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「通行妨害で自転車男性押し倒す 傷害容疑で男を逮捕 堺」2017/11/8 産経新聞
逮捕容疑は8日午前6時15分ごろ、自宅前の私道を自転車で通行した近くの20代男性を押し倒したうえ、胸ぐらをつかむなど暴行し、足などに軽傷を負わせたとしている。


テレビなどでも数多く報じられたこの事件。逮捕された男性は、自宅前の道路を通る歩行者や自転車などの通行を妨害していたとのことで、そのなかで暴行に発展した模様だ。

ニュースによれば、自宅前の土地は、近隣の土地所有者らと共有の状態となっている、いわゆる私有地だったとのことで、男性の主張では私有地なのだから通行させるかどうかは自分が決める…ということだったようだ。

ニュースの中では暴行行為に及んでいるということがクローズアップされて報じられたが、問題の背景には、そもそも道路が私有地であった場合、誰でも自由に出入りできるかどうかという問題がある。

身近なところにも私有地であることを理由に「立ち入り禁止」とか「通り抜け禁止」などの立て看板をしているのを見かけるがあるはずだ。

はたしてこのような道路に出くわした場合、法律的にはどう考えるべきだろうか?

■道路が私有地ってどういうこと?
そもそも、道路が私有地となっているということがあるのかということだが、これは珍しいことではない。

次の図のように大きな一筆の土地をABCに分筆し分譲して販売するような場合、BやCの所有者が自宅を建てようとすると「接道要件」といって、建築基準法に定める道路に接していることという要件をクリアしなければならない。このため、私道を設け、法律上の道路として行政から道路としての指定を受けてもらうことがある。

私道図


これは私有地が道路になる一例に過ぎないが、一見するときれいに舗装されていて公道と区別はつかなくても、実は所有者が国や市町村ではない一般の個人の所有物である道路というのが存在する。

私道は、あくまで個人所有の土地だ。管理を含めて、基本的には所有者に委ねられている土地ということになる。

このような私道を通行できるかどうかについては、実はトラブルが多く、裁判に発展するケースも多い。

■建築基準法に定める道路はだれでも自由に通行できる?
建築基準法に定める道路としての行政から指定を受けた道路は、誰でも自由に出入りできるだろうか?

結論から言うと、それぞれの事案による、ということになってしまう。必ずしも、公道のように誰でも自由に使っていい、ということにはならないので注意が必要だ。

私道の通行をめぐって裁判で争われたようなケースでは、通行しようとする人が「日常生活を営む上で必要不可欠かどうか」という点と「敷地の所有者が受ける不利益」を具体的に比較してみて、敷地の所有者が通行を拒絶できるかどうか判断するものが多い。

この「日常生活を営む上で必要不可欠といえるかどうか」というのはなかなかわかりにくい。

例えば、「ほかの道路を通るより近道になるから」というのはどうだろうか。もちろんケースによるだろうが、これだけでは他人の私有地を利用する理由として「日常生活を営む上で必要不可欠」とは言えないだろう。

なかには通行の方法がポイントになることもある。歩いて通る分には構わないが、これが自動車になると通行はダメ、といった具合だ。道幅の狭い道路では、自動車や自転車などの通行を自由に許可していると事故の危険性があり、制限が必要となることもあり得る。

このように道路のように舗装されている道だからといって、無条件に自由に出入りできるというものではないのだ。

■結論
ここでは建築基準法上の道路を紹介してみたが、これ以外にも法的には様々な道路があって、かなり複雑だ。

今回ニュースになったケースでは、法的にどのような道路であったかは、私の見た限りでは報道されていなかったので詳細はわからないが、もちろん、実力行使で通行を妨害し傷害事件に発展するような事態は決してあってはならない。

道路をめぐるトラブルは意外に多い。身近な問題としてこのニュースを見た人も多かったのではないかと思う。

道路の問題を考えるうえで、参考に一つになれば幸いである。

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及川修平 司法書士

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