第20弾用写真

平成28年1月に一部メンバーの独立騒動が起き、その後は落ち着いたかに見えた人気グループSMAPは、平成28年12月31日をもって解散すると発表されました。驚きとともに、改めて、あの国民的アイドルグループが解散かと思うと、グループ活動の継続は本当に難しいと感じます。そこで、SMAPグループを介護現場のチームに置き換えてチームワークの大切さについて考えてみます。

■理念やビジョンはあるか?
SMAPの名前の由来は、諸説ありますが、よく知られている説はSports Music Assemble Peopleのそれぞれの頭文字をとって名付けられたという説です。直訳すれば、スポーツと音楽を目的に集められた人々となります。このように考えるとSMAPはその名前に理念が込められているといえます。それゆえ、メンバーはアイドル活動の枠にとらわれず、多方面で活躍できるように日々努力していたのではないでしょうか。

介護事業所でも理念が大切にされています。最近は理念経営と呼ばれています。経営者として自身の考える理念に沿って介護事業所を作り、その理念に共感してくれる職員を採用していくという経営方法です。例えば、認知症ケアに取り組む事業所やリハビリ強化に取り組む事業所を作ろうとしたときに、その理念に沿って教育が行われ、事業所にはそれらのサービスを必要とするご利用者がやってきます。

それをよしとしない職員を万が一にでも雇用した場合は、チームワークの障害となります。時には事業所閉鎖となるような事件・事故に発展することも否定できません。同志という言葉がありますが、志を同じくするメンバーとチームを組むことが、理念を実現させる近道となり、より良い介護サービスの提供の基本となります。

■SMAPは専門職の集まりと仮定したら
SMAPメンバーは、映画、ドラマなどで活躍し、テレビでは司会を務めるなどおのおのが独立した専門職と言えます。歌よりもMCとしての能力が高い、踊りよりも演技力が高いなど、SMAPメンバー間の能力は、平等ではなく、その専門性を磨いていったはずです。そして、メンバーが集結しグループとして最高のパフォーマンスを発揮してくれるのを私たちは期待していたはずです。

介護現場には、介護職、看護職、リハビリ職、ソーシャルワーカー、ケアマネジャーなど専門職が寄り集まっています。それぞれの専門職は、他の専門職を信頼し、力を合わせてチームで仕事にあたっています。SMAPと同じように日々専門性を磨き、集結した時に最高のパフォーマンスが発揮されます。

このたびのSMAPの解散理由は憶測の域を出ませんが、妬み、嫌み、不信感など足の引っ張りあいにより互いの活躍を尊重できない関係となっていたのではないでしょうか。そんなグループの状態ではパフォーマンスは最低です。せっかくのチームワークも1+1が1にもならなくなります。

介護現場も同じです。異なる専門領域を互いに近づけ合い、歩み寄る工夫が必要です。しかし、そうではない現場もあります。介護職と医療職がいがみあったり、現場のことをわかろうとしないソーシャルワーカーが現場をひっかきまわしたりとSMAP解散状態に匹敵する現場は少なくありません。

■プロ意識を持て
ご利用者の命を預かる介護事業所では、最高のパフォーマンスを発揮するのはプロとして当然です。ただし、ケアは1つの手段であり、職員の表情や言葉、しぐさなど、総合的なサービスが求められます。そのためには、確固たる理念が必要で、賛同した同志が集まり、互いの協力体制が不可欠です。

理念経営の話をすると鼻で笑う方がいらっしゃいます。理想で飯が食えたら苦労はしないという論理のようです。それでは、職員はどんな気持ちで仕事を続けているのでしょうか。お金のためでしょうか、所属欲を満たすためでしょうか。ただ単に欲を満たすための就業はどんなパフォーマンスを発揮するでしょうか。同じ待遇の職場が2つあったら、どちらに人が集まるのかは言わずもがなです。

SMAPメンバーがお金のために28年もの間あれほど大変な仕事を続けたとは思えません。ひとえにファンを喜ばせるためではないでしょうか。介護現場も同様です。ご利用者に喜んでいただくためには、小手先のサービスは見透かされます。心から共感できる理念、信頼できる仲間が揃って初めて、地に足が付いたサービスの提供が可能となります。

■介護事業所は選択される時代に
戦前、戦中時代生まれの方が介護サービスを受ける時代から、戦後生まれ、高度経済成長時代生まれの方が介護サービスを受ける時代に変わりつつあります。これらの世代の方は、自信があり、お金があり、知識もあり、経験もあり、時間もあります。

ケアマネジャーは、介護事業所を紹介してくれますが、今まででしたらその紹介通りとなっていたかもしれません、しかし、これからのご利用者は、紹介されたとおりに介護事業所を選ぶとは思えません。しっかりと介護事業所の理念やビジョン、職員のチームワークの状況、気配りの程度など判断された上で利用の決定を行うはずです。

SMAPの解散を単なるテレビの出来事ととらえず、自分自身の所属するチームのチームワークは機能しているかを検証してみてはいかがでしょうか。

【参考記事】
■介護保険はやっぱり保険ではなくなった(藤尾智之 税理士・介護福祉経営士)
http://sharescafe.net/48977075-20160701.html
■介護保険は保険でなはい 「親の介護は老人ホームにお願い」は甘い考え 介護保険を考える(1) (藤尾智之 税理士・介護福祉経営士)
http://sharescafe.net/35018841-20131120.html
■よくある選挙公約「介護施設を増やします」について真剣に考えてみた (藤尾智之 税理士・介護福祉経営士)
http://sharescafe.net/49098975-20160717.html
■介護が必要になった!どうする?(藤尾智之 税理士・介護福祉経営士)
http://sharescafe.net/49045000-20160709.html
■介護の問題を絶望にしない秘訣(藤尾智之 税理士・介護福祉経営士)
http://sharescafe.net/48944579-20160626.html

藤尾智之 税理士・介護福祉経営士

この執筆者の記事一覧

このエントリーをはてなブックマークに追加
シェアーズカフェ・オンラインからのお知らせ
シェアーズカフェ・オンラインは2014年から国内最大のポータルサイト・Yahoo!ニュースに掲載記事を配信しています
シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家の書き手を募集しています。
シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家向けに執筆指導を行っています。
シェアーズカフェ・オンラインを運営するシェアーズカフェは住宅・保険・投資・家計管理・年金など、個人向けの相談・レッスンを提供しています。編集長で「保険を売らないFP」の中嶋が対応します。