![]() 正月早々、日経ビジネスの2015.12.28・2016.01.04合併号を衝動買いしてしまった。 ■若き女性エンジニアの正体とは? 表紙を飾っていた、天使の羽のようなロボットデバイスを身に付けた若き女性が誰なのか、気になったからだ。 家に帰り、早速彼女に関する記事を読むと、彼女は「きゅんくん」という名前で活動するロボティクス・ファッション・クリエーターなのだそうだ。 きゅんくんさんは、子供のころ、家にあった鉄腕アトムでロボットに興味を持ち、また、ファッションも好きだったため、自分の好きなことを両方やりたいということで考え付いたのが、「ロボティクス・ファッション」という分野を切り開くことであったということだ。 具体的には、ロボットのような機械的なものを日常的なファッションの一部として取り込んでいきたいという試みである。 現在は、大学の機械工学科の学生として勉学に励みながら、ロボティクス・ファッション・クリエーターとしての活動を続けているということである。 私は、彼女のことに興味を持ち、インターネットで調べてみたのだが、本名は松永夏紀さんといい、1994年生まれの21歳。国内外のロボットに関係するイベントに積極的に参加をしたり、電通グループの研究機関で研究員に就任したりなど、大活躍をなさっている様子であった。 ただ、私が大きく意外性を感じたのは、彼女が「ロボットに機能を求めず、純粋にファッションとして身に付けたい」と考えていることである。 彼女は、Webメディアの取材に対し、次のように答えていた。 「機能的なことは求めてないんです。私はファッションとしてロボットを身にまといたい。好きなキャラクターや絵柄がプリントされているTシャツとかを着たくなっちゃう心理と同じで、私はロボットをファッションにしたいんです。」(日本テレビ SENSORS.jp 2015.06.10) ロボットとファッションを同じくらい愛する彼女は、世の中がロボットに対し機能面ばかりを重視して求めていることに対し、違和感を持っている様子で、それが上記のような発言になったようだ。 ■機能とファッションの両立を期待 確かに、彼女の意見には一理あると思う。 だが、機能とファッション性を高い次元で両立させることができれば、世の中を変えるようなトレンドが生み出せるかもしれないとも私は思った。 きゅんくんさんも、ロボットの機能偏重に違和感を持てど、ロボットが機能を持つこと自体については否定をしないはずである。 例えば、ソニーのウォークマンや、アップルのiPhoneは、機能面だけでなく、ファッション性としても抜群で、ファッショナブルでライフスタイルを変えるようなアイテムとして提案されたからこそ多くの人に受け入れられたわけだ。 ■ウェアラブルロボットが日本を救う 私は、彼女が打ち出した「ウェアラブルロボット」というコンセプトには、少子高齢化の日本を救うポテンシャルがあるのではないかと期待をしている。 というのも、これからの日本、高齢化社会が進むなかで、介護問題がより深刻なものになっていくことは、誰の目から見ても明らかであるが、もしウェアラブルロボットが一般的なものとして世の中に普及したならば、少なからずの人が、介護に頼らなくとも、機械の助けを借りながら、人間らしい自立した生活を送れるようになるのではないかということだ。 例えば、足の不自由な方が膝に装着したデバイスが段差をまたぐサポートをしたり、手の不自由な方が背中に装着したアームがドアノブを開けてくれたりすれば、寝たきりにならない限り、介護に頼らなくても多くの高齢者の方が自活できる世の中になる可能性がある。 トイレ、歯を磨く、靴ひもを結ぶ、などもウェアラブルロボットが助けてくれるようになれば素晴らしい。 その結果、介護離職の防止や、介護予算の抑制など、社会問題の解決にもつながっていくはずだ。 ■ウェアラブルロボットとBMIのコラボも さらに、私が「こうなったらいい」と考えているのは、ウェアラブルロボットと、BMI(ブレイン・マシン・インターフェイス)、すなわち、脳波で機械を制御する、という技術との連携である。 BMIはまだまだ開発途上の技術であるが、2009年時点において、本田技研工業は、BMIの技術を用いて、二足歩行ロボットとして有名なASIMOを動かすことに成功している。 同社の広報発表によると、被験者には、「右手」「左手」「足」「舌」の4つの部位を使用した運動をイメージしてもらう実験で、そのイメージを脳波によってASIMOに伝え、90%以上の正答率を得たということである。(2009年3月31日 本田技研工業ニュースリリース) 直近の例では、2014年のFIFAワールドカップのキックオフで、BMIと連動した機械を装備し、下半身が不自由な方がボールをキックオフをするというイベントが行われたそうだ。 