就職内定率は6年ぶりの水準に! 企業法務で雇用拡大は可能か?


大学の就職責任者として、保護者向けの就職説明会で話をしました。今回は、その内容をお伝えします。

■就職活動は昔と様変わり
就職活動は、多くの学生さんにとって、過去22年で最大の試練です。これを乗り越えることによって、生涯所得が大きく増えるわけで、就活中の学生さんは、極めて重要な分岐点に立っているわけです。

まず、就職活動が昔と全く異なることを、しっかり認識して下さい。就活の期間が長いということは、学生が多くの企業を受けるということになります。ということは、企業からすると多くの学生が受けに来ます。企業にとっても学生にとっても、負担は昔と比べ物にならないほど大きいのです。

学生は、企業ごとに色々調べて「志望動機」を書かなければなりません。面接も、何回も行われます。それを数十社で行うのは、時間的にも体力的にも大変辛いことです。そして、それ以上に辛いのが、次から次から不合格通知が来ることによる精神的な苦痛です。各企業が定員の何十倍の学生を相手にしますから、当然倍率が高く、不合格の学生が多く出るのです。

私の就職活動は、大学4年生の10月1日解禁で、数日で一流企業は決着がつき、それに落ちた学生も多くは10月前半には就職活動を終えていました。バブル期の学生は更に楽だったとも言われています。今日おいでの保護者の皆さまの中にも、そうした経験をお持ちの方が多いでしょう。

そうだとすると、ご自分の経験に基づくアドバイスや叱咤激励は、学生さんにとって逆効果になりかねません。まずは、御自分の経験の事は忘れていただき、まずは御子息が大変な試練の真っただ中にいるのだという事を充分に認識して頂きたいと思います。それと共に、試練を潜り抜けた学生さんは、一回りも二回りも大きく成長されますから、それを楽しみにしていて頂ければと思います。

■学生へのメッセージを御紹介
私が普段、学生に送っているメッセージを御紹介します。まずは1年生から3年生に向けてのメッセージです。(1)単位をとること。4年生になったら講義に出ずに就職活動に専念できるよう、4年分の勉強を3年間で終えるように。(2)貯金をすること。就活に金がかかるだけでなく、就活期間中はアルバイトをせずに就職活動に専念しても飢え死にをしないように準備が必要。(3)充実した学生生活を送る事。就活で「学生時代、特に何もしていませんでした」と答えると、ネクラだと思われて大減点。

4年生に対しては、(1)「数打てば当たる」を信じて、とにかく数多く受けること。(2)落ちても落ち込まずに受け続けること。不合格はダメだということではなく、会社との相性が悪かったという事なので、落ち込む必要なし。50社続けて落ちたら慰めてあげるから、それまでは泣き言を言わずに頑張って!

自分の人生観に基づいて受験先を決めること。世の中の役に立ちたい、親の家から通える会社が良い、とにかく高い給料が欲しい、といった自分の希望条件について冷静に考えてみて、その条件を満たしそうな会社を多数受けてみること。夢を追うのは良いが、就活が苦しいが故の現実逃避になっていないか要チェック。

非公式情報(インターネットに載っていない情報)が重要。社風などに加え、面接で何を聞かれたか、等々。そうした情報を得られる人脈が重要。情報はギブアンドテイクなので、自分も提供できる情報を持つように努力すること。

■就活に失敗する学生にはパターンあり
就活に失敗する学生には、いくつかのパターンがあります。一つ目は、危機感が薄い場合です。「何とかなるだろう」と思って就活を真剣に行わず、結果として何ともならなかった、というケースです。夏休みの宿題について「何とかなるさ」と思っている小学生は多いのですが、結局最終日に泣きながら徹夜をする、というパターンです。

二つ目は反対に、頑張りすぎて疲れてしまい、不合格通知が続くと心が折れてしまう、というパターンです。真面目に取り組んでいるだけに、可哀想な気もしますが、「しばらく休んだ方が良い」などとアドバイスすると、そのまま立ち上がれなくなってしまう場合もあるので、要注意です。

今一つは、大人との会話に不慣れな学生です。これについては、普段から大人と話す練習をしておく事が必要でしょう。親でも先生でも友達の親でもアルバイト先の大人でも、とにかく大人と話す回数を増やす努力が大切ですね。

■保護者は一歩下がって伴走する
さて、保護者と就活生の関係ですが、これは個々の家庭の状況にもよりますので、一概には言えませんが、一般論としては、一歩下がって伴走する、というイメージが好ましいように思われます。

無関心でもいけませんが、余り口を出し過ぎるのも、鬱陶しいと思われてしまいます。基本的に本人の力で走るわけですが、辛い時や迷った時に後ろを振り向けば慰めてくれたり相談に乗ってくれたりする人がいる、という安心感があるだけで、だいぶ落ち着くでしょうし、ストレスも軽減されるでしょう。

「頑張ってね。一歩下がって伴走しながら見守って応援しているから」と言うのは簡単ですが、御子息が試練に耐えているのを黙って見ているというのも、結構大変かも知れません。保護者の方にとっても、結構な試練かも知れませんが、お子様が大きく成長されるプロセスですから、しっかり見守ってあげて頂ければと思います。


【参考記事】
■就活の手を抜くと、過去の自分を恨んで生きる事になる(塚崎公義)
http://sharescafe.net/48827988-20160614.html
■銀行という職場の体験記(1)(塚崎公義)
http://ameblo.jp/kimiyoshi-tsukasaki/entry-12149636451.html
■大学教授が教える、本当に役に立つ就活テクニック(塚崎公義)
http://sharescafe.net/48796600-20160609.html
■大学生は就活にどう備えるべきか?(塚崎公義)
http://sharescafe.net/48798268-20160613.html
■就活は企業との相性だから、落ちる以上に受けるべし(塚崎公義)
http://sharescafe.net/48827663-20160613.html

塚崎公義 久留米大学商学部教授

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