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舛添氏の一連の政治資金の使用用途を巡る疑惑は、舛添氏が東京都知事を辞職することで幕を閉じました。今後、世論の関心は7月14日に告示される東京都知事選に移っていくことになるのでしょう。

政治資金の使用用途に関する疑惑については、まず週刊誌が疑惑を報じ、他のメディアが追随、ネットで拡散されることで、騒ぎの度合いにもよりますが、政治家が職を辞任して事態を収めるという流れが確立された感があります。

■疑惑を追及してもしなくても税金は無駄に使われる
政治資金の原資は税金ですから、適切な政治活動に使用されなければならず、疑わしい使用用途については追求すべきです。

その一方で、ひとたび疑惑が発覚すると、議会は疑惑追及のために、本来議論すべき政策課題にかけるべき時間を削ることになります。また今回の舛添氏のように渦中の政治家が職を辞職することになれば、選挙を実施する費用もかかることになります。

これらの費用も税金から支出されるため、政治資金の使用用途疑惑が発覚した場合、追求しなければ不適切に利用した可能性のある政治家を野放しにすることになり、追求すれば、追求のためにかかった費用は本来の使うべき用途から外れた使い方になるという、どちらにしても、国民にメリットが少ない状況となってしまいます。

こうした状況を作らないために適切な使用を推進するべく定められた法律が政治資金規正法であるはずですが、政治資金収支報告書の提出の義務付けと報告書の公開のみにとどまっているのが現状です。今回の疑惑の結果を受けても、特に改正すべきという議論はなされていないようです。

■一部のマスコミにキャスティングボードを握られている現状
舛添氏の疑惑は、週刊文春が報じましたが、3ヶ月ほど前の民進党政調会長の山尾志桜里議員のガソリン代が異常な額だと紙面に掲載したのは週刊新潮でした。

山尾議員が民進党の政調会長に就任した直後の報道ということもあり、さまざまなメディアで取り上げられ、山尾議員は説明に追われました。

ただし、このガソリン代が記載されている収支報告書は2012年のもので、報道の4年も前です。このことから週刊新潮は疑惑をいつ把握したかは不明ですが、山尾議員の認知度が上がった最も話題になる時期を見計らって、報道したと推測されます。少し古くなりますが小渕優子議員が経済産業大臣に任命された直後に、小渕議員の政治資金規正法違反が報道され、就任1ヶ月余りで大臣を辞任した件についても同様の思惑が働いていたのでしょう。

政治を監視するというメディアの役割を週刊誌は果たしているとも言えますが、報道のタイミングを企業として自らの利益を最大化するタイミングを週刊誌が自由に決められる状態は決して最善とは言えないでしょう。

なぜなら疑惑が本当であれば、報道されるまで我々の税金が不適切な目的で使用され続けられるからです。

■収支報告書がPDF形式公開されていることがチェックの敷居を高くしている
さてこのような状態である原因の一端は、Webで公開されている政治資金収支報告書のデータ形式がPDF形式であることではないかと筆者は考えます。

PDF形式は閲覧することは可能ですが、加工することができないファイル形式です。すなわち一般の人が収支報告書に不適切な箇所がないかチェックしようとした場合、支出項目を集計するために目で追って、電卓で計算する必要があります。ところが前述の山尾議員の政治資金収支報告書は現在掲載されている平成24年分で30Pあり、記載されている項目をすべて電卓で計算するには、かなりの労力がかかります。週刊誌のように自らの利益に直結するのであれば、仕事として労力をかけられるのでしょうが、一般の人は、そこまでの労力はかけられないでしょう。

では、もし政治資金収支報告書がExcel形式で公開されていたら、どうでしょう?

Excelはご存知のとおりデータの集計や分析が簡単にできるソフトでビジネスにおいて必須であり、多くのユーザがいます。政治資金収支報告書がExcel形式であれば、Excelにそこそこ詳しい方であれば、支出項目を集計し、疑わしい支出項目がないかチェックするのに、1時間もかからないでしょう。データ分析のスキルを持っている方であれば、すべての議員の政治資金収支報告書を一元化し、疑わしい支出項目を一覧化することもさほど難しいことではありません。さらにWebに詳しい方であれば、疑わしい項目が発見された議員の一覧を、公開することも容易です。メディアの報道を待つことなく、政治家の疑わしい支出に関して、我々が容易にチェックすることが可能になります。

このようにExcelで政治資金収支報告書を公開されれば、選挙で政治家を選んだ我々自身が政治資金の使い方について、常に目を光らせることができるため、政治家も政治資金の使い方に今以上に適切に使用するように、注意を払うようになるのではないでしょうか?

政治資金規正法第四章 報告書の公開の条文を見る限り、政治資金収支報告書の公開ファイル形式は定められていないため、法律を改正することなくファイル形式の変更は可能です

一部のメディアの都合に振り回されることなく、我々一般人が容易に政治資金の使用用途をチェックできるようにするためにも、総務省、および各地方自治体には、政治資金収支報告書のExcel形式での公開を強く望みます。

《参考記事》
■新入社員のうちに覚えておきたい!仮説思考の重要性と重病性(村山聡 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/44386900-20150421.html
■企業任せでは済まされない?女性活用が進まない理由をデータで考える(村山聡 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/43516534-20150224.html
■あなたの会社にもいるかもしれない?ビジネスメソッドマニアに気をつけろ!(村山聡 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/40838018-20140914.html
■平均値をウソつき呼ばわりするのは、もうそろそろ終わりにしよう。(村山聡 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/39363307-20140614.html
■「飲み会は残業代出ますか?」と聞く前に新入社員が心得ておくべきこと(村山聡 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/38576145-20140430.ht

村山聡 中小企業診断士

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