不信… 服用していても改善しているような気がしない。継続服用や強い薬への抵抗感、副作用の心配などによってコンプライアンスの低下が起こる場合がある。 4. 経済的理由… 高額な薬を処方されており、保険が適応されていても毎月の自己負担額が大きくなることを理由で服薬を間引くケース。 5. その他。 ■飲み忘れに気づいたら 薬を飲み忘れた時、気づいた時点で服用することが基本だが、次回の服用時点までの間隔が極端に短い場合はスキップする。 例えば、血圧を下げる薬(降圧薬)の飲み忘れに気づいた場合。降圧薬は、1 日 1~3回服用することで血圧が管理される。薬の飲み忘れが多いのは昼と夜。飲み忘れた場合は次の表を参考にされたい。くれぐれも 2回分を一度に服用しないこと。
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年間損失500億円。「残薬」解消の糸口を薬剤師が客観的に考えてみた。(山浦卓 薬剤師・医学博士)
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カテゴリー : 健康・医療 経済