就職内定率は6年ぶりの水準に! 企業法務で雇用拡大は可能か?


大学の就職責任者として、日頃から学生に伝えているメッセージを記しています。前々回前回に続き、今回は3回シリーズの最終回です。

■志望動機は手間を惜しまずに
履歴書の志望動機欄は、当然ながら、その会社を第一志望としているという前提で、当社に入社したいという熱意が伝わるように書く必要がある。そのためには、各社についてよく調べ、面接官が読んでも不自然だと思われないような理由を各社について考える必要がある。

なぜその業界を選んだのか、その業界の中でその会社を選んだのはなぜか、自分の得意なことがその会社で活かせると考えた理由、などを記せれば、説得力は増すであろう。これは手間のかかる作業である。何十社も受けるとなると、その作業を何十回も繰り返すわけであるが、手間を惜しまずに真剣に取り組む必要がある。

その会社に勤めている人に会ったことがあれば、「○○さんが活き活きと働いておられるのを見て、自分もこんな会社に入れたらと思うようになったからです」と記せば説得力が増すであろう。会社説明会を聞いて、あるいはリクルーターの人の話を聞いて、という事でもよいであろう。しかし、それが無理ならば、会社のホームページなどを充分に研究して書くべきである。

問題は、第一志望でなく、たいして熱意も感じていない「滑り止め」の企業に提出する履歴書に自分の熱意を示すような志望動機を書くことを如何に考えるかということである。これについては、「本音と建前の使い分け」というものを学ぶ、良いチャンスだと考えるようにしたいものである。

嘘をつけと言っているのではない。大人の世界では、「本音と建前の使い分け」「見て見ぬふりをする」といったことが重要になる場面が多数ある。就職を機に、そうした大人の世界の暗黙のルールを学ぶようにすべきだということである。

面接官にバレたとしても、「この学生は本音と建て前の使い分けがわかっているから、サラリーマンとして使えそうだ」と好意的に解釈してくれると期待しよう。少なくとも、「御社は第二志望です」と答えるような「バカ正直」な学生よりは高い評価になると信じよう。

■面接の練習も怠りなく
面接の練習は重要である。スーツを着て大人の人に面接の練習をしてもらおう。緊張する経験だけでも、馴れるという意味で大きな価値がある。大人の人に何回も頼むわけに行かない場合には、友人と交互に面接官の役をやることも大切である。その際、「他には?」「それで?」といった質問を何回か繰り返してもらうと、厳しい練習として自分を鍛えることが出来るであろう。

自分が面接官からどのように見られているかを認識することも重要である。スマホの録画機能で自分を撮影してみよう。きっと、自分では気付いていなかった欠点が数多く見つかるはずである。

■諦めずに受け続けるべし
就活準備で重要な事は数多いが、実際の就活が始まったら、最も重要なことは、諦めないことである。就職活動は、決して楽しいものではなく、自分との闘いである。それが、君の生涯所得を押し上げると同時に、君を一回り大きな人間に成長させるのだ。

就職活動で最も辛いのは、落ちても落ちても投げ出してはならず、受け続ける必要があることである。そのためには、落ちても落ち込まない事である。「不合格通知が続いたので落ち込みました。一週間だけ就活を休みます」という学生は多いが、それを許したら、就活を再開せずに不幸な人生を歩む可能性が高い。よほど意思の強い人は別だが、人間とはそういう物なのだ。

不採用通知は、君がダメな人間だという意味ではなく、君と会社の相性が悪いというだけの意味である。ならば、落ち込む必要はない。相性の良い会社と巡り合うまで、受け続けることである。

筆者が受験生だった頃、「人間は忘れる動物である。忘れる以上に覚える事である」と言われたものだが、それに似せて言えば、「就活生は落ちる動物である。落ちる以上に受けることである」となろうか。

そもそも、受かると思って受けるから、落ちた時にがっかりするのだ。宝くじが外れてもがっかりする人はいないのだから、受かると思わずに受けることである。「就活は滅多に受からないが、100社も受ければどこかは受かるだろう」と気楽に考えよう。そうすれば、20社や30社くらい落ちても何とも思わないはずだ。いつか相性の良い会社に出会う事を信じよう。君の健闘を祈る。

■明るい未来を夢見て頑張ろう
就活で苦しい時には、就活後に待っている明るい未来のことを考えよう。まずは残りの学生生活。卒論等、勉強ももちろん重要だが、何と言っても自由だ。思いきり遊んでおこう。決して「退屈だからゲームでもするか」などと思ってはいけない。ゲームをするなら、「自由なのだから、思いきりゲームを楽しもう」と考えることだ。

学生時代に、卒業旅行にも行っておきたい。学生時代は「金は無いけどヒマはある」から、暇を金に換える手段としてアルバイトをするが、サラリーマンになると「金はあるけどヒマは無い」、ということになる。特に、長期の休みは無いので、学生の間に是非、海外旅行に行っておきたい。海外旅行は、楽しいだけではなく、君たちの視野を広げることに役立つ。少し大げさに言えば、発想を柔軟にしてくれるかもしれない。

君たちが自分で変化に気付くか否かわからないが、就活の修羅場を乗り切ったことで、君たちを一回りも二回りも成長しているはずだ。それにより、君たちが世間の荒波を乗り越えていく力強さを手に入れたとすれば、それも素晴らしいことだ。

さて、卒業してサラリーマンになると辛い日々が待っていると思っている学生も多いであろうが、気の持ちようである。卒業すると、君たちは、いよいよ自分で金を稼ぐサラリーマンだ。やっと自立して一人前の大人として扱われるようになるのだ。働いて誰かの役に立つというのは素晴らしいことだ。「世の中が自分を必要としている」ということを実感しよう。それに気づいていない大人も多いけれど、それに気づくことができれば、その喜びは、想像以上に大きなものだ。

そして何よりも、サラリーマンとして安定して給料がもらえるという事は、素晴らしいことだ。それは君たちが、辛い就職活動を立派に乗り越えて勝ち取った身分なのだ。おめでとう!


【参考記事】
■大学教授が教える、本当に役に立つ就活テクニック(塚崎公義)
http://sharescafe.net/48796600-20160609.html
■大学生は就活にどう備えるべきか?(塚崎公義)
http://sharescafe.net/48798268-20160613.html
■銀行という職場の体験記(1)(塚崎公義)
http://ameblo.jp/kimiyoshi-tsukasaki/entry-12149636451.html
■経済情報の捉え方(塚崎公義)
http://ameblo.jp/kimiyoshi-tsukasaki/entry-12149245775.html
■内定、内々定とオワハラの関係とは?(リーガルネット)
http://sharescafe.net/47623940-20160127.html

筆者が大学の就職責任者として普段から学生たちに伝えていることのシリーズは今回で終了です。

塚崎公義 久留米大学商学部教授(兼就職部長)

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