このBMIの技術が成熟し、ウェアラブルロボットと合体したならば、例えば、手が不自由な方が、手の役割をするロボットを身に付け、「物をとりたい」とか「ドアを開けたい」と考えたたら、そのロボットが望んだ動作をしてくれるというような世の中が実現するのではないだろうかと期待せずにはいられないわけだ。 ■ウェアラブルロボットを普及させるためのファッション性 だが、このようなウェアラブルロボットが普及するためには、機能面の充実だけでなく、身に付けることが困難であれば普及は不可能なので、重量を感じさせず、動きやすい形で、見た目もスマート、ということが要求されるであろう。 そこで、ウェアラブルロボットをファッションの一部として普及させるというきゅんくんさんの考えは、大きな意味を持っていると感じるのだ。 社会全体として、ファッションとして人がロボットを身に付けていることが不自然ではないという文化が醸成されていけば、ウェアラブルロボットもどんどん洗練されていき、介護や医療の世界においても、ウェアラブルロボットが違和感なく受け入れられていく下地が作られるのではないかと私は思う。 比喩的に補足をするならば、現代において眼鏡は、視力を矯正する機器という機能面と、お洒落のアイテムというファッション面の、二面性を持っているが、ウェアラブルロボットも将来、眼鏡と同じような社会的ポジションを築くことができたら面白い。 直接お会いしたことがないので、きゅんくんさんご本人がどう考えているかは分からないが、私は、ウェアラブルロボットによって、是非、21世紀の日本の社会問題の解決に一石を投じてほしいと願っている。 ■ベンチャーキャピタルに期待したいこと また、私は、きゅんくんさんのような、斬新なアイデアを持った若い人を支援するために、ベンチャーキャピタルが、今まで以上に「川上」での活動に乗り出す動きがあっても良いと思う。 従来、ベンチャーキャピタルというと、将来性のある企業を発掘したり、ベンチャー企業の経営者からプレゼンテーションを受けて、出資を決めるというものであった。 だが、現在はインターネットが発達し、ホームページ、Youtube、ブログなどを見ていると、面白いアイデアや技術を持っている人がたくさん見つかる。 そういう人たちに対してベンチャーキャピタルが働きかけ、もちろん本人にその気があることが前提であるが、アイデアをビジネスに昇華させるための手助けをする動きがあっても良いのではないだろうか。 資金の提供だけでなく、経営に対するアドバイスや、弁護士、税理士、社会保険労務士などの専門家サービスなどをワンストップで提供し、本人はアイデアや技術に集中できる環境を作るということである。 歴史を振り返っても、例えば、世界のHONDAを一代で築き上げた本田宗一郎氏が成功することができたのは、創業初期にビジネスパートナーの藤沢武夫氏に出会い、藤沢氏が裏方として本田技研の資金調達や日々の経営を受け持ち、本田氏は技術や開発に集中することができたからである。 それと同じ考え方で、面白い技術やアイデアを持った人を成功に導くため、そのような人々を発掘し、助けていけるような仕組みができれば、日本で活気あるベンチャーが次々と誕生し、若者が夢を持って働ける国にもなっていくのではないだろうか。 《参考記事》 ■東名阪高速バス事故、11日連続勤務は合法という驚き 榊 裕葵 http://sharescafe.net/45556859-20150715.html ■職人の世界に労働基準法は適用されるか? http://sharescafe.net/41988647-20141120.html ■経験者だから語れる。パワハラで自殺しないために知っておきたい2つのこと。 榊 裕葵 http://sharescafe.net/42167544-20141201.html ■すき家のワンオペを批判するなら、牛丼にも深夜料金を払うべきだ。 榊 裕葵 http://sharescafe.net/41373749-20141016.html ■「資生堂ショック」が全然ショックではない理由 榊 裕葵 http://sharescafe.net/46880978-20151112.html あおいヒューマンリソースコンサルティング代表 特定社会保険労務士・CFP 榊 裕葵 ![]() シェアーズカフェ・オンラインからのお知らせ ■シェアーズカフェ・オンラインは2014年から国内最大のポータルサイト・Yahoo!ニュースに掲載記事を配信しています ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家の書き手を募集しています。 ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家向けに執筆指導を行っています。 ■シェアーズカフェ・オンラインを運営するシェアーズカフェは住宅・保険・投資・家計管理・年金など、個人向けの相談・レッスンを提供しています。編集長で「保険を売らないFP」の中嶋が対応します。 |