自動車の自動運転技術が実現したらどのような世界が訪れるでしょうか?簡易的な技術でも、事故の防止に結び付きそうですし、幹線道路では坂道などを理由とした減速がもたらす交通渋滞も削減されそうです。 また、人が介在せずに完全な自動運転ができるようになれば、運転免許を高齢などの理由で返納した人や、もともと運転免許を持っていない人も自動車の恩恵を受けることができるようになります。そのため、近くにお店がないため中々買い物に出かけることができないような、いわゆる買い物難民の人たちの利便性も向上すると考えられます。 このように想像力に乏しい筆者でもワクワクするような未来を思い描くことができる技術が自動車の自動運転技術です。そして、一昔前では完全に夢物語のようなお話だったのですが、最近では自動車の自動運転技術が確立されたらどうなるかについて現実的に検討される段階にまで時代が進んできています。 経済産業省では有識者会議を開催し、自動運転技術が確立した際の、社会や産業への影響について検討しています。報道では 経済産業省は29日の有識者会議で、人が運転しなくても目的地にたどり着ける完全自動運転技術が確立した際、社会や産業にどんな影響が出るかを報告した。移動が一層自由になることで交通の便が悪い過疎地の活性化につながるほか、ハンドルから手を離した“ドライバー”を取り込む新たなビジネスも活発になりそうだ。ただ、運転関係の職種は失業が問題になるなど課題も浮き彫りになった。SankeiBiz 2016年3月30日 とされており、自動車の自動運転技術の確立がいよいよ現実味を帯びてきました。 ■雇用はすぐには失われない さて、このような自動車の自動運転技術ですが、上で挙げたような効果が期待できる反面、タクシーやバス、トラックの運転手さんといった自動車の運転が仕事となっている人たちの雇用が失われるといった事が危惧されます。 もちろん、いくら自動運転技術が確立したとしても、当初はそのような技術を搭載した車両は割高になるはずです。 確かに、革新的な技術をあえて安く販売して市場シェアを確保するといった戦略を自動車メーカー側がとる可能性も考えられます。 しかし、あえて安売りする企業が出るまでは、自動運転技術を確立した企業が数社あったとしても、価格は高めに設定するはずです。その結果、当面はコスト面で人間が運転するほうが優位になると考えられます。 そのため、技術が確立された段階ですぐに雇用が激減するといった事は発生しないと考えられます。しかし、徐々にコスト面で自動運転技術が搭載された自動車のほうが、人が運転するよりも優位となってくると考えられるので、将来的には雇用が失われていくことにはなると思います。 ■新たなビジネスチャンスも生まれる このような技術革新が発生すると既存の中小企業は一般に不利だと考えられています。確かに、自動運転技術が確立されたとしても、設備投資を行ったり、その自動運転技術を用いた新しい商売を構築するための経営資源が不足しているケースも多いと考えられます。 このように、どんなに素晴らしい技術であっても、その技術を活用するだけの経営資源がなければその恩恵を被ることはできません。 そのため、一般的に経営資源が乏しいといわれている中小企業は技術革新の恩恵を被りにくいのです。 しかし、新たな技術が生まれるところには新たなビジネスも生まれます。例えば、報道されていた自動走行ビジネス検討会では 夜間長距離輸送等において、後続車両無人の 3 台以上の隊列走行を実現する。 経済産業省 といった今後の取組方針の概要を報告しています。このケースでは後続車両は無人で隊列走行をすると報告されています。『後続車両は』とあえて言われているので裏を返せば、先頭車両は依然として有人で走行させる事となります。 それではこの有人の先頭車両をある一定区間だけ運転するといったビジネスはどうでしょうか?その区間はサービス提供会社が、多量の荷物を運搬する隊列の先頭を走ってくれるようなサービスです。 依頼する側にとってはわざわざ自社の運転手さんが長距離を往復する必要がなくなります。そのため、運行管理、労働時間管理が楽になるはずですよね。すると、後はコスト次第ですが、依頼してもいいと考える企業が出てくるはずです。 また、自動運転技術が完全に確立されたとしても、精度の高い自動運転を行うためには正確な地図が必要になるでしょうし、道の管理もより大切になるはずです。(倒木とか、落石があれば『人』が適切に管理する必要があるはずです) こういった仕事は依然として人間が行う必要があると考えられますので、関連業種の需要はむしろ大きくなるかもしれません。 さらに、完全な自動運転技術が確立された場合、買い物弱者対策につながると期待されていますが、買い物に出かけられなかった人が買いものに行けるようになったとしても、その人たちが欲しがるものを売る魅力的なお店がなければあまり意味がありません。 そのため、従来はお客様になっていなかったような人たちをターゲットとした商売も誕生するでしょう。 ■経営環境は変化する 自動運転技術が確立されると経営環境は大きく変わります。しかし、経営環境は変化し続けるのが当たり前で、企業はそれに都度対応していく必要があります。 特に、中小企業は経営資源に余裕がないケースが多いため、競争環境が悪化してきている環境にしがみつこうと考えると、ジリ貧になりがちです。 しかし、このような大きな変化が予想される場合、新しいビジネスチャンスを探そうと意識していれば大きなチャンスをつかむことができるかもしれません。 環境が変化するのはある意味必然です。しかし、その変化をプラスにできるか、マイナスにしてしまうかは工夫の余地があると考えられるのです。 【参考記事】 ■当事者が誰も得をしないオワハラ行為を今すぐ止めるべき理由(岡崎よしひろ 中小企業診断士) http://sharescafe.net/44683992-20150511.html ■キングジムの型破り開発術を中小企業が単純にマネしてはいけない理由(岡崎よしひろ 中小企業診断士) http://sharescafe.net/44623331-20150507.html ■もう起業貧乏にはならない!専門家のアドバイスを『タダ』で利用し起業する方法(岡崎よしひろ 中小企業診断士) http://sharescafe.net/42751168-20150106.html ■耳触りの良い『軽減税率』導入に伴うコストはだれが負担するのですか?(岡崎よしひろ 中小企業診断士) http://sharescafe.net/39890391-20140717.html ■お店を経営している人も生活者ですよね?消費税をめぐる報道を考える 岡崎よしひろ http://sharescafe.net/38555851-20140430.html 岡崎よしひろ 中小企業診断士 シェアーズカフェ・オンラインからのお知らせ ■シェアーズカフェ・オンラインは2014年から国内最大のポータルサイト・Yahoo!ニュースに掲載記事を配信しています ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家の書き手を募集しています。 ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家向けに執筆指導を行っています。 ■シェアーズカフェ・オンラインを運営するシェアーズカフェは住宅・保険・投資・家計管理・年金など、個人向けの相談・レッスンを提供しています。編集長で「保険を売らないFP」の中嶋が対応します。 |