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お付き合いや何かで贈り物をするとき、皆さんは何を贈りますか?

一般的にはゼリーやハム・ソーセージといった食品、洗剤やタオルなどといった日用品が多いと思います。でも、日用品ではありますが贈り物としてティシュペーパーが送られてきたらどう感じるでしょうか?

もちろん、ティッシュペーパーはとても便利な日用品で実用性の面から見たら非常に価値のある商品です。しかし、正直なところ「えっ?」といった風にびっくりする人が多いと思います。

これは、ティッシュペーパーは日用品であるという強いイメージがあり、あまり贈り物として使われないというイメージがあるためだと考えられます。

一般的にそのカテゴリーであれば、どの銘柄の物を買っても同じだと思われるような商品の場合、消費者は価格で選びます。

例えば、お塩や石鹸、扇風機といった商品はどの商品を買っても望んでいた役割を果たしてくれるはずなのでよほどのこだわりがない限りワザワザ高いモノを買おうとはしないはずです。

しかし、こういった商品でも常識はずれな価格で販売している例があります。冒頭にあげたティッシュは贈答品用として1箱1,000円といった価格がついています。


1箱1000円という高価なティッシュが売れている。主にインターネットで販売し、テレビCMなど派手な宣伝はないものの、インスタグラムなどSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)による拡散が追い風となっている。
クレシア 引き出物にも 1000円ティッシュの贈答力 毎日新聞 2017/7/23



どうして安くしても売れない商品がある一方、常識外れの価格をつけても売れていく商品があるのでしょうか?本稿ではその理由についてこの贈答用のティッシュペーパーを例に考えていきたいと思います。

■競合品とは違った価値を提供する
一般的なティッシュペーパーは贈答品として用いられることはあまりないでしょう。お中元やお歳暮でティッシュペーパーを贈られたことや、贈ったことはあまりないと考えられます。

もちろん、ティッシュペーパーは優れた製品であり、使用頻度の高い消耗品ですので貰ったらうれしいものですが、一般的には贈り物として用いられることはあまりありません。
と、ここまでが一般的なティッシュペーパーのお話です。

それでは贈答品としてティッシュペーパーを考えたらどうなるでしょうか?

まずいえることは、独自の発想なので競争相手がいないという事です。

同じカテゴリー内に競争相手がほとんどいないため仮に消費者がティッシュペーパーを贈り物にしようと決めたらその商品が自動的に選択されます。

もちろん、一般的に贈り物として用いられる他の商品との競争はありますが、「ティッシュペーパーを贈る」と消費者が決めたとたんに、贈り物用のティッシュペーパーはほかのティッシュペーパーとの競争に勝つことができるのです。これは大きな強みです。

また、とても話題性があるという事も指摘できます。

ティッシュペーパーは商品としては一般的なものですが、贈り物としては珍しいものになります。そのため、贈られた人の印象に残るという効果も考えられます。

さらに珍しいという事はニュースとしての価値があるという事ですので、今回の報道のようにメディアに取り上げられる機会も生まれます。また、今回引用した記事ではSNSでの拡散が追い風になっていると指摘されていたように、口コミ効果も狙うことできるといった面でも有利です。

■品質などへのこだわり
もちろん、奇をてらうだけでは贈り物としての価値を生みません。ほかの人に贈り物として使うわけですから、貰ったほうに嬉しいと思ってもらわないといけません。そのため、贈り物として価値を生むような理由付けが必要となります。

その理由付けとして一般的な方法は、高品質なものであるといったものです。

上でも書きましたが、普通のティッシュペーパーを貰ったらうれしいとは思いますが、贈り物としてはあまり適切でないと感じるかもしれません。

しかし、高品質なティッシュペーパーだったら受け入れられる可能性が高くなります。

そして、この高品質というのは、本当に顧客が高品質を知覚できるかどうかではなく、高品質であるという風に認識してもらえることが大切です。

■あえて高価格にするという戦略
さて、もう一つ大切な要素があります。それは、価格です。

人は品質が良い、価値が高いから価格が高いと考える一方、価格が高いから品質が良い、価値が高いとも考える傾向があります。

例えば、一般の人には宝石の良し悪しの判断はなかなかつかないと考えられますが、10,000円の宝石よりも100,000円の宝石の方が価値があると判断する傾向があります。

宝石の良し悪しが分からないはずなのに、どうしてそう判断できたかというと、単純に100,000円の宝石の方が高いからです。

一見するとばかばかしい理由ですが、人はそのように判断する傾向があるという事は理解しておく必要があります。

そして、この人の判断基準から考えると、ティッシュペーパーが1箱1,000円というのは高品質であるというシグナルを発するには十分だと考えることができます。

また、価格に見合った流通経路にすることも大切です。この贈答用ティッシュペーパーではインターネットでの直販を中心に行っており、高級感を訴求できる流通経路に限定して商品を販売しています。

安売りを強みとしている小売店を中心とした流通経路で販売したら、数量は売れるかもしれませんが贈答品としての高級感や高価格を維持できるかどうかは疑問となります。

このように、1箱1,000円のティッシュはよく考えられた商品なのです。

■実は1箱10,000円のティッシュもある
本稿では触れませんでしたが、1箱10,000円の十二単というティッシュがあります。10,000円ともなると、普段使っているティッシュとは全然別のカテゴリーとなる商品に思えてきます。

このように、ティッシュのようなありふれた商品であっても切り口を代えて考えれば全く違った商品として販売することが可能となってきます。

あなたの会社が一般的な製品を作っていたとしても、ちょっと視点を変えれば話題性のあるものを作ることができます。ぜひ、何か違った切り口で販売することができないかと考えてみてください。

【参考記事】
■パナソニックは13万円の扇風機を販売するにあたって勝算をもっているのか(岡崎よしひろ 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/50969617-20170331.html
■翻訳アプリで接客時のデータを収集すれば、接客業で働く人が求められる能力が変わります。
http://okazakikeiei.com/2016/11/01/sekkyaku/
■ウォークマンの最上位モデルをあえて30万円といった高価格で販売するソニーの戦略とは
http://okazakikeiei.com/2016/09/09/sonywalk/
■江崎グリコ「カプリコのあたま」という一見すると奇抜な商品は、手堅く考えられたコンセプトで市場に投入されている。(岡崎よしひろ 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/49426351-20160831.html
■自動運転技術が確立されたとき、中小企業にとってチャンスが訪れます(岡崎よしひろ 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/48236024-20160331.html


岡崎よしひろ 中小企業診断士

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