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顧客満足度は企業にとって重要な指標である。調査会社による顧客満足度調査や、自社のキャッチコピーとして「顧客満足度ナンバーワン」を掲げる会社もある。企業は顧客に価値を提供することで対価を得ているのだから、当然と言えば当然だろう。顧客満足は、顧客第一主義や顧客最優先など様々に言い方を変えて長く表現されてきており、顧客をもっとも大事なものであるとする企業の姿勢は高度成長期から現在まで貫かれてきた。

しかし今、社員の幸福を最優先することが企業に求められ始めている。社員を優先というと、まるで顧客は二の次であると誤解されかねないが実はそうではない。社員満足を追求することの真のメリットについて考えたい。

■顧客満足と社員満足、それぞれを追求する会社
顧客満足と社員満足、それぞれを追求する例として、ファッションブランドUNIQLOを展開する株式会社ファーストリテイリングと、ファッション通販サイトのZOZOTOWNを展開する株式会社ZOZOを挙げてみる。

ファーストリテイリングの顧客満足追求はよく知られるところだ。ウェブによる顧客アンケートや店舗ごとのCS表彰などの方策で評価を可視化し、それらを通じてファーストリテイリングの社員はプライドを持って顧客満足を追求しているように見える。

その反面、話題になったブラック体質の暴露本や、2014年の訴訟の際には入社3年目で約5割の高い離職率や、休業社員の40%以上が精神疾患であることが報じられるなど、顧客満足を追求するために社員が背負う負担は大きいように見える。

一方、社員満足を追求する企業の例として挙げたいZOZOは、ここ数年社長のプライベートも含めて様々な話題を提供しているが、社員が働く環境についても大きな話題になっている。

一日6時間労働、全社員同額のボーナス、さらに役職給以外の給与も全社員一律、基本的には社員間の競争なし、私服での出勤OKなど、ウェブ上では「ホワイトすぎる労働環境」とも呼ばれている。

■顧客満足は社員の犠牲の上に成り立つのか
ファーストリテイリングが本当にブラック体質なのかどうかについてここでは精査しない。しかし一部の過重労働を批判されていたのは事実で、国内にはそういう企業が他にも数多くある。

それらの企業がスローガンとして顧客満足を謳っているケースは多い。しかしそのためには社員の労働環境を軽視しても構わないと前面に押し出しているわけではない。

企業が顧客満足を追求した結果として社員が犠牲になっている構図だ。そこにはもちろん利益の最大化という要因もあるが、少なくとも社員を優先してはいない。

果たして顧客満足とは、そのように社員の過重労働をもってしなければ達成できないものなのだろうか。もっと言えば、顧客満足と社員の幸福とは相反するものなのだろうか。

■社員が自主的に顧客満足を目指す企業
顧客満足の旗を企業の先頭で振る者はいったい誰であるべきなのか。多くの場合は社長が先頭に立ってその役を担うだろう。

冒頭に述べたように企業は顧客から対価を得る。そのため社長がその顧客に目を向けるのは当然である。

しかし実際に顧客と接するのは現場のスタッフたちである。会社の方針として社長が強く顧客満足を掲げたとして、現場の社員がどこまで自社のサービスや商品で顧客を満足させようと努めるかはわからない。

もちろん大半の人は職業人としての責務を全うするだろうし、顧客に喜んでもらうことで得られる喜びを知っている。そして企業はそういう社員の自主性に依存してこれまで顧客満足を追求してきた。

だが今後は、社員の幸福を実現しようとする会社から自主的に顧客満足を実現しようとする社員が多く見られるようになっていく。

■社員の幸福に顧客満足がついてくる
ZOZOのホワイトすぎる労働環境がそのような顧客満足につながるかどうかは、これからの評価となる。

しかし社員が会社に対する不平不満に満ちている企業が顧客満足にたどり着くことはないだろう。ZOZOはまずその可能性を排除した。

逆に社長が社員の幸福を第一に考えたら、果たしてその社員たちは顧客を大切にしないのだろうか。

おそらく社員が会社を大事に思ってくれて、その会社の商品に自信を持ち、さらには顧客を大切にするのではないだろうか。

もしかしたら社長が声高に顧客満足を叫ぶよりも、遥かに高い水準の顧客満足を社員が自ら追求するようになるのかもしれない。

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玉木潤一郎 経営者 株式会社SweetsInvestment 代表取締役

【プロフィール】
建築、小売店、飲食業、介護施設、不動産など異業種で4社の代表取締役を兼任。
一般社団法人起業家育成協会を発足し、若手経営者を対象に事業多角化研究会を主宰する。起業から収益化までの実践と、地方の中小企業の再生・事業多角化の実践をテーマに、地方自治体や各種団体からの依頼でセミナー・コンサルティングの実績多数。

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