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10月22日、大型台風の悪天候の中、衆議院選挙があり、自公民の圧勝で終わりました。

■幼児教育の無償化を公約に
今回の各政党の公約に「幼児教育の無償化」が入っていました。勝利した自民党も2020年までにすべての幼児教育を無償化することを公約に掲げています。

「幼児教育が無料になれば、うれしい」そう思っている子育て世代は少なくないでしょう。家族関係が希薄になり、共働きが多くなった現代社会では保育園などの社会的なネットワークの存在がますます重要になっています。また、タダになれば、それだけ家計に余裕ができます。しかし少子化を解消するだけの施策になるのでしょうか?

■お金がないから幼児教育を諦めていることはあるのか
子供が1人前に成長する過程での心配は、やっぱり教育とお金です。「日本の教育はお金がかかりすぎる、だから子供を産まない。」といった金銭的な理由で子どもが増えないというのが20年以上も前から言われてきました。

厚生労働省の統計に、夫婦や子供の生活状況や意識などの変化を5年ごとに行っている「社会保障・人口問題基本調査」というものがあります。その最新の統計(2015年)の「理想の子供の数をあきらめる理由」というデータがあるのですが、

「本当は○人ほしいけど、○人の予定」という回答をした主な理由として、「子育てや教育費にお金がかかりすぎるから」としたのは以下の通りです。

1人欲しいけど0人は14.6%
2人欲しいけど1人は43.8%
3人欲しいけど2人は69.8%

確かにこの回答にも見られるように、子供の数が多ければ多いほど経済的な理由が多くなっています。しかし既に保育料には2人目からの割引や3人目から無償という自治体も多くあり、子供が多いほど資金面で手厚くなっています。

では保育料が高すぎて保育園に行かないということはあるのでしょうか?地域差はあるものの、ほとんどの自治体の認可保育園は収入の少ない家庭に配慮し、保育料を減額し、さらに生活保護の世帯は無料になります。統計調査では、もっと子供が成長してからの大学教育といった負担を意図しているのだと考えられるのではないでしょうか。

■無償化で得をするのは誰か
すべての子供がタダになると、その恩恵はむしろ収入の多い人ほどあります。通常、収入の多い人は、そのお給料の額に応じて保育料も相当高く負担しています。保育料は住民税の金額によって決まりますが、年収が1000万円以上の人は、平均で月額7万円払っているので、その負担がなくなれば年間84万円もお得になります。もし、全ての人を無償の対象にすれば、金持ち優遇策にもなりかねません。

上記の経済的な問題より徐々に深刻になってきているのは、同調査で「欲しいけど出来ないから」という理由で一人目の子供をあきらめるという人が74%もいるということです。「子供を持たないという経済的な選択」より「子供を持てない」という、年齢や身体的理由が多く存在するということなのです。

ストレスの多い社会に加えて晩婚化がすすみ、不妊治療を受ける人も年々増加しています。このところ「妊活」という言葉も一般化されてきたこともあり、「子供が欲しい」ということでは、まさに政府の意向と一致しています。少子化対策をする上で不妊治療への公的助成の拡充をする必要があるのではないでしょうか。

保育料の無償化は、税金や保険料など年々負担が重くなっている子育て世代に恩恵が行くのである一定の効果は望めます。しかし、無償化したらその効果で子供が増えるなど、そんなに単純にはいきません。高齢者には助成金をばらまき、子育て世代には無償化といった単なるばらまき政策とならないためにも、もっと人に寄り添ったきめ細やかな対策が必要になってくるでしょう。

■公約はいずれ忘れて欲しい?
テレビ東京での池上彰さんの選挙特番の中で、「政界‘悪魔の辞典’」として選挙用語の「公約」とは

‘選挙前は多くの人に知ってほしい。選挙後は早く忘れて欲しい。’
と皮肉たっぷりの解説がされていました。

こんなことにならないよう、何らかの形で選挙後に公約を実現して欲しいものです。

【参考記事】
■契約者と保険負担者が別の「名義保険」に税務署は目を光らせている。 (浅野千晴 税理士)
http://sharescafe.net/52137631-20170925.html
■これで補助金詐欺を見抜ける?学校法人のお金のチェックは一体どうやっているのか (浅野千晴 税理士)
http://sharescafe.net/51979742-20170831.html
■なぜ「身寄りのない土地」が今増え続けているのか (浅野千晴 税理士)
http://sharescafe.net/51795315-20170731.html
■タダで簿記の指導をしてもらえる!税務署の無料記帳指導を知っていますか? (浅野千晴 税理士)
http://sharescafe.net/51569189-20170626.html
■世界のシンデレラストーリーは変わった。それは自分の力で起業することである。 (浅野千晴 税理士)
http://sharescafe.net/50956238-20170329.html

浅野千晴 税理士

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