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2017年12月16日に、韓国のホテル大手であるホテルロッテの完全子会社が運営する、「ロッテアライリゾート」が新潟県妙高市にオープンした。バブル時代末期の1993年にオープンし、2006年に経営破綻した旧ARAI MOUNTAIN&SPAを全面改装し、目指すは、「最高のプレミアムマウンテンリゾート」として船出した新たな挑戦の行方を追いかけてみたい。

■ロッテアライリゾートの概要
今回オープンしたロッテアライリゾートは、落ち着いた山荘をイメージした257室、温泉、プールを備えたホテルを中心に、スキー場としてはゴンドラ・リフト数5基、ゲレンデは157k㎡、11コース、最長滑走距離は5.2kmを誇る。スキー・スノーボード以外のアクティビティーも用意され、ジップライン、チュービング、ボルダリングも兼ね備えた一大リゾートとして生まれ変わった。

また、韓国のホテル大手であるロッテの日本進出のきっかけともなるホテルであり、初年度の入込客数の目標は25万人、そのうち15万人をスキー客で確保することを見込んでいる。これは、スキー場の規模で言うと、中堅クラスの規模と人気を誇るスキー場と同等クラスの集客力を目指していることがわかる。(周辺スキー場の妙高杉ノ原や、斑尾高原と同等程度であり、比較的大きな規模を誇る白馬八方尾根や白馬五竜&47、野沢温泉スキー場の半分程度の利用者数)

■ロッテアライリゾートのターゲット顧客
最高のプレミアムマウンテンリゾートを目指すロッテアライリゾートの主要なターゲットは、その料金設定からイメージすることができる。ロッテアライリゾートでは、大人のリフト1日券が、6,000円と周辺スキー場と比較して高めに設定されている。更に、ファーストクラスリフト券8,000円を設け、リフトに優先的に乗れるというスキー場としては非常に珍しいサービスを展開する。その他、スキー場で提供されるスキースクールも、大人はプライベートレッスンのみとなっており、これらのことからも、主要なターゲットを富裕層においていることがわかる。

また、人材の募集においては、外国語に堪能な人材を求めており、日本人のみではなく、近年ニセコや白馬、野沢温泉エリアに訪れているようなインバウンドもターゲットに据えていることが伺える。これらは、裏を返せばそれ以外の顧客を捨てるという戦略でリゾートの運営を行うという意志がはっきりと見えている。

■最近の動向
しかしながら、開業から1か月がたった今、当初設定されていたと思われる戦略にそぐわない動きが早くも見え始めている。まず第1弾として、近隣地域住民に向けた地元割の料金が、正規の6,000円のところを3,000円という設定で行われた(期間限定)。また、第2弾として、対象住民エリアを拡大し、初中級エリアの8時間券を3,000円で発売した。加えて、1日単位のリフト券と午後券のみの選択であったが、そこに誰でも利用できる4時間券を3,900円で追加した。これら矢継ぎ早の割引動向を考えると、プレミアムリゾートを目指した戦略に早くも綻びが生じている。

そもそも、地元民は日帰りがほとんどであり、宿泊によるプレミアムリゾートの体験はほぼ期待できない。東京近郊やわざわざスキーのために日本を訪れる外国人客と比較して、富裕層がそれほど多いとも思えない。周辺にもたくさんのスキー場の選択肢があり、地元住民は自分の身の丈に合ったスキー場を選択するであろう。そのような中で、なぜ地元住民や近隣住民のための価格設定を行うのか。その理由は、おそらく当初想定していた以上にターゲットとしている利用客の客足が伸びていないからであろう。

スキー・スノーボード人口がバブル期のおよそ4割に激減している日本市場において、過去の遺産を引きずるスキー場はどこも供給過多に陥っており、一部のインバウンド旅客に成功したスキー場や、新幹線駅直結等、交通の便を備えたスキー場、巧みなマーケティングに支えられたスキー場以外は、非常に苦しい経営環境であることは事実である。そのような供給過多の状況の中で、更なる供給源としてのリゾートを新設し、高単価な商品で市場に参入するには、価格以上のリターン(満足感)や他との大きな違いを感じられない限り成功することは困難である。

旧ARAI MOUNTAIN&SPAの閉鎖から10数年がたち、昔のファンが再度訪れるも、ロッテアライリゾートの船出評価はあまり良いとは言えない。Google 3.4/5点満点、Booking.com 6.5/10点満点、tripadvisor 4.5/5点満点(2018/1/29日時点)とtripadvisorでは何とか面目を保った結果だが、その他のサイトでは、プレミアムリゾートにふさわしい結果を得られているとは言い難い。評価で目立つのは、価格が高いわりにサービスレベルが低いと手厳しい。

■日本のスキーリゾートのモデルケースとなりえるか
日本のスキー市場は、インバウンドに注力したスキー場が盛り上がりを見せてはいるが、成功例であるニセコや白馬でさえ、10数年の努力の甲斐あっていまの知名度と評価を得た。ロッテアライリゾートの挑戦は始まったばかりであるが、最高のプレミアムリゾートを本気で目指すのであれば、その場しのぎの対応やつぎはぎの施策ではなく、一貫性ある戦略ストーリーのもとで、日本を代表するリゾートとして確固たる地位を築き、長くこの地でファンを迎えてくれる姿を期待したい。

【参考記事】
■スキー場の競争戦略~生き残りをかけた戦い~ (森山祐樹 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/52532940-20171130.html
■ANA・LCCのピーチ子会社化でますます進む独占。 (森山祐樹 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/50741428-20170228.html
■アメリカン航空に学ぶ「捨てる」勇気 (森山祐樹 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/50552975-20170131.html
■地域航空が国鉄に学ぶべき理由 (森山祐樹 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/49893178-20161031.html
■星野リゾートとリッツカールトンの戦略の違いとは (森山祐樹 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/49185987-20160729.html

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