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中国の旧正月である春節が終了しました。今年の春節は2月8日でしたが、2月7日~2月13日が連休とされ、2月13日付けの共同通信の記事によると、約600万人の中国人が、海外に出かけたとされています。

中国人観光客をターゲットとした免税店を運営するラオックスが、大幅に業績を伸ばしたという景気のいい報道がある一方で、中国経済の景気減速が明らかになってきており、これまでのような爆買いは見込めないのではという指摘もされています。

■中国人の入国者数と宿泊者数の推移は?

では中国人は、どのぐらい日本に来ているのでしょう?

法務省実施の「出入国管理統計」にて外国人の出入国数を確認することができます。また観光庁では、「宿泊旅行統計調査」という調査を実施しており、国籍別の宿泊者数を集計しています。

これら二つの統計から、中国人の入国者数、及び宿泊者数をみてみることにしましょう。

    宿泊者数      入国者数     平均宿泊日数
2011年 2,716,300     1,043,246     2.60
2012年 4,038,040     1,425,100     2.83
2013年 4,147,130     1,314,437     3.16
2014年 7,796,250     2,409,158     3.24
2015年 16,553,630     4,993,800     3.31
※2015年については速報値

宿泊者数、入国者数ともに順調に増加していることが分かります。特に2015年においては入国者数が前年比約207%、宿泊者数が前年比約212%と大幅に増加しています。2015年1月に中国人向けのビザ発給要件が緩和され、富裕層限定ですが有効期間内に何度でも利用できるマルチビザが使用可能になったことが影響しているかもしれません。

また平均宿泊日数が増加していることも見逃せないポイントです。爆買いだけが注目されがちな中国人観光客ですが、観光など別の目的のために滞在期間が延びているとも考えられます。

■中国人はどこに行くのか?
では中国人は、来日して、どこに宿泊しているのでしょう?「宿泊旅行統計調査」では県別の宿泊者数についても集計しています。2015年1月~11月の宿泊者数トップ10を見てみましょう。
(2015年12月の県別調査結果は執筆時点で未発表)

     宿泊者数    比率
東京都  3,328,670   21.7%
大阪府  2,483,240   16.2%
千葉県  1,320,550   8.6%
北海道  1,253,100   8.2%
愛知県  1,070,760   7.0%
静岡県  1,063,340   6.9%
京都府  768,030    5.0%
神奈川県 734,360    4.8%
沖縄県  713,790    4.7%
山梨県  632,390    4.1%

1位の東京都、2位の大阪府で全体の37.9%を占めており、買い物に便利な大都市に宿泊する人数がやはり多いようです。また東京ディズニーランドがある千葉県や、大都市であり、かつ観光地でもある北海道、京都府や、沖縄県などに宿泊者が多いことも納得感があります。

静岡県と山梨県については、富士山への登山ルートがあることが理由かと推測することもできますが、静岡については、2015年9月29日付けのNHK ONLINEの記事によると、静岡空港の中国路線が2015年に一気に14路線に拡大したことに伴い、県が静岡県内に一泊することを条件に旅行会社に補助金を出したことが、宿泊者数増加の要因であるようです。完成時にはその存在意義が、物議をかもし出した静岡空港ですが、時勢を捉えた施策を打ち出したことで、復活を遂げつつあるようです。

■2015年に宿泊数が大幅に増えた自治体はどこか?
前述の静岡県のように、2015年に急激に宿泊者数を増やした自治体は、どこなのでしょう?2014年の宿泊者数と比較して増加率が高い自治体を見てみましょう。

      2015年宿泊者数   前年比増加率
三重県     114,400      467.7%
滋賀県     92,070      359.4%
福井県     15,820      353.9%
奈良県     118,480      353.7%
茨城県     66,590      349.0%
※2015年1月~11月と2014年1月~11月を比較

トップの三重県ですが、2016年2月16日付けの中日新聞の記事によると、伊勢志摩サミットにより、知名度が上がったことに加え、本来の目的地である大阪や名古屋で宿が取りにくくなったことが宿泊者数増加の要因であるとのことです。奈良県も大阪から1時間程度の距離であることから、三重と近い理由であると考えられそうです。

2位の滋賀県も大阪に近く、三重県や奈良県と同様の理由が推測がされますが、2015/11/11付けの産経WESTの記事によると、滋賀はスキー場が多く、大阪や京都の観光にあわせて、スキーを楽しみたいという需要があるようです。福井県もスキー場があり、また大阪から2時間程度で行くことが可能であり、要因としては、滋賀に近いといえそうです。

茨城県は、茨城空港がもともと積極的に中国との路線を拡大してきたこともあり、静岡県と似たような位置づけと考えられます。ただ以前は、中国人観光客は、高速バスですぐに東京に向かってしまい、茨城にはほとんど留まらないともいわれてましたので、静岡と同様に宿泊を促進する何らかの施策が実施されたのかもしれません。

■まとめ
このように統計調査をみていくと、中国人が、買い物が主な目的として来日している傾向は2015年も変わらなかったようですが、目的地である大都市における宿の不足や、航空運賃削減したいといった理由から、大都市近隣の県に宿泊するようになり、宿泊がてら観光やスキーを楽しむといったニーズも増えつつあるようです。

このような傾向を踏まえ、大都市近隣県が、中国人向けに地域の魅力を積極的にアピールし、単なる宿泊の受け皿とならないようにしていくことが、爆買に頼らずに中国人観光客の獲得するために必要になってくるといえるかもしれません。

《参考記事》
■新入社員のうちに覚えておきたい!仮説思考の重要性と重病性(村山聡 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/44386900-20150421.html
■企業任せでは済まされない?女性活用が進まない理由をデータで考える(村山聡 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/43516534-20150224.html
■あなたの会社にもいるかもしれない?ビジネスメソッドマニアに気をつけろ!(村山聡 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/40838018-20140914.html
■平均値をウソつき呼ばわりするのは、もうそろそろ終わりにしよう。  村山聡
http://sharescafe.net/39363307-20140614.html
■「飲み会は残業代出ますか?」と聞く前に新入社員が心得ておくべきこと 村山聡
http://sharescafe.net/38576145-20140430.ht

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