先月、イオンやユニクロがアメリカの年末商戦イベントである「ブラックフライデー」を導入して話題になりました。政府も2017年2月より毎月最終金曜日を「プレミアムフライデー」と称し、企業に仕事を午後3時を目処に切り上げるように働きかけることで消費を促す試みを始めようとしており、このところ消費拡大を狙った新たな施策が矢継ぎ早に出てきている印象を受けます。 一方で、消費拡大イベントとして最も成功したイベントは、年中行事として定着したクリスマスでしょう。 ■クリスマスケーキは何日に購入される? クリスマスの過ごし方は、人によってさまざまでしょうが、外出せず、家でクリスマスケーキを食べる家庭も多いでしょう。そこで、総務省統計局が毎月実施している「家計調査」からクリマスのケーキの購入状況を調べてみることにしましょう。 まず、クリスマスケーキは何日頃、購入されるのでしょうか。2015年12月の家計調査結果から1世帯あたりの日別のケーキに対する支出額をみてみることにしましょう。(調査対象は二人以上の世帯) 日 購入金額(円/1世帯平均) 12/18 26.70 12/19 43.73 12/20 26.56 12/21 23.32 12/22 37.74 12/23 146.08 12/24 366.89 12/25 154.92 12/26 19.56 12/27 13.98 12月23日から12月25日の間の購入金額は他の日と比較して突出しており、この3日間はクリスマスケーキが購入されているとみてよいでしょう。なかでも24日は23日、25日と比較して倍以上、金額に差があり、日持ちがよくないケーキを美味しい状態で食べるため、クリスマス・イブ当日に購入する世帯が多いと考えられます。 ちなみに2015年度の国勢調査によると二人以上が同居する世帯は日本に34,913,875世帯あります。したがって12月23~25に家庭で購入されるケーキの金額は、34,913,875世帯 X (146.08+366.89+154.92)円= 23,318,627,973.75円となり、約233億円となります。クリスマスケーキの定番であるイチゴのショートケーキを日本に広めたといわれる不二家の2015年の洋菓子事業の年間売上が約300億円ですから、12/23~25の三日間で、不二家の洋菓子事業の約7割に相当する金額分のケーキが12月23日から12月25日の三日間で購入されていることになります。 ■他の月と比較して12月はどのぐらいケーキが購入されているか? では、クリスマスがある12月とその他の月では、ケーキの購入にどれぐらい違いがあるのでしょうか。2015年12月の家計調査結果から月毎のケーキの購入頻度と、購入金額をみてみることにしましょう。 (100世帯あたり) 月 購入頻度 購入金額(円/1世帯平均) 1月 51 523 2月 51 494 3月 60 632 4月 48 475 5月 53 537 6月 47 468 7月 41 393 8月 43 468 9月 46 466 10月 50 501 11月 54 583 12月 90 1,383 1月から11月の購入頻度の平均を計算すると、購入頻度は100世帯あたり49世帯となり、12月は、1月から11月の平均と比較して、購入頻度は2倍弱、購入金額は3倍弱となります。ケーキはふだん、デザートとしても、誕生日などの祝い事用などとして購入されますが、12月についてはクリスマス用として、購入頻度がほぼ1回分増えたと考えられそうです。 一方で1月から11月の購入金額の平均を計算すると、購入金額は1世帯平均504円となり、12月は、1月から11月の平均と比較して、購入金額は3倍弱となります。単純に考えてクリスマス用のケーキに対してはふだんの倍の金額を使っていると考えられます。年に一度のイベントに高価なケーキを買おうという消費者心理が働いているとも捉えられる一方、単価を上げようとクリスマスケーキを販売する企業がさまざまな手段を用いた結果とも考えられます。 ■クリスマスケーキに使う金額は年々減少している このように、ケーキを販売する企業にとっては、最も稼ぎ時ともいえるクリスマスですが、年次ごとの推移を確認すると、気になる点もあります。 2006年から2015年の家計調査結果から12月のケーキの購入頻度と購入金額をみてみましょう。 (100世帯あたり) 年 購入頻度 購入金額(円/1世帯平均) 2015年 90 1,383 2014年 88 1,324 2013年 88 1,390 2012年 93 1,375 2011年 89 1,384 2010年 85 1,336 2009年 87 1,456 2008年 85 1,446 2007年 91 1,473 2006年 95 1,536 購入頻度は2006年から2015年まで、ほぼ横ばいとなっていますが、購入金額については、2006年の1,536円から減少しており、2010年からは1300円台で推移しています。ふだんよりは高価なケーキを購入するクリスマスではありますが、少しづづ消費者の財布の紐がきつくなってきているのかもしれません。別の要因としては、近年子供のいない高齢者世帯など大人だけの世帯が増加しており、クリスマスだからといってケーキを購入しない、もしくは以前ほど高価なケーキを買わない世帯が増えているとも考えられます。 クリスマスの定番であるクリスマスケーキも戦略を見直すべき時期が来ているのかもしれません。 《参考記事》 ■承認欲求が満たされない社会が原因?なぜ「一流」が書籍や記事で使われるのか?(村山聡 中小企業診断士) http://sharescafe.net/49594313-20160920.html ■働き方は「人並みで十分」と考える新入社員に教えたい人並みの給与額(村山聡 中小企業診断士) http://sharescafe.net/49126099-20160720.html ■テキストマイニングでわかる!経営理念、企業理念には何が書かれているのか?(村山聡 中小企業診断士) http://sharescafe.net/48670625-20160523.html ■新入社員のうちに覚えておきたい!仮説思考の重要性と重病性(村山聡 中小企業診断士) http://sharescafe.net/44386900-20150421.html ■あなたの会社にもいるかもしれない?ビジネスメソッドマニアに気をつけろ!(村山聡 中小企業診断士) http://sharescafe.net/40838018-20140914.html 村山聡 中小企業診断士 シェアーズカフェ・オンラインからのお知らせ ■シェアーズカフェ・オンラインは2014年から国内最大のポータルサイト・Yahoo!ニュースに掲載記事を配信しています ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家の書き手を募集しています。 ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家向けに執筆指導を行っています。 ■シェアーズカフェ・オンラインを運営するシェアーズカフェは住宅・保険・投資・家計管理・年金など、個人向けの相談・レッスンを提供しています。編集長で「保険を売らないFP」の中嶋が対応します。 |