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昨年、実施された平成27年国勢調査の人口速報集計の結果が、2016年2月26日に公表されました。

調査結果によると、2015年10月1日現在、日本の総人口は、1億2711万人となっており、平成22年の調査から94万7千人(マイナス0.7%)減少したとのことです。日本の総人口が減少に転じたのは、大正9年に国勢調査が開始されて以来、初めてとのことです。

■人口減は想定内の事実

日本の総人口が減少に転じるのは初めてではありますが、過去の国勢調査の推移をみると、それほど驚くようなことではありません。30年前の1985年以降の日本の総人口の推移と、その増減率をみてみましょう。

調査年  総人口   増減率(%)
1985  121,048,923    3.41
1990  123,611,167    2.12
1995  125,570,246    1.58
2000  126,925,843    1.08
2005  127,767,994    0.66
2010  128,057,352    0.23
2015  127,110,047    -0.74
※「昭和60年~平成27年国勢調査結果」(総務省統計局)のデータを加工して作成

2010年までは総人口は継続して増加しており、2010年の総人口は1985年と比較して、25年で約700万人増加しています。一方で、人口の増減率は、1985年の3.41%から一貫して減少しており、2010年では、わずか0.23%の増加にとどまっています。過去の増減率の減少幅からみても、2015年の総人口がマイナスに転じたのは十分に想定できる範囲といえるでしょう。

実際、内閣府が公表している「平成24年版 高齢社会白書」では、2015年の総人口は約126,597,000人と予測されており、国勢調査の結果は、予測より若干、減少幅が低かったといえます。

■地域毎の人口はどうなったのか?
では都道府県別の人口の増減は、どのようになっているのでしょう?総務省統計局のWebサイトには日本地図で色分けされた各種統計資料が掲載されていますが、平成27年の調査分については、速報ということもあり、反映された資料が存在しないため、こちらで作成してみました。

人口推移

※「昭和60年、平成12年、平成27年国勢調査結果」(総務省統計局)のデータを加工して作成
※地図作成には、古田裕繁氏作成の「Google Map Chartを利用した都道府県別塗り分け地図作成マクロ」を使用

1985年と2000年を比較すると、2000年までに福岡県の人口が500万人を超え、群馬県、栃木県の人口が200万人を超えるなど、一定の大台を超える自治体がいくつかありました。一方で、2015年と2000年を比較すると、2015年までに福島県、群馬県、栃木県の人口が200万人台を割り込み、和歌山県と香川県が100万人台を割り込んでいます。

こうした変化がある一方で、地図を俯瞰してみると、関東、関西、東海、北海道、福岡県に人口が多く分布し、東北、中国、四国、九州の人口は相対的に少ないという基本構造は、この30年で大きな変化はないようにみえます。

また、2015年において、人口が5百万人を超える都道府県は9つ(北海道、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、愛知県、大阪府、兵庫県、福岡県)ですが、これら9つの都道府県の人口の合計は約6千800万人です。日本の総人口の約54%が、この9つの都道府県に居住していることになります。

1985年においては、これら9つの都道府県の人口の合計は約6千100万人で、1985年の総人口の約50%であったことから、緩やかにではありますが、大都市圏の人口の割合が増えているといえるでしょう。

■地域毎の増減率はどうなったのか?
では都道府県別の人口の増減率はどのようになっているのでしょう?

比率推移

※「昭和60年、平成12年、平成27年国勢調査結果」(総務省統計局)のデータを加工して作成
※地図作成には、古田裕繁氏作成の「Google Map Chartを利用した都道府県別塗り分け地図作成マクロ」を使用

人口の推移とはうってかわって、顕著な変化が認められます。1985年時点では、秋田県を除く46都道府県で、増加率の大小はあったにしても、人口は増加していました。ところが、2000年時点になると、北海道、東北、中国、四国、九州の多くの都道府県で、増減率がマイナスに転じます。

2015年になると、増減率がマイナスに転じる都道府県がますます増え、人口が増加した都道府県は、わずかに8つの都道府県(沖縄県、東京都、愛知県、埼玉県、神奈川県、福岡県、滋賀県、千葉県)のみになり、さらに増減率がプラス2%以上の人口の都道府県は、沖縄県(2.967%)と東京都(2.692%)だけになります。

沖縄県の増加率は全都道府県中1位ではありますが、沖縄県の1985年時点の人口は約118万人、2015年時点の人口は約139万人であり、30年間で増加した人口は約21万人です。一方、増加率2位の東京都の1985年時点の人口は1,180万人、2015年時点の人口は約1、350万人であり、増加した人口は約170万人です。

この増加した人口170万人は、2015年時点の熊本県(約177万人)や鹿児島県(約165万人)の人口とほぼ同じ規模であり、見た目の増減率以上に、東京の人口が増えているといえるでしょう。

■まとめ
前述の「平成24年版 高齢社会白書」では45年後の2060年には、日本の総人口は約86,737,000人になると推計しており、この推計どおりに人口が推移すると、2060年には2015年の総人口から約4000万人減少することになります。1985年から2015年の30年の間で約700万人の増加だったことをあわせて考えると、今後、日本の総人口は加速度的に減少していくことになります。

2015年における人口の増減率をみる限り、今後、東京以外の都道府県の人口の減少は全人口の減少幅よりはるかに大きくなっていくと考えられます。人口減少問題については主な施策として、少子化対策が政府の取り組みとして実施されていますが、例えその効果があったとしても、人口が増加に転じるまでの効果を出せるとまではいいきれないでしょう。

このような状況を考えると、人口の減少自体は避けられないと仮定した上で、地方のあり方を検討すべき時期が来ているのかもしれません。

《参考記事》
■新入社員のうちに覚えておきたい!仮説思考の重要性と重病性(村山聡 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/44386900-20150421.html
■企業任せでは済まされない?女性活用が進まない理由をデータで考える(村山聡 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/43516534-20150224.html
■あなたの会社にもいるかもしれない?ビジネスメソッドマニアに気をつけろ!(村山聡 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/40838018-20140914.html
■平均値をウソつき呼ばわりするのは、もうそろそろ終わりにしよう。  村山聡
http://sharescafe.net/39363307-20140614.html
■「飲み会は残業代出ますか?」と聞く前に新入社員が心得ておくべきこと 村山聡
http://sharescafe.net/38576145-20140430.ht

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