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当社がベトナムで設立された2年前と比較すると、ベトナムの「消費者市場」をターゲットに進出する企業が格段と増えたような気がします。アジアの中でも経済の成長率が高いことや、極めて親日な国民性、タイ、シンガポール等と比較した際の競争の少なさ等の要素から「次はベトナム」と考える経営者の方々が増えているように思います。

確かにビジネスの潜在性を誇るベトナムですが、ベトナム消費市場を考えたときに最も大きな課題の一つが「どこで売るのか」というチャネルの問題です。

■60万を超える圧倒的なパパママショップ(伝統小売店)
ベトナムのチャネルの最も特徴的な点は、伝統小売店(所謂パパママショップ)の多さでしょう。ベトナムでは伝統小売店(所謂パパママショップ)が60万以上を占め、全体の売り上げの75%はこれらのチャネルからと言われています。コンビニが増えてきているとはいえ、コンビニ・スーパーの合計店舗数が1000店舗に満たないことを考えると如何に、圧倒的かお分かりになると思います。何しろ数が多いため、非効率な営業努力が必要とされるため利益率は高くありません。これから進出してくる企業がこのチャネルを開拓するのは至難の技だと思います。実際このチャネルで成功しているのは、古くからベトナム市場に進出している大手企業ばかりです。

■商条件の厳しいEC、大手小売
一方で、スーパーやショッピングモール等の近代小売はその数を増やしています。ロッテマートは2020年までに60店舗、ローカル食料品スーパーチェーンのVinmartなどは2016年末までに200店舗を展開する予定になっています。一方で、これらの大手小売店が要求する高額なマージンについての話題が最近ベトナム国内でも話題になっていたのですが、初期導入時の費用からマージンまで小売側の要求は厳しく、楽な販売は望めません。これはベトナムで急速に伸びてきているECも同様で、大手ECサイトは、ほぼ「場所貸し」のようなビジネスになっており、多くの供託金を支払わないと商品がフィーチャーされることはなく、また如何に頻繁に特化で商品をプロモーションできるかが売り上げを左右するようになっています。

■人が来ないセレクトショップ
美容や健康関連商品に多いのですが、特に付加価値商品になると、富裕層へのアプローチを狙って一等地に自社でセレクトショップなどを展開するケースも多く見られます。しかしながら、利益をあげているお店は本当にごく僅かです。例えば、都市部のデパートで20㎡ほどの店舗を開いても、売り上げは月額で数十万円というような話も珍しくありません。ベトナムでショッピングモールに出向くと、人の数は多いので実際盛り上がっているように見えるのですが、食品・ゲームセンター・映画館以外は閑散としており、店舗の販売員が暇そうにスマホをいじっている姿が日常化しています。

■ベトナム富裕層はどこで商品を購入するのか
ベトナムにも絶対数はタイやインドネシアに劣りますが、多くのお金持ちがいます。それでは、ベトナムの人々はどこで商品を購入しているのでしょうか?

これらの富裕層が、美容・健康などの付加価値商品やスマホなどの高価格の商品を購入するのはベトナム国外である場合が非常に多いです。これは国内で購入すると価格が高いという事もありますが(化粧品などは概ね50%〜2倍ほど価格が高い場合が一般です)、それ以上に大きいのは、ベトナム国内で販売されている商品に対しての「品質への疑い」でしょう。「ベトナムのデパートで売られているシャネルの香水は中を詰め替えているだけだ」とか、一流ブランドの国内ショップを指し「あそこの店の商品は中国製の偽物だ」という疑念を持つ人は決して少数派ではありません。高額な商品だからこそ、信頼できる場所で購入したいという思いは非常に強く、彼らにはそれを実現するだけのネットワーク及び収入があります。海外旅行から戻って来るベトナム人は、もの凄い数の海外お土産品を購入して戻ってきます。例えば、2014年における訪日ベトナム人の買い物代は7万5164円でこれは中国に次ぐ金額です。

■トップ10%の富裕層にリーチできる方法を探る
日系企業がベトナム消費者をターゲットとして進出する場合、その殆どは「品質は優れているが、現状市販の商品よりはちょっと高めの商品」であることが多いと思います。一方で、ベトナムでは世帯収入$1000ドルを超えるのは10%強と言われており、そのパイは決して大きくありません。

この収入層にリーチできるかどうかが、ベトナムビジネス成功の大きな可能性につながります。既存の販売チャネルでは、残念ながらこの層へのリーチはまだ大きく開かれていないように思えます。一方で、ベトナムの富裕層同士の繋がりは強く、「友達から推薦された」という理由で商品の購入に至るケースは非常に多いです(そういった背景もありネットワークビジネスはベトナムでは流行っています)。まだ成功例はそれほど多くないのですが、この「口コミ」の並を如何に作っていくかが、鍵になってくると思います。

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黒川賢吾 株式会社Asia Plus CEO

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