a1370_000413

「カプリコのあたま」といった商品が話題になっています。

その名のとおり、江崎グリコ社が販売しているカプリコの頭のチョコの部分だけをたくさん集めた商品です。注目度も高いようで、以下のように報道もされています。

江崎グリコは23日、チョコレート菓子「カプリコ」シリーズから、カプリコの上部のチョコ部分だけを商品化した『カプリコのあたま<いちご味>』の発売を始めた。

グリコによると、「カプリコ」は、昭和45(1970)年、「ワンハンドで食べるスポーティチョコ」というコンセプトのもと、ソフトクリームのような形状と、エアインチョコレートとコーンを組み合わせたチョコスナックとして発売された。
発売開始から46年…ついにあのカプリコの「あたま」だけ商品化 江崎グリコ 産経WEST 2016/8/23

このように注目度も高い「カプリコのあまた」という商品ですが、一見すると奇抜な商品のように思えます。なんといってもカプリコのあたまだけを集めた商品ですからね。

しかし、経営的にはとても手堅いところを狙っていると考えられるのです。

■お客様はすでに知っている?
この「カプリコのあたま」はその名のとおり、カプリコというロングセラーのお菓子が元となっています。

冒頭に引用した報道によると、カプリコは発売開始から46年もたっているロングセラーの商品です。そのため、一度はジャイアントカプリコなどのカプリコと名がつくお菓子を食べたことがある人も多いと思います。

そのため、一度食べたことがある人ならば、「ああ、あのカプリコのあたまの部分ね。」と何となく味の想像がつくと思います。

つまり、カプリコには既に大きな知名度があるため、消費者にゼロから商品について認知させるといった努力が必要ないのです。

このことは、通常の新商品の開発と比較すると大きな利点になると考えられます。知名度が高い既存商品の関連商品ならば、既に知られているといった、非常に有利な位置からスタートすることができるのです。

■すでにいるお客様に新商品を提供します
既に存在しているお客様に対して、新しい商品を投入していくというのは、事業の成長の方向性としては非常に手堅い方法になります。

既にお客様の嗜好を把握できているわけですから、そのお客様の嗜好にあった新製品を投入していくといった方法を採れば、よほど顧客の嗜好を読み間違ったりしなければ全く売れないといった大外れのリスクを少なくできます。

また前述のとおり、ゼロから顧客に対して認知を図っていくといった努力も必要ありません。

さらに、既存の顧客へ販売するわけですから、既に持っている流通チャネルについても活用することができます。

江崎グリコ社の場合は大手コンビニチェーンなどの販売チャネルがある他、オフィスグリコといった独自の販売チャネルをもっています。

そして、これらの販売チャネルを活用して「カプリコのあたま」といった商品を販売していくことが可能なのです。

どんなに優れた商品であっても、消費者の手に届かなければ売れることはないので、既に販売チャネルを持っているというのは非常に有利に働くのです。

■手堅い戦略を目新しく見せる
このように、「カプリコのあたま」は販売するといった視点からは手堅い商品開発を行っています。

しかも、この商品はロングセラー商品の関連商品なので話題性もあります。そのため、カプリコの頭だけを販売するといったコンセプトからもメディアにも取り上げられる可能性が高くなります。

「あのカプリコのあたまの部分だけを食べられます」などといった見出しになれば、報道としてもキャッチ―ですからね。

もちろん、メディアに取り上げてもらうために江崎グリコ社としてはニュースリリース等で広報の努力を行っています。同社のホームページを見ると以下のようなニュースリリースが掲示されていました。

江崎グリコ株式会社は、チョコレート菓子「カプリコ」シリーズから『カプリコのあたま<いちご味>』を2016年8月23日(火)から全国で新発売いたします。
江崎グリコHPより


このように、「カプリコのあたま」は販売するための仕掛けを積み重ねて出された商品だという事ができるのです。

商品開発に絶対はありません。しかし、一見するとコンセプト先行のの奇抜な商品に思えるようなものであっても、その裏には非常に考え抜かれた戦略が潜んでいるのです。

【参考記事】
■ひとたび沖縄にセブンイレブンが出店されたら、沖縄のコンビニ勢力図が変わるはずです(岡崎よしひろ 中小企業診断士)
http://okazakikeiei.com/2016/07/01/sebun/
■キングジムの型破り開発術を中小企業が単純にマネしてはいけない理由(岡崎よしひろ 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/44623331-20150507.html
■サイゼリヤが安いのは企業としての努力の結果であり、消費者もそれを理解しているから利用しているのです(岡崎よしひろ 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/49177306-20160727.html
■自動運転技術が確立されたとき、中小企業にとってチャンスが訪れます(岡崎よしひろ 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/48236024-20160331.html
■当事者が誰も得をしないオワハラ行為を今すぐ止めるべき理由(岡崎よしひろ 中小企業診断士)
http://okazakikeiei.com/2016/05/30/owa/

岡崎よしひろ 中小企業診断士

この執筆者の記事一覧

このエントリーをはてなブックマークに追加
シェアーズカフェ・オンラインからのお知らせ
シェアーズカフェ・オンラインは2014年から国内最大のポータルサイト・Yahoo!ニュースに掲載記事を配信しています
シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家の書き手を募集しています。
シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家向けに執筆指導を行っています。
シェアーズカフェ・オンラインを運営するシェアーズカフェは住宅・保険・投資・家計管理・年金など、個人向けの相談・レッスンを提供しています。編集長で「保険を売らないFP」の中嶋が対応します。