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春の引っ越しシーズンを迎え、この時期に賃貸マンションを借りて、新しい生活をスタートさせるという人も多いだろう。

いざ入居してみて「あれ?思っていたのと違う…」というトラブルに遭遇したという相談を度々聞く。私の受けた相談の中には、お湯が出ない、電気がつかない…といった生活に支障が出てしまう深刻なものもあれば、リフォーム済みと聞いていたのに部屋が埃だらけだったとかゴミがそのままになっていたなどというものもあった。

せっかく気持ちよく新生活を始めたいと考えていたところにケチがついてしまい、契約をなかったことにしたい、と考えることもあるだろう。

果たしてこのような場合、契約を解除することができるだろうか。

■契約の解除は難しいケースも
賃貸の契約がスタートしていきなりこのようなトラブルに巻き込まれてしまうと気分が悪いものだが、だからといってすぐに解除が認められるわけではない。

故障箇所があるのであれば、まずは大家さんに修繕を依頼し対応を待つべきだ。

お湯が出ない、電気がつかない…といった生活に支障が出てしまうようなトラブルを放置して対応をしてくれないというのであれば、大家さんの修繕義務違反を理由に契約の解除が認められるケースもあるだろう。しかし、しっかりと対応してくれて、現状では問題なく使用できるということであれば、入居早々からのトラブルということで気持ちよくはないのだが、契約の解除を主張するのは難しいと考えられる。

部屋が埃だらけだった…というようなものである場合、契約の解除が認められるほどの契約違反といえるか、というとかなり微妙だ。

どうしても退去したいということになると、入居者都合による退去扱いとしてなってしまい、契約によっては契約期間一年未満の退去は違約金を取るという設定になっているケースもあるため、支払いをめぐってさらにこじれてしまう可能性もあるので、注意が必要だろう。

このように一度契約がスタートしてしまうと、契約の解除が認められるかどうか、ケースごとに検討を迫られるなどいろいろと厄介だ。

できることならトラブルになりにくい物件選びができれば…と思うが、どのような手段があるだろうか。

■トラブルにならない物件選びとは?
入居当初のトラブルになりにくい物件選びには様々な情報が必要だろうが、一つに「日常的に物件の管理をしっかりやっているところ」という点を挙げることができる。

先ほど例として挙げたようなケースでは、そもそも日ごろから物件の管理をしっかりやっているとは思えない。このような物件では、入所中にも何らかのトラブルに巻き込まれてしまう可能性が高いといえ、できれば避けたい物件だ。

日常的に物件の管理をしっかりやっているかどうかについては、物件の管理維持にどの程度お金をかけているかということにもなる。

例えば、賃貸住宅においては、一般の分譲マンションであれば通常行われる大規模修繕などが行われないままとなっていることも少なくない。このような物件では躯体に対する劣化等も想定されるし、雨漏りなどの深刻なトラブルになりかねない。問題物件予備軍といったところだ。

■入居者が適切な物件を選ぶための情報があまりに少ないが…
賃貸住宅の契約をする際に重要事項説明などについても、このような情報が語られることはまずないだろうし、入居者が適切な物件を選ぶための情報を得る機会はあまりに少ない。

管理の状況は入居してみないとわからないことが多く、しっかりやっているところに入居できるかどうかは運次第となってしまっているのが現状だ。

あまり知られていないが、賃貸住宅の管理については今から7年ほど前に国土交通省が賃貸住宅管理会社の登録制を始めている。一定の基準のもと、賃貸住宅の管理を行う会社の登録を受け付けており、入居者からの苦情を放置するなどした場合は、公表をするといった処置をとる。

主なものとしては、入居時の費用や退去時の清算などについてしっかりとした説明をしているかどうかといった部分で、入居中の管理をめぐって、画一的な基準があるわけではなく、入居者側からするとお世辞にも何ら有益な情報が得られる状態にはなってはいない。

入居者側からもっと積極的に物件の管理状況を評価できるサイトなどがあるとよいと思うのだが、不思議とそのようなものはいまのところ存在しない。飲食店やホテル・旅館などもそうだが、消費者側からの評価にさらされている。一長一短あるのは重々承知の上だが、消費者側からすれば重要な情報源として機能しているのは間違いない。

賃貸住宅管理をめぐってこのようなシステムがあれば、管理状況を可視化できる部分もあるのではないか。そうすることで管理の質が高まる部分もあるはずだ。

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及川修平 司法書士

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