管理職

3月23月にマイナビニュースにて発表された調査によると、「管理職になりたいですか?」という質問に対して、「いいえ」と回答した人が73.6%だったとのことです。

管理職になりたくない理由として「責任は大きくなるのに残業代がなくなり給与が下がる」、「自分には向いていない」、「今の管理職を見てああはなりたくない」といった声があがっていたようです。

では現実に管理職に昇進を打診された場合、昇進を固辞して管理職にならない選択をすることに、どんなメリットとデメリットがあるのでしょう。

■金銭面のメリットとデメリット
管理職が労働基準法における管理監督者であると規定されている場合、企業は管理職に残業代を支給する義務を負いません。そのため残業が普段から多く、残業に対して残業代が支払われている社員が管理職になると、残業代が支給されないため、給与が下がるという事態はおこりえます。つまり管理職にならない方が金銭的にメリットがあるということになります。

一方で、管理職への昇進は、社内等級が上がることとイコールであることがほとんどです。給与制度においては毎年の昇給額は等級によって差がつくことが多く、そのため基本給については管理職と一般職とでは年が経つにつれて差が広がることになります。管理職になった時点では給料は下がるかもしれませんが、管理職として順当に職務を遂行していれば、いずれは給料は逆転することになるでしょう。給与制度がしっかりしている会社であれば、より責任が大きい職務に就く社員の給料が、いつまでも不利な状態になるような制度にはしていないものです。

退職金については勤続年数に基本給を掛け合わせる制度の場合、上述の基本給の差が退職金の受給額に影響を及ぼしてきます、また会社への貢献ポイントを設定し、退職金の計算に加味する制度設計になっている場合も役職の責任の重さが貢献ポイントに強く反映されやすいため、受け取れる退職金に差がつくことになります。

厚生年金については、「標準報酬月額」という名目で、毎月、企業と個人で半額づつ負担することになります。標準報酬月額には残業手当や通勤手当も含まれますので、残業代により給与が管理職より多い場合は、支払金額は多くなりますが、年数が経過するにつれて、給料が逆転した場合は、支払金額も逆転します。厚生年金の受給額は基本的には払った額が多いほど受給額も多くなります。

■働き方のメリットとデメリット
一方で働き方についてはどうでしょうか?

管理職にならないことで責任は増やさずに、残業代をもらうことで、それなりの給料をもらうことは一時的には魅力的かもしれません。

しかし5年後、10年後も同じような働き方が可能かについても考えておいた方がよいでしょう。管理職にならず現状と同じ仕事を続けるということは、同様の仕事をする同僚との年齢構成の上位に徐々に移動していくことになります。仕事の能力も上位を維持することができれば面目は保てますが、若い世代に優秀な人材が現れると、一気に存在意義が低下する可能性があります。

また同期や後輩が管理職になることで、自分に業務指示をすることが日常的になります。このことに苦痛を感じる人もいるかもしれません。

残業についても、40代を過ぎると体力や精神力の低下が顕著になってきます。新しい技術やスキルの習得にも時間がかかるようになり、従来の仕事についても同じような生産性を維持できるとは限りません。こうした加齢による仕事の生産性の低下を長時間残業で代替することは、体を壊すことにもつながりかねません。

■短期のメリットと長期のメリットのどちらをとるか?
このようにみてみると、管理職に昇進しないという選択をすることによって、重い責任を回避し、給料も残業によって管理職より多いという状況は短期的にはメリットはありそうです。一方で、長期的な視点でみると責任が増加し、一時的に給与は減るものの、管理職になる方が、金銭的にも働き方においてもメリットは多いといえそうです。

管理職への昇進を打診されたときに、辞退することも個人の意思として尊重すべきだと思いますが、現在の状況だけで判断せず長期的な視野も踏まえて判断すべきでしょう。

《参考記事》
■承認欲求が満たされない社会が原因?なぜ「一流」が書籍や記事で使われるのか?(村山聡 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/49594313-20160920.html
■働き方は「人並みで十分」と考える新入社員に教えたい人並みの給与額(村山聡 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/49126099-20160720.html
■テキストマイニングでわかる!経営理念、企業理念には何が書かれているのか?(村山聡 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/48670625-20160523.html
■新入社員のうちに覚えておきたい!仮説思考の重要性と重病性(村山聡 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/44386900-20150421.html
■あなたの会社にもいるかもしれない?ビジネスメソッドマニアに気をつけろ!(村山聡 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/40838018-20140914.html

村山聡 中小企業診断士

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