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7月を迎えいよいよ2017卒就活は終盤に入りました。内定(内々定)獲得した学生はさらに増えていきます。しかし一方、現在もまだ内定先がないという学生も当然おり、時間とともに焦りが高まる時期でもあります。こんな環境下でも戦略的に就活を実行することが欠かせません。今、そこにある危機への対応です。

■2017卒内定状況は?
時事通信の内定率速報によれば、6月末での内定率は70%を超えたとのこと。やはり6月の採用活動解禁で一気に内々定が発せられています。

しっかりと準備をして臨んだ学生、優秀な学生からはすでに複数内々定を得たとの報告を得ています。また採用側である企業も、大手を中心にほぼ予定採用の見通しが立ったというところが少なくありません。名の通った大企業では比較的順調に採用が進んでいる傾向を感じます。

一方手持ち応募先が全滅してしまったり、さまざまな事情で出遅れ、まだ内々定どころかESも提出できていないという人もいます。採用側も、大手であってもB2B系メーカーや規模の大きくないIT系など、まだまだ充足できていない企業もあります。今回の「就活時期変更」は学生にも企業にも大きな影響がありました。ただ、今起こっている出遅れてしまった学生の存在やいまだ採用目標未充足企業の存在などは、今年に限った問題ではなく、これまでも毎年必ず発生しているものでもあるのです。


■今起きている危機への対応
就活でのタイムマネジメント、スケジューリングは致命的に重要ですが、それを今悔いたところで先に進む訳ではありません。まずは一歩でも前に進むことを考えましょう。出遅れたことでメンタルをやられ、ますます活動ができなくなってしまう事態こそ、最悪の最悪と呼べます。今必要なことは危機対応です。パニックを避け、できることにご自分の能力とリソースを集中させましょう。

災害など危機対応の行動規範として、「プロアクティブの原則」があります。疑わしい時は最悪の事態を想定して行動し、その行動の結果、空振りだったことは許されます。しかし行動を躊躇して人命を失うこと(大失敗)は許されないという考え方です。単なる精神論も、不要な悲観論も危機対応では役立ちません。

この原則が示唆することは今なすべき行動様式です。絶望し動きを止めてしまうという最悪の事態を回避し、どれだけ困った状況でもできることを実行するのです。自分の見栄や世間体、精神論はこの際無視して、目の前にある課題に取り組みましょう。危機管理の原則を取り入れ、今からできることを考えましょう。


■今できること
壊滅的な災害であっても、プロアクティブな、先を見越した行動を取ることが、危機を生き延びる上で欠かせません。「今できること」「今なすべきこと」と、「今すべきでないこと」を区別することが先決です。何が起こっているのか、今一度冷静に仕分けするのです。

ESが通らない?ESは通っても面接で落ちる?落ちた企業は大企業?有名・人気企業?面接の出来不出来は?説明会やOBOGとの会話記録は???

危機の場面で完璧な精度は不要です。自分の記憶だよりで良いので行動を振り返り、できれば文字にするという作業を行うことは、かなりのクールダウンが期待できます。漠然とした不安や焦りは「漠然」としていることが大きなプレッシャーになっているのです。文字に起こすという明確化は、ダイレクトに有効といえます。

困った時に自然に冷静になれる人はいません。パニくるのが当然なのです。そこを否定するのではなく、パニくっているのだからどうすればクールダウンできるかと考えるべきなのです。


■就活の原点
あまりにも情報があふれかえっている現在の就職活動ですが、その根本原理は至ってシンプルです。それは需要と供給のマッチングです。社員を雇いたいという採用企業に、社員として働きたい学生が採用されるかされないか、2つに1つしか結果はありません。この原則が満たされれば、最短数日で採用は決まります。過去にいくらでも例があります。

「自己分析が足りない」とか「企業研究」とかいえる状況はすでに終わっています。行動あるのみ、すなわち今できることは応募することに尽きます。就活ナビサイトを見れば、今現在も募集している企業がたくさん並んでいます。もちろんそこに学生ならだれもが憧れる超有名企業、超大企業、とんでもない高報酬企業は見当たらないかも知れません。それが今できる選択なのです。

聞いたこともない会社なので応募しないという決断は、もはや就活をあきらめるということに等しく、秋採用、二次三次募集を狙うことも含めて、行動先送りはプロアクティブ(先を見る姿勢)ではありません。

疑わしいときには行動するのです。その会社が有名でないからと言って、ご自分に合わないかどうかは、直接会ったりして調べなければわかりません。最悪事態を想定するなら、秋採用や二次三次募集が無くなる事態も想定しなければならないのです。応募しても空振りは当然あり得ますが、危機において見逃してはならないのです。


■現実的応募先が最優先
この期に及び、まだ自分の天職とか自分の最高のマッチングのような幻想にとらわれているとしたら、この危機は抜けられません。天職やベストマッチなど、人生を終える時、つまりは臨終の瞬間までわかる訳がありません。会社の知名度や人気ランキング順位、初任給の高さによる会社の優位性など、単なるイメージであって、誰もが憧れる超有名企業に入って3ヵ月で退職してしまった一流大学生を知っていますが、その人の履歴には一生「3ヵ月で退職」が残ってしまいます。

当然応募受付中である企業の中で、自分の専門性や得意領域になるべく合いそうな企業、ITやサービスなど採用枠がある程度あり、大企業本体よりそのグループ企業など、B2B企業中心に、現実感のある企業が中心になります。

また今から出すESで、これまで全く書いたことのないような様式や設問だらけだったり、準備に相当な時間を要しそうな設問があるのもやはりパス。コピペは論外ですが、基本的な志望動機や自己PRの骨格が共有できるESであることも大事です。

どうしても大企業や人気企業が今でも募集を締め切っていない場合、目が行ってしまうことでしょうが、上記の条件を満たし、特別過重な準備が不要ならば応募は問題ありません。ダメなのは、有名企業だから完全オリジナルな、今からゼロベースで対応しなければならないESを課すような先は、今は避けるべきだということです。

時間とエネルギーは有限です。限りあるリソースを投下して結果を回収できるかどうか、今、正に正念場です。3月末に内定し、4月から入社した人もいます。焦ってもやることはやる。ぜひ危機対応の原則で、事態を乗り切って下さい。


【参考記事】
■就活で傷つく若者たち
http://shachosan.rm-london.com/?eid=656497
■理系人間のコミュニケーション技術上達法
http://shachosan.rm-london.com/?eid=663312
■サイレントお祈りに打ち克つには (増沢隆太 人事コンサルタント)
http://sharescafe.net/48729558-20160531.html
■「石の上にも三年」の真の意味(増沢隆太 人事コンサルタント)
http://sharescafe.net/47148491-20151209.html
■内定辞退の作法(増沢隆太 人事コンサルタント)
http://sharescafe.net/46036751-20150826.html

増沢隆太 人事コンサルタント 株式会社RMロンドンパートナーズ代表取締役

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