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■日本流”非グローバルスタンダード”

グローバルスタンダードという言葉が使われてしばらく経ちますが、日本で使われる”グローバルスタンダード”が厳密にいうと和製英語だと知る人は多くはないでしょう。毎日目にするテレビやニュースでもグローバルスタンダードという言葉は日本では頻出用語の一つですが、海外では技術規格、会計基準、法律を除いて使用されることはありません。

「グローバルスタンダード」のほかにも、リーマンショック(正確にはサブプライムショック)など、昨今ビジネスにおいて日本流”非グローバルスタンダード”で横文字を並べてしまうことが多々あります。仕事以外での誤使用などは許容範囲なのかもしれませんが、やはり海外での活躍を志している方々はこの点意識しておくべきことだと思います。というのも、ネイティブ・非ネイティブに限らず海外における共通語は(現時点では)英語であり、その言語内で使用される共通ワードを使うからコミュニケーションが可能になるからです。

■スーパーHigh Contextな日本

海外での仕事というのは常に緊張の連続です。英会話レッスンの外国人ように、自分の話をうなずいて同調してくれたり褒めてくれたりする相手ではありません。文化も言語も違う相手だったらなおさらハードルは高くなるでしょう。だからこそ相手に理解してもらうための「わかりやすい説明」を身につける必要があるわけです。ここでいう「わかりやすい説明」とは、相手にとって解釈に間違いがないくらいの説明という意味です。

ところが、日本流のコミュニケーションはHigh Context(文脈依存型)が基本で、人との関係や説明についても文脈から読み取る必要があるため外国人にとって正直「わかりにくい説明」になっています。言い換えると、聞き手や読み手に解釈を任せてしまう言語ともいえるでしょう。文言や発言について、発信者の立場を想像しながら、暗示する主張を感じ取ろうとする”技”が必要になってくるのです。

この日本的コミュニケーションをそのままスライドさせて、海外で使用することは避けるべきでしょう。日本人でさえも困難だと思われるこの”技”を海外相手でも通用すると思うこと自体無理があるからです。

■Becauseを使わずに静観する日本人

この世に存在するHigh Context文化国とLow Context(言語依存型)文化国の割合に関係なく、今後の海外コミュニケーション戦略としてLow Contextを意識することは重要です。ちなみに、Low Contextの代表としてはbecauseの使い方でしょう。

海外で仕事をしていると、日本人が話す英語と非ネイティブが話す英語には大きな違いがあることに気づきます。日本人はあまり説明のときにbecauseを頻繁に使わない一方で、非ネイティブ(特にヨーロッパ・インド系)はbecauseをしつこいくらいに使う傾向があります。彼らにとってbecauseは、すでに条件反射的になっているのでしょう。しかし、日本人にとっては「そんなことを説明しなくても。。。」と引き気味で静観してしまうのです。

■Low Contextを意識した教育

海外には日本人が知らないたくさんの異文化があります。それは価値観・宗教・信念など表に見えない部分が大半で、表面上ではなかなか判断ができないことが多いのです。だからこそ、求められるのがLow Contextなコミュニケーションであり、Low Contextを使うことが海外とのコミュニケーションを無難に進めることができるコアな要素になるわけです。しかし、残念ながら日本人の多くはその大切な要素を理解していないように感じます。

私は現在アメリカのマサチューセッツ大学大学院(MBA)にて教鞭をとっていますが、(英文での)アサインメント提出の際にはその課題ケースの背景を必ず書くように生徒に伝えています。この理由は、その読み手がどんな人なのかを想定した場合、面倒でも説明をしなければいけないLow Context流コミュニケーションを意識してほしいからです。特に私が教える生徒は、これからグローバルで活躍する予備軍が多いため、こういったグローバルビジネスシーンに合わせた授業は良い効果をもたらしてくれるのです。

Low Contextを意識した「わかりやすい説明」

これこそが今後のグローバル人材に求められる”技”なのだと思うのです。


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JB SAITO マサチューセッツ大学MBA講師

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