![]() 厚生労働省により3年毎に行われている「労働組合に関する実態調査」の平成28年度調査結果が6月20日公表されました。 この調査は昭和58年から労働組合の実態調査を目的として実施されており、業種別、企業規模別などを軸とした組合の状況を確認することができますが、平成28年度調査から労働組合の重点活動事項という調査が新たに加わっています。 ■これまで労働組合活動の重点テーマは? 労働組合の活動というと、春闘と呼ばれる大手企業労働組合と経営者との給与のベースアップ額に関する交渉を思い浮かべる人も多いでしょう。こうした印象から賃上げ要求の活動ばかりに目がいきがちですが、労働組合は労働組合法の第一条に規定されているとおり、労働者の地位を向上させることを目的としており、賃上げ要求以外の活動もしています。 では現在の労働組合は、どのような事項に重点を置いて活動しているのでしょうか? 労働組合の重点活動事項の調査結果からこれまでに重点を置いてきた活動のトップ10をみてみることにしましょう。 1.賃金・賞与・一時金 91.5% 2.労働時間(労働時間の適正把握を含む)・休日・休暇 78.3% 3.組合員の雇用の維持 43.2% 4.職場の安全衛生(メンタルヘルスを含む) 37.3% 5.企業内福利厚生 23.0% 6.育児休業制度・介護休業制度・看護休暇制度 22.1% 7.組合が提供する福利厚生(共済など) 19.9% 8.定年制、継続雇用制度(勤務延長・再雇用) 19.7% 9.退職給付(一時金・年金) 16.6% 10.正社員以外の労働者の労働条件 15.2% ※その他を含む全21項目からの抜粋 ※回答は複数回答(5つまで) こうしてみると、賃金と労働時間に関する活動が最も重点が置かれている一方で、職場の安全衛生や企業内福利厚生といった労働環境面についても重点をおいている組合が一定数あることがわかります。 ■これからの労働組合活動の重点テーマは? 労働組合の重点活動事項の調査では、これから重点を置きたい活動についても調査しています。 先ほどのトップ10の比率が、どのように変わるかみてみることにしましょう。 いままで これから 1.賃金・賞与・一時金 91.5% → 80.3% 2.労働時間(労働時間の適正把握を含む)・休日・休暇 78.3% → 68.3% 3.組合員の雇用の維持 43.2% → 41.3% 4.職場の安全衛生(メンタルヘルスを含む) 37.3% → 40.5% 5.企業内福利厚生 23.0% → 22.6% 6.育児休業制度・介護休業制度・看護休暇制度 22.1% → 21.1% 7.組合が提供する福利厚生(共済など) 19.9% → 16.2% 8.定年制、継続雇用制度(勤務延長・再雇用) 19.7% → 23.4% 9.退職給付(一時金・年金) 16.6% → 18.3% 10.正社員以外の労働者の労働条件 15.2% → 18.9% ※その他を含む全21項目からの抜粋 ※回答は複数回答(5つまで) 賃金と労働時間に重きを置く状況は変わりませんが、その比率はいずれも10%程度低下しています。一方で、定年制、継続雇用制度、退職給付などの雇用政策、正社員以外の労働条件などが微増傾向にあります。 ■労働者の意識の変化が背景か? 給与水準の低下が指摘され、長時間残業を是正する働き方改革が叫ばれる現状において、労働組合が、それらの活動に重きを置く比率が下がっているという結果は、なかなか興味深いものではないでしょうか。企業の成長がなかなか見込めない中で、せめて定年まで働きたい、できれば定年後も再雇用して欲しいという労働者の願いがこの結果に反映されているのかもしれません。 《参考記事》 ■承認欲求が満たされない社会が原因?なぜ「一流」が書籍や記事で使われるのか?(村山聡 中小企業診断士) http://sharescafe.net/49594313-20160920.html ■働き方は「人並みで十分」と考える新入社員に教えたい人並みの給与額(村山聡 中小企業診断士) http://sharescafe.net/49126099-20160720.html ■テキストマイニングでわかる!経営理念、企業理念には何が書かれているのか?(村山聡 中小企業診断士) http://sharescafe.net/48670625-20160523.html ■新入社員のうちに覚えておきたい!仮説思考の重要性と重病性(村山聡 中小企業診断士) http://sharescafe.net/44386900-20150421.html ■あなたの会社にもいるかもしれない?ビジネスメソッドマニアに気をつけろ!(村山聡 中小企業診断士) http://sharescafe.net/40838018-20140914.html 村山聡 中小企業診断士 ![]() シェアーズカフェ・オンラインからのお知らせ ■シェアーズカフェ・オンラインは2014年から国内最大のポータルサイト・Yahoo!ニュースに掲載記事を配信しています ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家の書き手を募集しています。 ■シェアーズカフェ・オンラインは士業・専門家向けに執筆指導を行っています。 ■シェアーズカフェ・オンラインを運営するシェアーズカフェは住宅・保険・投資・家計管理・年金など、個人向けの相談・レッスンを提供しています。編集長で「保険を売らないFP」の中嶋が対応します。 |