4f4d47a1e3a6188102757c54dc838060_s

介護施設で事件や事故が起きると、施設に肉親を預けることに対して不安になる方は少なくないと思います。介護施設はサービス業であり、各介護施設はより良い介護、より良い施設を目指して日々努力しています。それでも、すべての施設がそうならないことは事実です。特別養護老人ホームの事務長として勤めていた経験から、より良い介護施設選びに少しでもお役に立てたらと思い、寄稿することにいたしました。今回は、電話対応や施設見学で気付ける良い施設の選び方をお伝えいたします。

■自宅で使っていた家具は持ち込めますか?
特別養護老人ホームへの入所は、少なくとも要介護度3以上、入所待機者は一施設あたり数百人となっており、入所できる方はほんの一握りの方に過ぎません。入所基準というものがあり、申込者の緊急度合を点数化し、基本的に点数の高い方から声かけをすることになります。保育園の待機児童の問題も社会問題となっていますが、高齢者施設も同様で入りたいと思っても入れない現実があります。

さて、申し込むにあたってどんな施設かわからないと申し込みさえできません。そのような不安に対して、施設見学というものを実施しています。その見学を予約する電話で訪ねていただきたいのは、自宅で使っていた家具等の持ち込みができるかどうかです。持ち込み可能な施設は良い施設だと考えられます。

理由は、介護施設は、自宅の延長線上にある存在だからです。なるべく自宅の雰囲気を作り出すことで、入所者に安心してもらいたいという入所者本位の考えをその施設が持っているかどうかを伺うことができます。さりげなく聞いてみてはいかがでしょうか?

■見学当日は、まず、事務所スタッフを見てください
昔は窓口対応で評判の悪かった役所でさえ、今では窓口に私たちがくれば積極的に声をかけてくれます。介護施設は、サービス業ですので役所とは比較できないくらいおもてなしをできなければいけないと思います。介護施設でも最近はフロントを設け、コンシェルジュのいる施設もありますが、そのような方が声をかけてくれるのは当然のことです。

本当にここが良い施設なのかを判断されるのでしたら、コンシェルジュ以外の事務所にいる職員をじっくり見てください。コンシェルジュに任せっぱなしではなく、事務所全体からウェルカムの雰囲気を感じますか?パソコンだけに気を取られ、お客様が来たことに無関心になっていないでしょうか。パソコン画面から視線を外し、こちらに目を向けてにっこりと笑ってくれたり、立ちあがって「いらっしゃいませ」と言ってくれたら、その施設の事務所は合格です。

■すれ違う職員は挨拶しますか
施設を案内する職員は、主に相談員や事務員、その他介護職員となりますが、それらの職員は施設の顔でもあるので、受け答えがしっかりしているとか、笑顔で接しているのは当然のことです。そこは良い施設の判断基準ではありません。施設内を案内してもらっている最中にすれ違う職員が、しっかりと、あなたのことを認識して、「こんにちは」や「いらっしゃいませ」と声をかけてくるかどうかが判断基準になります。

施設職員は、その日に見学があることを申し送りで知っていますので、気にして挨拶してくるかどうかは、その施設のおもてなしのレベルを物語ることになります。職員だけでしゃべっていて、外部の方に無関心だったら、おのずと入所者にも無関心になっているのではないかと推測できます。

■介護現場の職員と入居者の身なり
施設内の居室は、すでに入居されているご利用者がいらっしゃいますので、なかなか見る機会は少ないですが、ご利用者が食事をしたり、お茶を飲んだりする居間はたいがい見学コースになっています。日中の時間帯は居間に1~2名ほどの介護職員が働いていると思います。忙しいながらも、こちらに対して挨拶してくれるかどうかが重要です。同時に入居されているご利用者にも会えますので、どんな洋服を着ているか、服は汚れていないか、髪は整っているか、車いすに食べこぼしがなく掃除されているかが判断するポイントです。

ご自身のご両親が入所されたと仮定してみてください。冬なのに薄着で過ごしているなど季節に合わない服や色バランスがとれていない服はNGですよね。そして、服は汚れたら着替えるものなので、つまりは汚れたらすぐに着替えができるくらいに職員が気配りをして、対応できているのかを知ることができます。また大人であれば寝癖は直すものなので、身なりに気を使ってもらえているのかどうかも判断できます。車いすをご利用されている方は、終日車いすに座っています。食べこぼしがあるような車いすには座っていたくないのは誰でも同じです。

もちろん、ご利用者の機嫌やその時の職員の体制などで、100%対応できるものとは思えませんが、いくつかの居間を見せてもらえたら、どこもかしこも・・・ということであれば、申し込みを再検討する必要があるかもしれません。

■見学が終わってそのまま帰らないでください
実際に見学をして、ここまでで少しでも気になるようなことがあったら、気になったことを案内の職員に直接ぶつけてください。良い施設でしたら、案内の職員がその後フィードバックして、改善する動きにつながるはずです。施設職員は、外部からなかなか意見を言われることはありません。ぜひその施設のためと思って感じたことを伝えてあげてください。

【参考記事】
■介護保険は保険ではない ケアマネジャーと上手に付き合う方法 藤尾智之
http://sharescafe.net/35169456-20131126.html
■介護保険は保険でなはい 「親の介護は老人ホームにお願い」は甘い考え 介護保険を考える(1) 藤尾智之
http://sharescafe.net/35018841-20131120.html
■押し売りも怖くない!成年後見制度で財産を守ろう 藤尾智之
http://sharescafe.net/36033856-20131230.html
■ついに発表された平成26年度路線価!! 親父の土地を査定する方法 (藤尾智之 税理士)
http://sharescafe.net/39673462-20140703.html
■場外ホームランを打つよりこつこつ送りバントが本流!? 年末までにやりたい節税対策 (藤尾智之 税理士)
http://sharescafe.net/47003543-20151125.html

税理士 藤尾智之

この執筆者の記事一覧

このエントリーをはてなブックマークに追加
シェアーズカフェ・オンラインからのお知らせ
シェアーズカフェ・オンラインは2014年から国内最大のポータルサイト・Yahoo!ニュースに掲載記事を配信しています
シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家の書き手を募集しています。
シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家向けに執筆指導を行っています。
シェアーズカフェ・オンラインを運営するシェアーズカフェは住宅・保険・投資・家計管理・年金など、個人向けの相談・レッスンを提供しています。編集長で「保険を売らないFP」の中嶋が対応します。