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「現場が仕事をしやすく、力を発揮しやすい仕組みを作る」
そう公言される経営者の方は多い。そのための仕組み作りのために、さまざまな施策に取り組んでいる話もよく聞く。しかしその想いは、現場の人たちに伝わっているのだろうか。一方通行の片思いに終わっていないだろうか。

どんな施策を打ち仕組み作りをしたとしても、それが現場に浸透して効果を発揮するまでには時間がかる。それまでの間、想いを理解してもらうことは難しいだろう。仕組みが動き出さないまま終わってしまう場合もある。

■なぜ現場に力を発揮してもらう必要があるのか
そもそもなぜ、現場に力を発揮してもらわなくてはいけないのか。

多くの企業は「戦略」を立てる。社長自ら、あるいは管理部門がさまざまなデータを分析し、立案をする。

戦略はとても大事だ。やみくもに仕事を進めるわけにはいかないだろう。しかし戦略は実行されない限り何の意味もない。絵に描いた餅に過ぎないのである。

では、実行するのはどこか。それはもちろん現場である。生産現場、営業現場、サービスの現場、業種によって違いはあるにせよ、実行部隊が現場であることには変わりはない。

現場が大切だ、現場に力を発揮してもらいたい、という理由はこれだ。戦略を実行することで価値を生み出す場。だからこそ現場が力を発揮しやすくする必要があるのだ。

■人事こそが最大のメッセージ
仕組みを浸透させるには時間がかかる。しかし人事は誰もが一目でわかる。誰をチームリーダーに据えるかで、現場の人たちは経営者が何を考えているのか、敏感に察することができるのだ。

たとえば管理畑出身者ばかりを現場のリーダーに任用していたとしよう。現場では「現場のことを知らない経営者が勝手なことをやっている」と感じるかもしれない。ちょっとした行き違いで現場の従業員は不信感を持ってしまう。

そんな事態になると今度は、経営者が「現場は言うことを聞かない」と評価してしまい、さらに現場の管理強化を進めてしまいかねない。こうした状況では信頼関係など生まれようがない。お客様と常に接している現場だからこそのアイデアもつぶされてしまう。それどころかアイデアを出しても無駄という風潮になってしまうだろう。

逆に現場の中からリーダーを選んだとする。もし現場から人望が厚い人を抜擢したならば、これ以上に「現場を大切にする」とのメッセージを伝える方法はないだろう。間違いなく士気はあがる。取り入れようとしている仕組みの浸透もスピードアップしていくはずだ。

経営者が「使いやすい」という理由でリーダーを選んでしまえば、何も変わらないどころか逆効果ですらある。現場の人たちが「この人こそ」と思っている人を選ばなくてはいけないのだ。むろん「人望」が業務と結びついているのか、精査する必要はあるだろう。そのためには日ごろから現場に足を運び、十分なコミュニケーションを取っておくことも大切になる。

■求められるリーダーシップ
リーダーシップは、先頭に立って組織を引っ張っていくイメージが強いかもしれない。しかしそうしたことが可能なのは、カリスマ性を持った一部のリーダーだろう。一人でできることには限界がある。普通のリーダーに求められるのは、「現場が力を発揮できる」仕組み作りをしていくことではないか。

そのための第一歩は「どのポジションを誰に任せるか」を決めることだ。自分が主役を張るのではなく、全体を俯瞰して配役を決めていくプロデューサーのような役割が求められ

時として一つの人事は言葉以上の説得力を持つ。従来の慣習や規則に則った人事では、メッセージが伝わらない場合も出てくるだろう。前例にとらわれない人事を行うことで、経営者自身の変革への想いを伝えられることもあるのだ。

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中郡久雄 中小企業診断士 ターンアラウンドマネージャー

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