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新年度が始まりましたね。毎年この季節を迎えるたびに自分のもう20年以上前の社会人デビューを思い出すとともに、あの頃とは随分状況が変わっている現在、会社で働く先輩社員の皆さんに「迷い」が出ていないか、気になります。

例えば今月1日には、「大手商社が勤務時間の15%を社内副業に当てるよう義務付ける仕組みを導入する」という記事が出ています。副業など、過去に比べると働き方の選択肢が増えてきたことは望ましいことなのですが、結婚、出産、その後のライフイベントを視野に入れると、将来のキャリアにますます迷ってしまう人が多いこともまた事実です。

実際、企業研修の現場では、私自身が20数年前に抱いていた「将来への漠然とした不安」と同じ不安を胸に、働き続けている女性に多く出会ってきました。入社時の「やる気」も記憶にあるし、仕事はとりあえず続けるんだけれど、このままでいいのかな、辞めたいかも・・・と迷っている貴女に、ちょっと楽になる、どんな状況でも使える考え方をお伝えしたいと思います。

◼️(1)交渉を恐れない
今は昭和時代の「男性、日本人、終身雇用」という「多数派」だけの職場ではなくなってきています。まず、私たち女性が多く働くようになりました。例えば25〜29歳の女性の労働力率は、平成7年には66.7%と7割を切っていましたが、平成26年には79.3%と8割近くに迫っています。また、平成29年には非正規雇用者の割合は37.3%となっています。様々な背景や立場である人が多く働く職場に変わってきているのです。

そうした今の職場では"あうんの呼吸"が通じないのは当然ですし、ましてや「察して」というのはなかなか難しいこと。とすると、伝えにくいこともきちんと伝えなければならない場面は、仕事をすればするほど出てくるものです。

年代別の価値観の違いだよね、年上の人たちは頭が固いよね、と済ますことができればいいのですが、会社では上司であったり、そして一緒にチームを組んで働く必要があったりする以上、意見が衝突することも出てくるでしょう。働き手が減ってくる中、休業制度を使います、ということも、もちろん保証された労働者の権利ではあるのですが言い出しにくいことの一つかもしれません。

こうした場合、感情をそのまま相手にぶつければ喧嘩になりますし、感情を押し殺したままにしても、気持ちが鬱積していき、ネガティブに「もう耐えられない!」ということにつながりかねません。それはお互いにあまり幸せなこととは言えません。

感情を押し殺すのではなく、まずは状況を客観的に説明しつつ自分の感情も伝え、双方が歩み寄れるアイデアや考えを提案する、という建設的なコミュニケーションを粘り強く続けることを試してみてください。こうしたコミュケーションは、アサーティブコミュニケーションとして知られています。

◼️(2)未来を読みすぎない
「プランド・ハップンスタンスセオリー」と言う理論をご存知でしょうか。
「ビジネスで成功した人の実に80%の人が、いまのキャリアは予期せぬ偶然によってもたらされたと答えた」というデータに基づいて構築された、スタンフォード大のクランボルツ教授によるキャリア理論の一つです。

一言で言うと、「偶然を活用してチャンスを掴む」と言う考え方です(J.Dクランボルツ、A.Sレヴィン著、花田光世、大木紀子、宮地夕紀子訳『その幸運は偶然ではないんです!』ダイヤモンド社)。

書籍のあとがきで、訳者の花田氏は「自分にとって重要と思われる変化の芽をチャンスと捉え、自ら積極的にそのチャンスを取りにいき、チャンスをものにするために自分のネットワークを活用し、チャンスを自分で広げていくという行動の方が、キャリア開発の実践においてはより現実的なのです。」と述べていらっしゃいます。

キャリア理論には様々なものがあるのですが、このプランド・ハップンスタンス理論は、変化の激しい現代の社会で働く私たちには比較的受け入れやすい理論の一つです。

自分自身を振り返ってもそうですが、社会に出てすぐの時には見えていないところも多く、想像しきれてしないところも多々あります。当初の「会社に勤め続ける」という想定キャリアとは全く違う、退職後に10年の専業主婦生活をへて独立開業、経営者となっている現在ですが、いま振り返ってみれば、その時々で自分ができること、面白そうなことにチャレンジしたり、実行したりしていたことがいまの仕事に多かれ少なかれ結びついていることは事実です。

なんでも興味のあることは「これが後々どんなふうに役に立つのか」を考えすぎず、とにかくやってみましょう。そして、たくさんの人たちに会うことをお勧めします。(1)にも共通しますが、自分の感情を押し殺すのではなく、自分が興味のあること、楽しいと思えることをきちんと認識して、少しでもそれに関係ありそうなら、本を読む、会合に顔を出してみるなど、本当に小さなことからでいいのでチャレンジしてみることから始めてみましょう。ポイントは、結果を焦らないこと、です。

◼️(3)比べない
最後にとっておきのコツを。
それは、他人と比べるのをやめることです。SNSが生活のインフラのようになっている現在はとても難しいことかもしれませんが、一番気持ちがネガティブになりやすく、何にも生まれません。

むしろ大事なのは自分自身と向き合うことです。他人と比べることよりもずっときついかもしれません。自分がサボっていることや頑張っていること、やりたいことができているかどうかは誰よりも自分が一番知っているからです。自分を騙し続けることは大きなストレスにもつながります。

ここまでオススメしてきた方法は、今の仕事を続けるにしても、副業、転職、起業をするにしても、共通して使えるスキルや考え方です。キャリアを会社に預けるのではなく、自分自身がどんな仕事をしていきたいのか、どんな働き方をしたいのかを自問自答しながら、チャンスをつかんで楽しく働ける環境を自分で整えていってほしいと思います。


《参考記事》
■働き始める貴女に送る、人生100年時代の会社の歩き方(小紫恵美子 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/50968144-20170331.html
■長時間労働がなかなか減らせない会社への処方箋。(小紫恵美子 中小企業診断士) 
http://sharescafe.net/48208264-20160327.html
■新しい働き方で、企業と個人双方がつけなければいけない力。(小紫恵美子 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/45172807-20150614.html
■2015年は長時間労働崩壊元年に(小紫恵美子 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/42734491-20150104.html
■ママが起業した時の時間の使い方(株)チャレンジ&グロー(小紫恵美子)ブログ
http://officecom-ek.com/?p=915

小紫恵美子 株式会社チャレンジ&グロー代表取締役 中小企業診断士

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